日本向けとしてはルノー初の本格的な電動化モデルとなるアルカナ。そのハイライトは、F1でのノウハウが投入されたという独自のフルハイブリッドシステムだが、BEVでもPHEVでもなくなぜハイブリッドなのか? その答えは走りに込められていた!
市販車では珍しいドッグミッションを採用
日本以外の自動車メーカーとしては唯一となるフルハイブリッド、E-TECHが搭載されるアルカナ。これまで、欧州ではB・Cセグメントでもディーゼルが主流だったが、厳しさを増す排ガス規制によってコストとのバランスが取れなくなりつつある。その代替となるのがフルハイブリッドと、ルノーは判断したのだ。電動化シフトが進む欧州だが、それでも’35年まではエンジンが搭載されたパワートレインが販売の中心となる。
他の欧州メーカーはマイルドハイブリッドとPHEVで乗り切ろうとしているが、フルハイブリッドなら燃費とコストのバランスに優れる。今ほどディーゼルに逆風が吹いていなかった時期に開発が始ったことを思えば、ルノーには先見の明があったとも言える。
F1では2014年からMGU-K、MGU-Hなどでエネルギーを回生。エンジンに加え、モーターも駆動するハイブリッドのパワーユニットが導入されている。決められたレギュレーションと限られたリソースのなかで極限の速さを追求するのがF1のパワーユニットだが、ハイブリッド化に伴って複雑なエネルギーマネージメントが必須になった。回生で得られた電気エネルギーをどの区間でどれぐらい駆動に使うのが効率的で速く走り続けられるか? というのが最大の課題であり、ルノーF1(現在はアルピーヌ)も長年これに取り組んできた。
市販車のE-TECHが追求するのは速さではなく燃費性能だが、効率を高めるために高度なエネルギーマネージメントが必要になる点は同じ。実際、F1で得た知見はフルに活用されたという。まず最初にありきだったのは、ドッグミッションの採用だった。メカニカルロスがないため、速さを求めるF1やレーシングカーなどではポピュラーな機構だが、E-TECHでは効率化=燃費改善の目的で用いられる。シフトショックがあるため市販車での採用例はほとんどないが、E-TECHはISG(スターター・ジェネレーター)を兼ねたサブモーターがギアセレクターの回転速度を制御するためスムーズなシフトチェンジが実現されている。
ギアはエンジン側に4つ、モーター側に2つあり、合計で12のギア比となる。エンジン単体、モーター単体での走行時が4+2で6、エンジン+モーター走行時が計4×2で8となって合計14だが、まったく同じギア比が2つ存在するので実質12になるという。
実際に走らせてみるとシフトチェンジのギクシャク感などは見られず、加速・減速Gの出方もスムーズだった。特徴的なのは高速域での加速時でもレスポンスが良くダイレクト感があることだ。さすがはドッグミッションの有段ギアを使っているだけある。電気式CVTのフルハイブリッドとの違いは、まさにここ。E-TECHは、日本よりも速度域が高く、走行する頻度も多い高速道路で燃費が良く、走りも気持ちがいいパワーユニットを目指したのだ。
フルハイブリッドに期待される燃費性能は、輸入車ナンバー1。それゆえ絶対的なパワーはさほど高くないが、モーターによって実用トルクが充実し、ダイレクト感もあるので一体感のある走りが楽しめる。燃費がいいだけのフルハイブリッドではないのがルノーらしく、そこにF1の技術が注ぎ込まれたことも実感できる。
【Specification】ルノー・アルカナR.S.ラインE-TECHハイブリッド
■全長×全幅×全高=4570×1820×1580mm
■ホイールベース=2720mm
■車両重量=1470kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+2モーター/1597cc
■最高出力=94ps(69kW)/5600rpm
■最大トルク=148Nm(15.1㎏-m)/3600
■モーター最高出力=49ps(36kw)/1677-6000rpm
■モーター最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/200-1677rpm
■サブモーター最高出力=20ps(15kw)/2865-10000rpm
■サブモーター最大トルク=50Nm(5.1kg-m)/200-2865rpm
■トランスミッション=ドッグクラッチマルチモードAT
■燃料タンク容量=50L(プレミアム)
■サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F&R)=215/55R18
■車両本体価格(税込)=4,290,000円
■問い合わせ先=ルノー・ジャポン ☎0120-676-365
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