BMWのラグジュアリーセダンとして初の電気自動車(EV)として登場したi7。BMWというブランドは電気自動車作りに一日の長があるが、その乗り味はどう仕上がっているのか? ガソリンモデルに続き、石井昌道氏がその実力を探る。
ドライバーズカーとしても一段上った感のある完成度
101.7kWhと最大級のバッテリーを搭載するi7 xDrive60は一充電走行距離が約600kmと、もはや一般的なドライブでは航続距離を気にする必要がないレベル。モーターはフロントに190kW(258ps)、リアに230kW(313ps)を搭載して4WDとなり、システム最大では400kW(544ps)にもなる。車両重量は2640kgと重量級だが、0→100km/h加速はわずか4.7秒だ。電動車フラッグシップのiXのようにカーボンなど高価な素材を使っていないので少し重くはなるが、パフォーマンスや電費性能は十分に高いレベルにある。
【写真29枚】BEVの特性を最大限に活かした新たなフラッグシップ、新型i7の詳細を写真で見る
アクセルを強く踏み込んだときの加速は強烈で電気モーターの威力をまざまざとみせつけられる。レスポンスも超絶に良く、どんなに高性能なエンジンでもかなわないほどだ。逆に、エンジンのいいところを挙げるとすれば、なんとなく暖かみがあり、サウンドが官能的というところ。電気モーターの加速感はデジタル的でどこか冷めた感じがする。とはいえ、実力では圧倒的に電気の勝ちだろう。
それはシャシー性能にも言える。バッテリーを床下に収めることで低重心かつ重量配分が良好で慣性マスが低い。操縦安定性と俊敏なハンドリングには有利なのだ。760iも素晴らしいハンドリングだったが、同じコーナーをi7で走るとよりニュートラルな感覚。比べてしまうと760iはノーズに重たいエンジンを搭載していることを意識させられ、ほんのわずかにアンダーステア気味に感じられた。
さらに上質な乗り味という点でも一枚上手だった。BEVは静かなのが当たり前だが、i7はロードノイズや風切り音、電気系ノイズなどを究極と言えるほどに低減させていて、BEVのなかでもトップレベル。駆動系などのフリクション感の低さも特筆ものでスーッと滑らかに走っていく。さらに、エンジン車はエンジンをラバー系などでマウントするためどうしても揺動が出てしまうが、BEVにはそれがない。760iでは凹凸を乗り越えた際など、わずかにプルプルっとした感触があるが、i7では皆無でひたすらに上質。分厚いカーペットの上を走っているかのようなのだ。
エンジン車の官能性や楽しさは十分に理解しているが、こと上質感を追求する高級車やパフォーマンス重視のモデルならば、BEVはエンジン車ではあり得ない高みにいけることをi7で再認識した。高級なドライバーズカーの7シリーズにとってBEVのi7はひとつの理想だろう。
新型7シリーズは歴代モデルと同様に、持てる技術をフルに投入して乗用車の最先端に立った。後席の豪華さに目を奪われがちだが、自分でステアリングを握らなければもったいないと思わせるほどにドライバーズカーとして完成度が高いのも、これまでの伝統どおりだ。
【Specification】BMW i7 xDrive60
■全長×全幅×全高=5391×1950×1544mm
■ホイールベース=3215mm
■総電力量=101.7kWh
■システム・トータル最高出力=544ps
■システム・トータル最大トルク=745Nm
■サスペンション=ダブル・ウィッシュボーン/エア(前)、マルチリンク/エア(後)
■ブレーキ=Vディスク(前/後)
■タイヤサイズ=255/45R20(前)、285/40R20(後)
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Contents
新型7シリーズ/i7海外試乗速報
NEW M2詳細解説
BMW&アルピナ最新モデルレビュー2022など
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