映画史に残る追跡劇を演じた希代の悪役車
ダッジのインターミディエイトであるコロネットのシャシーを流用し、流麗な2ドアクーペ・ボディを載せたのがチャージャーだ。初代モデルは1966年シーズン中盤に登場したもので、ボディ腰下前半はコロネットと共用しつつ、格納式ヘッドライトのフロントグリルとファストバック・スタイルのルーフが最大の特徴となっていた。元々マスタングのヒットに触発されたモデルだったが、基本部分は地味なボディに販売不調の原因を見たためか、1968年型からの2代目でスタイルを一新した。
専用のスタイリッシュなエクステリアを採用した2代目は、その甲斐あって大いに人気を集め、販売台数は前年の6倍以上に跳ね上がったという。ラインナップには、通常モデルのほかにR/Tと呼ばれるハイパフォーマンスモデルがあり、さらに1969年型では豪華版のSEが加わった。これはインテリアにレザーを使用しているのが特徴だ。また、NASCARのレギュレーションを満たすため、チャージャー500というモデルも生産されている。これは、フラッシュサーフェス化されたリアウィンドウと固定ライトで識別される。
最終となる1970年型では、ベーシックなチャージャー、中間モデルの500、上級モデルのR/Tというグレード構成に変わり、500とR/Tにそれぞれ豪華版のSEが設定された。ここでのチャージャー500は前年の同名モデルとは違い、ただの中間グレードである。外観では、グリルを囲う新タイプのフロントバンパーを採用し全長が若干伸びていた。
話を最初の1968年型に戻すと、デビュー直後の2代目チャージャーを一躍有名にしたのが、映画『ブリット』(1968年)である。スティーブ・マックイーン主演の刑事アクションであるこの作品では、1968年型のチャージャーR/Tが、ブリット(マックイーン)の愛車である1968年型マスタングに追い詰められるという、迫真のカーチェイスを演じたのだ。サンフランシスコの坂道を最大限に活用し、2台とも派手なジャンプを繰り返しながらの追跡劇は、映画史に残る名シーンのひとつとなった。
撮影には、マスタング、チャージャー、ともに2台ずつが用意されたそうだが、悪役のクルマにチャージャーが充てられたのは、「作中フォード車ばかり出てくるからバランスを取るため」だったという。このチャージャーは440マグナムを搭載したR/Tで、外観ではフルホイールカバーが特徴となる。440マグナムは名の通り440-cid(7.2L)、375hpのエンジンで、R/Tにおける標準ユニット。1968年型R/Tでは他に426ヘミ(7L、425hp)も約1,000ドルプラスで選ぶことができた。
さて、ここでご覧頂いているのは、この『ブリット』のダッジ・チャージャーを再現した模型である。使用したのはレベル製1/25スケールのプラモデル。制作はお馴染みの畔蒜幸雄氏だが、氏はすでに『ブリット』仕様のマスタングを制作している。映画の車両はバイナルトップであるため、ボディを“プロモデラー”版の1969年型のものに変更、ディテールを1968年型に戻すという、ちょっと手の込んだモデリングがなされている。
1969年型のボディを使用、バイナルのモールドを活かす
使用したのはレベルの1968年型(85-4202 2008年製)だが、 ボディは“プロモデラー”版1969年型(85-5937 1998年製)を使用。バイナルトップがモールドされているからだ。前後バンパーなどメッキパーツは、ゲートやパーティングラインの処理を行ってから再メッキ(専門業者に依頼)。バランスパネルは前後とも塗装前に一体化した。1969年型は前後サイドマーカーが長方形なので、一旦埋める。ホイールはダッジ純正のフルカバーだが、レベル製1969年型ダッジ・ダート(7603 1995年製)に似たホイールが付くので流用。
ボディは、前後フェンダーにサイドマーカーの孔を丸く開けてから塗装。ステンレスパイプを透明レジンで穴埋めし、色注ししたものをマーカーとして埋め込んだ。シャシーは前端を切り離してから塗装・組み立て。バランスパネルを先に一体化したボディへ、シャシーを後から入れるための工夫だ。ボディにインテリアを取り付けたら、ラジエターとラジエターウォールを組み合わせた(接着しない)状態にし、シャシーを入れる。所定の場所に収まったら接着剤を流して、全て固定する。ナンバープレートはタック紙に印刷して使用。
カーチェイスの最後には爆発してしまうチャージャーだが、マスタングともども、途中のダメージ状態を再現して作るのも面白いかもしれない。
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