【新世代コンパクトの実力検証】軽快なシティコミューターを選ぶなら? 「ホンダe」×「プジョーe-208」×「フィアット500e」プレミアムコンパクトEVのススメ。

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モビリティの電動化が急速に進む現代。航続距離の問題を解決するバッテリー技術の進化は日進月歩だが、やはりBEVの神髄は軽快なシティコミューターだろう。ここではプレミアムコンパクトEVに的を絞って、その魅力をお届けしたい。

BEV専用設計シャシーが走りに生きるホンダe

シティコミューターとしてひとつの理想だと言われるコンパクトBEV。その要因のひとつが低速走行となる街中でもエネルギー効率が落ちることがないことだ。エンジン車では高速道路よりも街中のほうが燃費は悪くなることが多いが、それは低回転ではトルクが足りずトランスミッションで減速して走らせているからだ。

エンジン回転数のわりに距離が伸びないので燃費も良くないということになる。対する電気モーターはゼロ回転から最大トルクを発揮できるので、ほとんどのBEVは1ギアで問題なく走れて、低速のほうがエネルギー消費は少ない。エンジンと違って速度と電費がリニアな関係にあるのだ。

いまのバッテリー技術ではエンジン車と同様の長い航続距離を得るには、大きなバッテリーを搭載する必要があるのだが、その分重さで電費が悪化していくというジレンマがある。だからこそ高速での長距離移動は度外視し、バッテリー容量が少なめの軽量コンパクトなBEVは理想的なシティコミューターというわけだ。今回の3台はいずれも軽量コンパクトで低速域での電費は良好なうえに、街を颯爽と駆けぬけていくのが様になるルックスであり、BEVならずとも欲しいと思わせるモデル達だ。

【写真19枚】街を颯爽と駆けぬけるのが様になるシティコミューターEV。 

ホンダeは完全な専用プラットフォームであり、1から設計したので理想を追ってRWD(リア駆動)とされた。エンジン車のコンパクトカーならばフロントが重く、駆動輪に荷重がかかるのでFFでまったく問題ないが、BEVでは前後重量配分が50:50に近いのでRWDのほうがトラクション性能は高い。また、前輪の切れ角を大きくとれるので小回りが効くというメリットもある。

バッテリー容量は割り切って35.5kWhに止めていてWLTCモードの一充電走行距離は259kmしかない。それでも5つのスクリーンを水平配置したワイドビジョンインストルメントパネルには新しさがあり、航続距離の短さを忘れさせてくれるほど楽しい雰囲気がある。

走りはかなりスポーティだ。アクセルを踏み込めばグイッと後ろから押される感覚があって気持ちいい。モーターのパワー&トルクもコンパクトカーには十分以上のもので加速はスポーツカー並。回生ブレーキは、パドルスイッチで3段階調整が可能なうえ、アクセルペダルを戻すだけで停止まで行なえるシングルペダルコントロールやノーマルとスポーツを持つドライビングモードなども相まって、ドライバーズカーを強く意識して開発されたことをうかがわせる。

シャシー性能も高く、低重心で重量バランスに優れたBEVの特性を存分にいかしたハンドリングが楽しめる。乗り心地はやや硬めだが許容範囲だろう。

◆「ホンダeアドバンス」SPECIFICATION
 全長×全幅×全高=3,895×1,750×1,510mm/ホイールベース=2,530mm/トレッド(F:R)=1,510:1,505mm/車両重量=1,540kg/モーター種類=交流同期電動機/モーター最高出力=154ps(113kW)/3,497-10,000rpm/モーター最大トルク=315Nm(32.1kg-m)/0-2,000rpm/サスペンション形式(F&R)=マクファーソンストラット/ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク/タイヤサイズ(F:R)=205/45ZR17:225/45ZR17/車両本体価格(税込)=4,950,000円/問い合わせ先=本田技研工業 0120-112-010

実用性に優れるe・208と先代の魅力を継ぐ500e

プジョー208はエンジン車とBEVの両方を用意し、好みやライフスタイルで選択してもらうパワー・オブ・チョイスというコンセプトをとっている。だからBEVのe・208もFWD(前輪駆動)でルックスや装備もエンジン車と大差ない。とはいえ、元の208からしてデザインは秀逸だから不足はない。3Diコクピットも十二分に先進的だ。

