「走りへの拘り」「オープンカー」「ストレート6エンジン」でブランドを築き上げてきたメルセデスとBMW、マツダの魅力【自動車業界の研究】

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3ブランドの共通項とそれぞれの魅力

メルセデス、BMW、マツダ…なぜマツダか?と言えば3ブランドは「走りへの拘り」「オープンカー」「ストレート6エンジン」といった共通項で多くのファンを惹きつけているからです。
今回は日本とドイツを代表する自動車ブランドの理念や技術をわかりやすく紐解いて、それぞれが持つ魅力をご紹介するコラムをお届けします。

S-Class(メルセデス・ベンツ)

5シリーズ(BMW)
MAZDA6(マツダ)

三者三様の走りに拘ったメカニズムを搭載

「走りへの拘り」と言っても様々で、それぞれが提唱する走りの理念と実現する技術の一例をご紹介します。

そもそもドイツでは速度無制限区間もある高速道路(アウトバーン)で日常的に高速運転をする機会が多く、走りが必然的に鍛えられたメルセデスとBMWの定評は世界的に知られていますが、マツダもドイツで高い評価を得ていて、過去には日本のCMでもPRしていたのですが、その評価や信頼と人気が日本ではあまり知られていないと感じます。
走行する速度や路面の状況によって最適な足回りのセッティングは異なるため、ブランドの理念やお国柄によって走りや乗り味に特徴が出るのは必然と言えます。

【画像15枚】メルセデスベンツとBMW、マツダに共通することとは?

メルセデスは「シャシーはエンジンより速く」。つまりエンジンパワーに対して車体や足回りが勝るという走りの理念を持ち、フラッグシップモデルのS-Class等に搭載されている「E-ACTIVE BODY CONTROL」は、電子制御エアサスペンションにステレオマルチパーパスカメラ(フロントガラス中央上部)の映像解析技術も活用して、48V電動油圧ユニットでクルマの姿勢をコントロール、優れた走行安定性と極上の乗り心地を提供しています。

実際には大変複雑で高度なこのシステムの原理を簡単に説明すると、エアサスペンション(空気ばね)で乗り心地がただでさえ良いのに加えて、カメラで前方の路面状態を捉えて事前に分析、通常のバッテリー(12V)より高電圧(48V)で素早い制御が可能な油圧ユニットにより、分析結果を元に対処することで路面凹凸への追従やコーナリング姿勢の安定化を図る現代における最高峰の技術です。

S-Classステレオマルチパーパスカメラ(メルセデス・ベンツ)

AIRMATICサスペンション(メルセデス・ベンツ)
BMWは「駆けぬける歓び」をスローガンに、クイックで運動性能に優れる走りの理念を持ち、5シリーズ以上の上級モデルを中心に搭載される「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング(前後輪統合制御ステアリング・システム)」は、車速に応じてフロントホイールの切れ角を調整すると共にリアホイールの切れ角も制御、一段上の走行安定性と運動性能を両立しています。

他ブランドでも同様のシステムを採用している例はありますが、BMWは走りに影響の大きい車体前後の重量配分を徹底的に煮詰めているので、同システムの効果が相乗的に高まっていて、市場からも高い評価を得ています。

インテグレーテッド・アクティブ・ステアリング(BMW)

マツダは「人馬一体」を掲げ、人とクルマが一体になる走りのブランド理念を持ち、ロードスターから新モデルを中心に搭載されている「キネマティック・ポスチャー・コントロール (KPC) 」は、比較的ハードなコーナリング走行時に、リアの内輪ブレーキをかけることで車体の浮き上がりを軽減、旋回姿勢を安定させ、スムースで心地良いコーナリング性能を実現しています。

従来からコーナリング性能を高めるためホイール左右の回転をアクティブに制御するシステムはいくつか存在していましたが、このシステムは走りの安定性を高めるためブレーキの制御で機能を担っていて、別途、凝った装置を用いておらず、重量増がないことに加えコストもあまり掛けずに実現しているところも価値が高いです。

キネマティック・ポスチャー・コントロール(マツダ)

オープンカーに込められた各ブランドの想い

オープンカーの魅力はデザインの優雅さや贅沢感、ドライブ時の解放感や非日常性といった特別感があげられますが、一方で技術的には車体剛性の確保と相反する軽量化や耐久性の確保、等々と難しいことが多くて販売される絶対数や収益性から常にラインアップしているブランドは多くありません。

3ブランドは共にオープンカーをラインアップしていて、メルセデスは「SL」「GT」「E-Class」「C-Class」等、BMWは「8シリーズ」「4シリーズ」「Z4」等、マツダは「ロードスター」といったモデルに設定され、いずれも人気の高いデザインと優れた技術で多くのファンから愛されています。

