1963 TORNADO TALISMAN GT Mk.2
ボディスタイルはアルファのスプリント・スペチアーレに影響を受けたと思われる。車体サイズはジュリエッタ・スプリントと同程度。
イギリスのビル・ウッドハウスが1957年に創設したのがトルネード。彼らは入手が容易なフォードのパーツを使ったキットカーを開発し、1958年にタイフーンの名で市販する。
丸パイプを組んだフレームに、当時先進素材だったGRP(グラスファイバー)のボディを載せた軽量スポーツカーは、安価だったこともあり400台が売れるヒットとなり、モータースポーツでも活躍。1960年には改良型のテンペストも発売されている。
ウッドハウスは次なるステップとして、当時英国車になかった、2+2の軽量クーペを企画する。おそらくアルファロメオ・ジュリエッタ・スプリント辺りをイメージしたと思われるが、狙いは良かったのではないだろうか。
太いパイプで網目状に組んだフレームの前後に、細いサブフレームを繋げたシャシーに、トライアンフ・ヘラルドのフロント・ダブルウイッシュボーンと、当時のフォーミュラカー・スタイルであるリアの4リンクを組み合わせた4輪独立サスペンションを採用。ボディは得意のGRP製(プロトタイプはアルミ製)で、584㎏と極めて軽量に仕上げられていた。
エンジンはフォード109E直4OHV1340㏄をコスワースがチューンし、75PSとしたものを搭載。フォードの4速フルシンクロMTと組み合わせた。
トルネード・タイフーンは2座オープン(写真)の他にクーペや2+2、スポーツワゴンも存在。発展型のテンペストなども作られた。タリスマンはMk.3が試作されたが、財政難のためトルネードは1964 年に車両製作を断念。以後1986 年まで修理専門の会社として存続した。
1961年にタリスマン(お守り)GTと名付けられ発売されたこのクルマは、性能面で非常に高い評価を受けた。コーリン・チャプマンが、ロータス・ブランドでの販売を打診したというから、当時かなりの衝撃を与えたようだ。ただそれまでと違い、タリスマンはほとんどが完成車だったこともあり、これも価格が高く販売は苦戦。翌年フォード116Eベースで86PSを発揮する1498ccエンジンのMk2を発売したが、その年までに200台弱を販売しただけで、生産を終了している。
今回取材したのは、これもオートメディックさんが在庫している1963年式タリスマンGT Mk2で、ヒストリックカー・ラリー用にモディファイされた1台。車体は小さ目ながら、車内スペースはきちんと確保されており、ノーマルであれば後席にも大人が座れそうだ。また内外装はかなり高品質に設えられていた。
こちらは街中で少し運転させていただいたのだが、ボディ剛性はしっかりしており、足周りはやや硬めながらダンピングが効いていて乗り心地は良好。エンジンは低中速型ながら小気味よく回り、ステアリングも正確に思えた。
今乗っても、はっきり意欲作とわかるタリスマン。ウッドハウスの先見性と審美眼、そしてモータースポーツを通して培った技術は本物だったと断言できそうだ。
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