モデル全体の解像度を上げる方向で制作
EP3型シビック・タイプRの実車とそのプラモデルについては、前編の記事(下の「関連記事」参照)ですでに述べた。ここでは、作例の作者・北澤氏に、制作についてさらに詳しいところを語っていただこう。
【画像54枚】ボディ塗装から細部の仕上げまで、EP3の制作過程を見る!
「フジミのEP3シビック・タイプRは同車唯一のプラモデルで、2001年に登場した前期型を現役当時にキット化したもの。エンジンは再現されずシャシーもインテリアもシンプルな構成だが、ディスプレイ・モデルとして最小限の要素は押さえられている。この時期のフジミ製キットは少々大味なものが散見されるが、このキットも全体のプロポーションこそ悪くないものの、そのままだとどうにもピントが合っていないような印象が否めない。
そこで今回の作例では、実車を特徴づける外観のディテールに細かく手を入れて、モデル全体の解像度を上げる方向で作り込みを行なった。まずもっとも気になる点はヘッドライトの形状だ。実物は正面から見ると上辺がほぼ水平な台形だが、キットの方は三角形になっており、ヘッドライトが縦に間延びして見えるのだ。そこでボディのライトベゼル上部を2mmほどポリパテで埋め、それに合わせてカバー形状も修正して実車の表情に近づけた。またライト上端の外側と下端の内側のカドは実物ではRだが、キットは尖った角になっているので、これも修正した。
次にフロントグリル、実物は下側の中央が尖った五角形だが、キットは円弧になっているので、中央を彫り込んで角を作った。浅いモールドで実感に乏しい金網部分は刳り貫いて開口し、内側からビニールメッシュを貼った。またバンパーインテークも埋まっているので、格子のモールドを生かしつつ裏側から削り込んで開口した。これで顔つきは劇的に改善された。
側面で気になるのはリアウクォーターウィンドウの形状だ。下辺後半のせり上がりが無く、ぬるりとしたカーブになっているため、サイドビューの躍動感が殺がれている。窓のフチにポリパテを盛って形状を修正し、外貼り式のガラスもそれに合わせて削り込んだ。ボディ上面ではフロントフード後端付近の形状が実感に乏しいので、ウィンドシールド根元のスカットルパネルを切り離して別部品化し、フード後端の輪郭をハッキリさせた。さらにルーフエンドスポイラーは前側の台形の突起部分が省略されているので、プラ板で追加した。
ボディ細部の形状だけでなく、足周りのセッティングもカギ
シャシーはタイヤの位置がボディのホイールアーチと合わないので、サスペンションの取付け穴をずらして調整した。タイヤとホイールはボディに対して小さすぎて非常に貧弱だ。実車のホイールは17インチで、キットのホイールも17インチの1/24相当だから寸法的には正しい筈なので、小さく見えるというのは少々不可解だが、模型としてのリアリティを優先し、あえてインチアップに踏み切った。
具体的には、スポークの間の部分のリムを切り取ってスポークを延長し、アオシマの別売18インチホイールのリムを旋盤で加工したものに嵌め込んで、直径で約3mm拡大したら、ボディに対してはちょうど良い感じになった。タイヤもアオシマ製ホイールについていたものを使用している。
こうした作業の積み重ねでEP3らしさをどうにか表現出来たと思うのだが、いかがだろうか」
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