1回のフル充電で1000km以上を走行! メルセデスの次世代EV「EQXX」に実際に乗って見えてきたこれからのEVの姿とは?

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EV航続距離のレコードを更新!

いま、EVを走らせる上でストレスを感じることのひとつがチャージングだろう。使用用途や頻度で個人差はあるだろうが、運転中にふとバッテリー残量に目がいくのはICEの比ではないはずだ。そんなドライバーに朗報。このEV航続距離レコードホルダーに搭載される電動ハイテクの数々は、近い将来にも量産化される見通しという!

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ワンチャージで1000km走行を実証!

21世紀初頭、フォルクスワーゲンは1Lの燃料(軽油)で100kmの走行が可能な超低燃費車、いわゆる「1リッターカー」の開発をスタート。その後、2014年にわずか200台限定ではあったが、約2Lで100kmを走れるXL-1を発売した。そしてEV時代に突入した現在、メルセデス・ベンツはワンチャージで1000kmを走り切るBEV、ヴィジョンEQXXを今年1月のCESで発表。4月にはシュツットガルトから約1000km離れた南仏のニースまで、翌5月にはF1開催直後の英国シルバーストーンまでの約1200kmを走り切ってみせた。

いかにも空力を突き詰めたボディはCd値0.17という驚異的な数値を達成。当日のテストで、筆者はトップの電費を達成したと後に伝えられた(自慢)。

今回、メルセデス・ベンツは、この航続性能の片鱗を我々に体験させるべく、南ドイツのテストコースで試乗会を実施した。全長は4977mm、全幅は1870mm、全高は1350mm、そしてホイールべースは2800mmのEQXXは、すでに何度か実車を目の前にしているが、葉巻型のスリークなフォルムを持つ4ドア4シーターのスタイリングは、次世代のスポーツカーといえるほど大胆かつ斬新、そして魅力的だ。徹底的に練られた空力特性は驚異的で、Cd値は0.17。この数値はリアホイールカバーを備えるXL-1(0.186)よりも優れる。しかも、こちらはフル4シーターなのだ。

横一線のハイパースクリーンがリアルタイムの電費や、フロントのバッテリー冷却用シャッターが開いた場合の空気抵抗値など、あらゆる車両情報を表示する。

ステアリングコラムから伸びるシフトパドルでDをセレクトしてスタートする。発進加速はスムーズかつシームレスだが、低速でのライドフィールはややハードな印象。助手席に座るエンジニア、フリードマンによれば、軽量マグネシウムホイールに装着しているBSトランザ・エコの空気圧は転がり抵抗をさらに減らすべく3.5Barまで上げてあり、さらにリアサスペンションのスプリングには軽量化のためにグラスファイバー製を採用していることに起因する、との説明を受けた。

テストドライブは、アップダウンや複合コーナーを含めた16kmのコースを周回する形で行なわれたが、参考までにメルセデス・ベンツのテストドライバーによる平均速度は49km/hで、7.9kWh/100kmの電力を消費、0.66kWhのエネルギーを回生している。ドライブモード、正確にいえばエネルギー回生レベルによるドライブセレクトは、Dマイナス/マイナス、Dマイナス、D、DプラスそしてDオートの5段階で、順に回生力が弱くなる。すなわちDプラスは回生から離れてコースティングを行なう。

専用開発となるタイヤは、低転がり抵抗技術“エンライトン”を採用したBSトランザ・エコ。20インチホイールは鍛造マグネシウム製となる。

前出のフリードマンによると、EQXXは搭載する100kWhの電池エネルギーの95%をタイヤに伝えることができるほど高効率なので、航続距離を伸ばすにはもっとも回生力の強いDマイナス/マイナスを選びワンペダルドライブで走らせるのがベターだとアドバイスしてくれたが、これにはちょっと慣れが必要だった。しかし、アップダウンを上手く使ってEQXXを操るのは、パワーでコントロールするスポーツカーとは別の意味でファン・トゥ・ドライブだ。

テスト終了後に発表されたデータによると、筆者の電費は7.1kWh/100km、平均速度は45.68km/hで、この間に0.65kWhのエネルギーを回生していた。前述のテストドライバーと比べても悪くはない数値だ。このデータで計算すると、ワンチャージで1000kmには軽く到達する。

このヴィジョンEQXXが搭載するいくつかのハイテクは、2025年に登場する次世代モジュールアーキテクチャー「MMA」がベースのコンパクト/ミッドサイズBEVに採用予定という。これが実現すれば、充電ポイントの呪縛から解放されたBEVの行動範囲はグンと広がるに違いない。

メルセデス・ベンツ公式サイト

ルボラン2022年10月号より転載

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