映画の歴史に残るあのマスタングを再現
スペシャリティカーというジャンルを確立した名車、フォード・マスタング。その成り立ちは、フォード初のコンパクトカーであったファルコンのシャシーを用い、その上にスタイリッシュな2ドア・ハードトップのボディを架装したというものだった。1964年型の途中でデビューしたマスタングだが、翌1965年型にてよりルックス重視のファストバックを追加、その人気をさらに確かなものとした。ボディサイズは年々拡大していき、登場時にはホイールベース108インチ(2743mm)、全長181.6インチ(4613mm)だった初代だが、ラストの1973年型では全長193.8インチ(4923mm)に及んでいる(ホイールベースは1971年型で1インチ=2.54mm延長)。
この1968年型は、初めて全長を伸ばした(183.6インチ=4663mm)1967年型のキャリーオーバーで、外観では細部を変更したのみ。フロントグリルから横バーが無くなった点、後輪前のダミースクープが上下二分割からシンプルな一本タイプになった点、サイドマーカーが付くようになった点などが目立つところだ。搭載エンジンは直6は200-cid(3.3L/115hp)のみ、あとはV8で289-cid(4.7L/195hp)、302-cid(5L/230hp)、390-cid(6.4L/325hp)、さらに最強版として427-cid(7L/390hp)があった。なお、この427は3ヶ月で姿を消し、代わりに428-cid“COBRA JET”(7L/335hp)が加わっている。
さて、ここでご覧頂いているのは1968年型ファストバックの1/25スケール・プラモデルだが、もうお気づきの方も少なくないだろう。この作品は、1968年公開、スティーブ・マックイーン主演の映画『ブリット』の劇中車を再現したものである。もはや映画史における伝説ともなった同作のカーチェイス、そこで爆走するマスタングは非常に魅力的で、アメ車モデラーとしては是非ともモノにしたいと思うものだろう。この作品は、1968年当時の貴重なAMT製キット(いわゆるAnnual Model)から制作した。
中身はレベル製ブリット・マスタングに入れ替え
下の写真が、使用したアニュアル・キット(6168 1968年製)。このボディは申し分のないプロポーションとディテールを具えるが、シャシー、足周りとボディのフィッテングに非常に苦労する。そこである意味反則技だが、ボディ関係はこのオリジナルを使う一方、シャシー、足周り、エンジン、インテリアをレベルの1968年型ブリット・マスタング(85-1513 2005年製)からそっくり移植した。ボディカラーのHighland Green(カラーコードR)は、アクセルSのグリーンとメジャムイエローで色決め、クレオスの旧版シルバーを少なめに加えて深みを出し、補色のマゼンタを1滴。純正カラーチップより僅かに明るく調合した。
インテリアはボディと干渉する部分を一部削ればそのまま移植可能で、エンジンもエアクリーナーを少し下げただけ。シャシーはホイールベースが2mmほど長いので、前サブフレーム付近でシャシーを切断、後部パネルを短く切り取り、組み立ての最終段階で微調整して接着した。関連してエキパイやプロペラシャフトの長さも調整している。
『ブリット』仕様への改造は、まずバンパーと一体のフロントグリルを分離し、グリルは外周部分のみ残してボディに取り付けて成形。グリル奧のメッシュはキットのオプションパーツから切り出した。ボディサイドのロッカートリムがないので、細いプラ板で追加。リア左右のバックランプは削除、バランスパネルに一体成型のテールパイプ4本を取り除き、切り欠きをプラ板とシアノンで埋める。テールパイプは流用パーツを黒く塗った。エンブレムやバッジの類いは一切付かないので、リアの「MUSTANG」ロゴを削り取り、ガスキャップの「GT」ロゴも削除。テールのベゼルは黒、ガスキャップのセンターも黒く塗られていたようだ。
お気付きかもしれないが、本作例には劇中車に見られるサイドミラーとアンテナが不足している。適当なパーツが見当たらずつい後回しになってしまったとのことだが、他にもリサーチしきれていない箇所があるかもしれない。そういう意味では本作例は劇中車の完全再現とは言えず、できるだけ近づけた「レプリカ」と捉えて頂ければ幸いだ。前後バンパーは業者による再メッキを施しており、ナンバーはモデル用にアメリカで出回っている、フォトペーパーに印刷されたものを使用。ジャンクのプレートに貼って取り付けている。
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