AMG創立50周年を記念したスペシャルなハイパーカーとして2017年のフランクフルト・モーターショーで登場したのが「メルセデスAMG プロジェクト ワン」。F1テクノロジーを纏ったその市販モデルが6月1日に公開された。早速その概要をお届けしよう。
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それはまさしく公道を走るF1
ル・ボラン6月号にて紹介したメルセデスAMGのGT63S Eパフォーマンスの試乗会でのこと。サーキットのピットの一部がクローズされ、そこに入るにはスマホやカメラなどを事前に預けるなど、厳重なセキュリティチェックが行なわれているエリアがあった。
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その中に置かれていたのが、2017年に発表された「メルセデスAMGプロジェクト・ワン」と呼ばれるコンセプトモデルの市販型、「メルセデスAMGワン」だった。6月1日発表の実車を特別に事前に見せてくれたのである。
コンセプトモデルの時に言われていた「公道を走るF1」とは、F1エンジン由来の1.6Lターボをキャビン後方に搭載するレイアウトとして具現されている。そしていまの時代の要請に応えるべく、モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドとしている点が特徴である。モーターは全部で4個。ターボのタービンとコンプレッサーを繋ぐシャフト部に122psのモーターをひとつ、モータージェネレーターユニットとして163psのモーターをエンジン部にひとつ、そして前輪にそれぞれひとつずつ、163psのモーターを配置している。前輪は左右個別に制御できるので、左右の駆動力配分を状況に応じて最適化するトルクベクタリング機構も備えている。つまり、リアはハイブリッド駆動、フロントはモーター駆動の4WDで、AMGパフォーマンス4MATIC+と命名されている。エンジン単体のパワースペックは574ps/9000rpmだが、システム最高出力は1063psに達するという。トランスミッションは新開発の7速セミオートマチックだ。
バッテリー容量は8.4kWhで、EVモードでの走行可能距離は18.1km。GT63S Eパフォーマンス同様、このPHEVシステムはEVモードでの航続距離よりも、スポーツ走行時に電気の出し入れを迅速に行なえる性能に特化したものだ。水冷の直接冷却システムによるバッテリーの温度管理も同じ構造である。
ボディは、カーボンモノコックのキャビンにアルミ製のサブフレーム+サスペンションが前後に設置される構造。サスペンション形式は前後とも5リンク式のプッシュロッドタイプとなる。ブレーキはカーボンセラミックディスクにフロントは6ピストン、リアは4ピストンのキャリパーを採用。タイヤサイズはフロントが285/35ZR19、リアが335/30ZR20となる。ボディサイズは全長4756mm、全幅2010mm、全高1261mm、ホイールベース2720mm。車両重量は1695kgと公表された。
インテリアはF1のようなステアリングとふたつのモニターに機能を集約。シートはバックレストの角度が2段階で調整できる以外は固定式。ペダル(マニュアル式の11段階)とステアリング(電動式)を動かしてドライビングポジションをとるようになっている。
最高速は352km/h、0-100km/hは2.9秒という動力性能を誇るこのメルセデスAMGワンは、コンセプトモデルが発表されて以降、一時は開発中断という噂も流れた。それを実現に漕ぎ着けたのはおそらくPHEVの搭載が可能となったからだろう。ぜひとも試乗してみたいところではあるけれど、約3億円の275台はすでに完売だそうである。