パッケージオプションの充実に注目!
今なお、いやかつて以上に、国産旧車ファンからの熱い視線を集めるC10型系日産スカイライン、通称ハコスカ。その登場は1968年8月のことであった。スカイラインといえばGTを外して語ることはできないが、本来の主流は4気筒搭載のファミリーセダンである。C10型系デビュー時のラインナップは、1500ccの4ドア・セダンとバン、ワゴン(エステート)という構成だった。
【画像10枚】三連四角テールがインパクト大なハコスカ1500、そのカタログを見る!
この4気筒1.5Lエンジンとは、先代スカイライン末期のS57型から搭載されたG15型だ。排気量1483cc、最高出力88psと数値的には変わりないが、細部に変更を施すとともにローレル用G18(1.8Lエンジン)との部品共用化が図られている。サスペンションはフロントにマクファーソンストラットを新採用、これが以降のスカイラインの基本として代々受け継がれていくこととなった。リアはリーフリジッドである。
グレードはスタンダード(タクシーなど法人需要向け)と、オーナードライバー向けデラックスの2本柱。さらにデラックスは需要に合わせて細分化しており、ベンチシート/3段コラムシフトのデラックスを基本に、セパレートシート装備のツーリングデラックス、さらに4段フロアシフトのスポーティデラックスの、実質3グレードを展開している。
C10型系スカイラインには、このあと2000GTやGT-Rといった6気筒モデルが加わるが、4気筒モデルはそれと並行して、1.8Lモデルの追加とマイナーチェンジ(1969年8月)、2ドア・ハードトップの追加とマイナーチェンジ(1970年10月)、最後のマイナーチェンジ(1971年9月)と変遷を辿ることとなる。最終型での1.5Lモデルのラインナップは前述のグレード構成から変化してツーリングデラックスが消え、スポーティGLという豪華版が加わっている。
さて、ここでお見せしているのは1970年10月~1971年8月までの期間の、4気筒スカイラインのカタログである。この時にはすでに1.8Lモデルも登場している訳だが、これは1.5Lの、しかも4ドア・セダンのみを扱ったもの。発行年月の記載は確認できなかった。サイズは294×254mm(縦×横)、表紙を入れて全22ページ。以前はGT-Rばかりが持て囃されたハコスカだが、近年ではGTやGT-Xにとどまらず、4気筒モデルも負けず劣らず珍重される存在であるだけに、じっくりご覧いただきたい。
エレガント派とスポーツ派にそれぞれ専用パックを用意
特筆すべきは、Lパック、Sパック/SSパックといったオプションパッケージの案内があることだ。単品で注文可能なオプションパーツを、あるいはそれ専用のパーツも含め複数組み合わせて、「~パック」「~パッケージ」「~キット」と銘打ち、疑似グレード的に販売するやり方は、1970年前後から国産車でよく見受けられた(モータースポーツ用の「スポーツキット」の類はまた別物である)。これは実は、フォードの初代マスタングから影響を受けたもののようだ。
1964年に登場したマスタングが、豊富なオプションを取り揃えて、購入者自身で好みの仕様を仕立てる販売法を採ったことはよく知られており、トヨタの初代セリカがこのやり方に倣ったことは有名だ。そのマスタングでは、複数のオプションを組み合わせた「~パック」「~パッケージ」「~グループ」というもの(もちろんそれ専用の装備品も含まれる)も、実は用意されていた。ファストバックとともに追加されたマスタングGTも、本来は「GTエクイップメント・グループ」と呼ばれるものをチョイスした車両のことだった。
このやり方にいち早く倣った車種には、例えばマツダの二代目ファミリアがある。装備を思い切り簡略化したオリジナルというグレード(スタンダードよりも下である)に、豊富極まりないオプションパーツを、ユーザーが自由に選べるように用意。しかも、あらかじめキット状態を数種類設定してあるというやり方であった。話が少々本題のスカイラインからそれたが、ハコスカにおいても、実は当初から「スポーティ・オプション・キット」「セフティ・オプション・キット」などが用意されていたのだ。
1970年10月のマイナーチェンジでは、それまでSキットと呼ばれていたものがSパックとSSパックに進化。GTには手が届かなくともスポーツドライビングを楽しみたい、というユーザーに向けた仕様であったが、次のマイナーチェンジでスポーティGL(前述の豪華版モデル)が登場したのに伴い、設定は消滅した。Lパックもおそらく1970年のマイチェンと同時に加わったもので、カタログではエレガント派と称されている。付属のファンシーボックスの名から、ブルーバードのファンシーデラックス的なものを思い浮かべがちだが、ここで言うファンシーとは、「高級」「ハイセンス」といったニュアンスのようである。
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