マニアならずとも息を呑む、ディープなガレージは、とにかく「ガレージが先、居住スペースは後」!
千葉県某所にあるOさんのガレージハウスは、普段シャッターを占めた状態では、住宅街の風景にごく自然に溶けこんでいる。ところが一歩中に入ると目に飛び込んでくるのは、マニアならずとも息を呑むディープな光景だ。主役ともいうべきは絶妙なメタリックブルーのボディに、ハイレベルなカスタムが凝縮された”TOYOROD”。
1961年式のクラウンピックアップをベースに4年がかりで仕上げた1台で、「YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW 2009」でアワードを獲得した名車とも呼べる一台だ。カワサキKH250のマッドマックス仕様やモンキーも同系色でフィニッシュされた状態で眠っており、さらに作業中のベレットGTRやホンダZが鎮座する。ガレージの主が熟練のカーマニアであろうことは、疑いの余地もない。自宅はあくまでもクルマ置き場というOさん。“TOYOROD”を仕上げた主治医のショップも近所にあることから、リフトアップなどの作業もそこで行うのだそうだ。
【写真17枚】クルマ4台、バイク4台が入る国産旧車ガレージ!
クルマのために珪藻土、ヒトはクロス仕上げ!?
天井高を充分に確保した1階ガレージと趣味部屋は、壁全面と天井まで珪藻土が塗られて吸湿性能を確保している。
「本当は家全部に珪藻土を塗りたかったけど、結構高かったので、居住区画の2階はクロスで行こうと。職人さんに『逆じゃないんですか?』って聞かれましたが、クルマのほうが大事だから(笑)」
今度は玄関からO邸に入ると、広い玄関にプラモデルやいじり中のバイク、その他諸々のアイテムがガレージ以上の密度で山をなしている。ここが趣味部屋だそうで、ぐるっと奥に回ると上がりかまちがある。2階への階段は幅1,365mmという広さだ。実はこの家、仕事柄、図面にある程度の心得があるOさんが、ゼロから線を引いてほぼそのまま建ててしまった、完全自分仕様のカスタムガレージハウスだ。
クルマ最優先で設計した家
最優先に考えたことは、敷地の中にどうすれば愛車がすべて収まるか? だった。ミニカーを用意して、同じスケールで敷地や家の線を引いていった。たとえば「ガレージに入るクルマは3台だな」と考えると、ミニカーはおのずと屋外駐車になる。ならばミニカーをギリギリ停められる幅を玄関脇に持たせた場合、家は境界線からどれだけ後退し、その場合は階段の幅はどれだけ確保できるだろうか……といった具合である。
構造計算や確認申請は施工を担当した「協和不動産」に行ってもらったものの、ほぼOさんのプランのままで建ったそうだ。ガレージの高さと空間をできる限り大きくするため、「テクノストラクチャー」という、木造在来と鉄骨が複合した工法を採用。1階すべてががらんどうにできればクルマ4台を収納できたが、予算的にオーバーしてしまうため、趣味部屋の分だけ間仕切りを入れることにしたのだった。
「結果的には、それが仕切りになってアコーディオンカーテンを取り付けられて、冷暖房が効くようになったおかげで、趣味部屋でゆっくりバイクをイジれることになりました。逆に良かったです」
1階は人とクルマ2階に愛猫のガレージハウス
ガレージが先、居住スペースは後。いわばガレージに寝床をくっつけたようなイメージの住まいとなった、O邸。モノで満たされた1階と対照的に、2階はすっきりとしている。ねこの活動スペースが2階であることも大きな要因だ。
「昔は寝室でプラモデルを作ってたんですけど、色を塗る時に臭くて……。しかもねこが部品を蹴っちゃう(笑) いま、作業はすべて1階でするようにしています。引っ越してから増えたアイテムのほうが多いかもしれません」
現在は趣味部屋で、カワサキZ1のプロジェクトを着々と進めている。映画『マッドマックス』の劇中に出ていた、Z1系をベースにしたポリス仕様バイク、ポリス1000のイメージを目指しているそうである。クルマ、バイク、プラモデル等々、好きなアイテムを詰め込んだ理想のガレージハウス。ここで仕事やカスタムのエネルギーを充填しているようだ。
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