過去にレースでの圧倒的強さや直噴エンジンを世界初搭載して伝説のモデルとして歴史を築いてきたメルセデスの「SL」の最新モデルはメルセデスの中でも走りのブランドとして究極のパフォーマンスを提唱するAMGのみの設定、今回はルーフに軽量なソフトトップの採用を復活させて、4人乗りを実現させると共に低重心化も図って走りの安定性を高めています。

続いて、コアファンから名車として絶大な支持を得てきたBMWの「Z4」は、トヨタから発売されていてスポーツカーとして評価も高いクーペボディの「スープラ」と基本部分を共通していますがあくまでもBMWのオープンカーとしてオリジナリティにあふれ稀有な存在です。豆知識ですが、これらのモデルはメルセデスのG-Class等と共にとにかくガッチリしたボディ&シャシーで名高いオーストリアのマグナ・シュタイヤー社で製造されています。

最後に、オープンカーの人気を世界中で高め普及に大きい影響を与えてきたマツダの「ロードスター」は、日本ブランドのモデルとしては他に例のないほど世界にたくさんの愛好者団体が存在していて、そのファンの数と熱量は圧倒的です。世界中から愛されている「ロードスター」と言って良いのではないでしょうか。
メルセデスもBMWもマツダも様々ですが、いずれも称賛されるモデルが多いのもオープンカーの特長でブランドのイメージにも影響を与えてきました。

天気の良い日にルーフを開けて走った時の特別感はオープンカーならでは、もし未だ体験のない方は試乗でも良いので、一度は体感されることをおすすめします。

Mercedes-AMG SL(メルセデス・ベンツ)
Z4(BMW)
4シリーズ カブリオレ(BMW)
ロードスター(マツダ)

ストレート6エンジンが復活した理由とは?

ストレート6は、燃焼によってパワーを生み出すシリンダー(筒)が直列に6つ並んでいるタイプのエンジンで、振動や騒音の原因となるピストン等の、エンジン内部を縦に往復して動く部品の慣性力を、6つのシリンダーが並んで打ち消し合う機構によって、理論完全バランスを実現することで、スムーズで振動が少ないのが特長です。

BMWだけはこれまでも頑なにストレート6エンジンを重宝し採用してきましたが、エンジンが長いため衝突安全に影響のあるクラッシャブルゾーン(潰れて衝突エネルギーを吸収)の確保が難しい等の理由から、近年は日本のトヨタや日産も含めほとんどのブランドが採用を取りやめ、短いV6エンジン(シリンダーが直列に3つ×回転方向V字に2列)を用いてきました。

では、今なぜストレート6エンジンをメルセデスが復活させ、マツダが新規に開発採用してきたか? と言えば、SDGsやカーボンニュートラルが提唱される現在、シリンダーの排気系統が2列のV6エンジンに対して、ストレート6エンジンの排気系統は1列のため、排気ガスの対策面で始動時に触媒が温まるのが早くて排気ガスの対策面で有利であることや、世界的に主流のストレート4(直列4気筒)エンジンと生産ラインを共有できるコストメリット等が理由です。

但し、ストレート6エンジンは長いクランクシャフトを始め設計や製造に高い技術やノウハウが要求され、きちんと質の良いエンジンを造れるブランドは世界でも数えるほどです。

特にBMWのストレート6エンジンはシルキー6と言われ、官能性能(人間が五感で感じる性能)も含め性能は最高レベルと評価されています。このシルキー6をさらにV字に2列で並べた究極とも言えるV12エンジンの製造をBMWは惜しまれつつも今年(2022年)に取り止めています。日本ブランドもトヨタの「センチュリー」先代モデルが生産終了した後は市販モデルにV12エンジンは搭載されていません。

CX-60(マツダ)
SKYACTIV-D 3.3(マツダ)

比類なきブランドのメルセデスとBMW、マツダの挑戦

クルマの真髄ともいえる走りで長く互いに切磋琢磨してきたメルセデスとBMW、走りへの挑戦を続けオープンカーで世界に影響を与えてきたマツダ、共通する「走りへの拘り」「オープンカー」「ストレート6エンジン」のそれぞれのオリジナリティがブランドの魅力となっています。

真のブランドは、開発が飽和(サーチュレーション)する領域で生み出されると考えられ、メルセデスやBMWは『歴史・プロダクト(クルマ)・評判』が三拍子揃った今さら言うまでもない業界のリーダーですが、共通項でも挑むマツダのスタンスとクルマに期待は膨らみ、ラージ商品群の先鋒として登場して人気のCX-60からも今後はどういった魅力的なクルマが出てくるのか期待せずにはいられません!

自動車ブランド(ABeam Consulting)

この記事を書いた人

橋爪一仁

自動車4社を経てアビームコンサルティング。企画業務を中心にCASE、DX×CX、セールス&マーケティング、広報、渉外、認証、R&D、工場管理、生産技術、製造等、自動車産業の幅広い経験をベースに現在は業界研究を中心に活動。特にCASEとエンジンが専門で日本車とドイツ車が得意領域。

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橋爪一仁
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2022/12/21 18:00

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