バッテリー容量は50kWhとコンパクトカーとしては大きく一充電走行距離も395kmに達する。BEVの実用度のひとつの目安は400kmと言われているので、それなりに使えるモデルと言えるだろう。電費や一充電走行距離の兼ね合いもあってか、モーターのパワー&トルクはホンダeほど高くないが、それでも1,500kgの車両重量に対して十分だ。

300rpmから260Nmのトルクを発生するので、1.2Lガソリンターボの205Nm/1750rpmに比べれば格段に力強く、レスポンスの良さも相まってドライバビリティがいい。回生ブレーキはDレンジとBレンジの2段階。前者は一般的なエンジンブレーキ並で自然な感覚、後者は2速ほどシフトダウンしたぐらいの減速感だ。

プジョーのコンパクトカーはシャシー性能に定評があるが、e・208でもそれは感じ取れる。どっしりと落ち着いた乗り味で、高速道路などでは1〜2クラス上のモデルに乗っているかのようなのだ。

◆「プジョーe-208GT」SPECIFICATION
 全長×全幅×全高=4,095×1,745×1,465mm/ホイールベース=2,540mm/トレッド(F:R)=1,495:1,495mm/車両重量=1,500kg/モーター種類=交流同期電動機/モーター最高出力=136ps(100kW)/5,500rpm/モーター最大トルク=260Nm(26.5kg-m)/3,000-3,674rpm/サスペンション形式=前マクファーソンストラット/コイル:後トーションビーム/コイル/ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク/タイヤサイズ(F:R)=205/45R17:205/45R17/車両本体価格(税込)=5,124,000円/問い合わせ先=ステランティスジャパン 0120-92-6813

フィアット500eは、日本ではBEVのみであるが(旧モデルのエンジン車も併売中)、欧州ではエンジン車もある。だからBEV専用プラットフォームではなく、やはりFWDとなる。ほかの2台に比べひと際コンパクトなことも特徴であり、車両重量はホンダeよりも210kg、e・208よりも170kgも軽い。ゆえに電費も良く42kWhのバッテリー容量でも一充電走行距離は335kmとなる。

パワー&トルクも低めではあるが、軽量ボディのおかげで走りは活発だ。ドライビングモードは3種類用意され、レンジモードでは回生ブレーキが強くなり1ペダルドライブが可能になる(停止時はブレーキ操作が必要)。

興味深いのは、プラットフォームはまったく違うのに従来のフィアット500に近い乗り味があることだ。キュンキュンと俊敏に曲がりたがるハンドリング、ちょっと上下動の大きい乗り心地の癖などがそれ。落ち着きにはやや欠けるのだが、元気いっぱいでイタリアのコンパクトカーらしいのだ。

それぞれが個性的で好みでチョイスしていいだろう。ただし、一充電走行距離のスペックは自分のライフスタイルと照らし合わせて考慮するべきではある。シティコミューターとして割りきるとは言っても、それなりに足が長いほうが嬉しい場面もあるからだ。

◆「フィアット500eオープン」SPECIFICATION
 全長×全幅×全高=3,630×1,685×1,530mm/ホイールベース=2,320mm/トレッド(F:R)=1,470:1,460mm/車両重量=1360kg/モーター種類=交流同期電動機/モーター最高出力=118ps(87kW) /4,000rpm/モーター最大トルク=220Nm(22.4kg-m)/2,000rpm/サスペンション形式=前マクファーソンストラット:後トーションビーム/ブレーキ(F:R)=ディスク:ドラム/タイヤサイズ(F&R)=205/45R17/車両本体価格(税込)=5,360,000円/問い合わせ先=ステランティスジャパン 0120-404-053

◆PERSONAL CHOICE:「ホンダe」
一充電走行距離は物足りないものの、もっとも好みなのはホンダeだ。カーブの多い首都高速を走らせているとバランスのいいシャシー性能に酔いしれてしまう。回生強度を任意に選択できるのもBEVならではの楽しさだ。

リポート=石井昌道 フォト=郡 大二郎

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