【比較試乗】プジョー対DS対シトロエン!同門フレンチEVのベストバイはどれだ!?

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同じプラットフォームを使用する三者三様のBEV!

先日書かせて頂いたシトロエンC4の発表会レポート、そしてそのEVモデル試乗記の続き。実はË-C4試乗の前後に、同じPSAグループ内のプジョーe-2008GT(一番左写真)とDS 3クロスバックE-TENSE(一番右写真)というBEVを数日ずつ試乗していたので、今回は3台の違いを確認しながら、個人的なベストバイを考えてみたい。

3台ともPSAグループが2018年のDS 3クロスバックから展開しているCMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)を使用していて、EVの場合はeCMPと呼ばれる。2つのトレッド、3つのホイールベース、3つのリアモジュール、複数のホイール径を任意で組み合わせることで汎用性が高く、B、Cセグメントのシティカーを幅広くカバーしていて、今回は2008とDS 3クロスバックがB、C4がCセグメントとなる。ちなみその上級車種はEMP2プラットフォームを使用中だ。

PSAグループがB、Cセグメントのシティカーで使用するCMPプラットフォーム。EVの場合はeCMPと呼ばれる。

サイズも車重も一番大きいシトロエンC4

というわけで、最初に取材車のスペックを比較しておこう。まずはサイズから。

プジョーe-2008 GT
■全長×全幅×全高=4305×1770×1550mm
■ホイールベース=2610mm
■車両重量=1600kg
■タイヤ=フロント215/60R17/リア215/55R18

シトロエンË-C4エレクトロニック・シャイン
■全長×全幅×全高=4375×1800×1530mm
■ホイールベース=2665mm
■車両重量=1630kg
■タイヤ=195/60R18

DS 3クロスバック E-TENSE
■全長×全幅×全高=4120×1790×1550mm
■ホイールベース=2560mm
■車両重量=1580kg
■タイヤ=215/55R18

比較すると、DS 3の全長の短さが際立ち、その分車両も軽い。1台だけCセグとなるC4はやはり全長が長く、車両も重い。3台とも機械式駐車場に入る1550mm以下の全高であることに注目だ。

続いてパワートレイン。

プジョーe-2008 GT

  • ■定格出力=57kW
  • ■最高出力=100kW(136ps)/5500rpm
  • ■最大トルク=260Nm/300-3674rpm
  • ■一充電走行距離=385km(以下JC08モード)
  • ■交流電力量消費率=140Wh/km
  • ■総電圧=395V
  • ■総電力量=50kWh

シトロエンË-C4エレクトロニック・シャイン

  • ■定格出力=57kW
  • ■最高出力=100kW(136ps)/5500rpm
  • ■最大トルク=260Nm/300-3674rpm
  • ■一充電走行距離=459km(以下JC08モード)
  • ■交流電力量消費率=113Wh/km
  • ■定格電圧=400V
  • ■総電力量=50kWh

DS 3クロスバック E-TENSE

  • ■定格出力=57kW
  • ■最高出力=100kW(136ps)/5500rpm
  • ■最大トルク=260Nm/300-3674rpm
  • ■一充電走行距離=398km(以下JC08モード)
  • ■交流電力量消費率=135Wh/km
  • ■定格電圧=400V
  • ■総電力量=50kWh

モーターの出力は3台とも全く同様だが、興味深いのは、大きさも車重も最大のC4が、逆に走行距離も、数値が低ければ低いほどいい交流電力量消費率、いわゆる電費も一番いい数値となっていることだ。
気になったので輸入元に聞いてみたところ、やはり一番新しいモデルということで、熱効率があがっていて、インバーターや補器類に改良が入った結果とのことだ。モーターの出力やバッテリーの大きさだけで数値が決まらないことが、これでよくわかる。

それでは気になる車両価格を見てみよう。

プジョーe-2008 GT
■価格=4,935,000円(税込)

シトロエンË-C4エレクトロニック・シャイン
■価格=4,650,000円(税込)

DS 3クロスバック E-TENSE
■価格=5,340,000円(税込)

そうなのだ。ここでも1台だけCセグとなるC4の価格が、逆に一番安いのである。ただしC4には遅れて設定となるナビが装着されていないことを差し引くと、2008といい勝負か。DSはさすが高級ブランドということもあり、少し高めの設定となる。

2008→C4→DS 3を各数日ずつ乗ってみたところ

では乗ってみてどうか。試乗順は2008→C4→DS 3で各数日ずつだ。

まず2008からC4に乗り換えて思ったのは、2008はかなり軽快なクルマだったということ。車重やボディサイズの差もあり、C4の乗り始めは何だか重いクルマだと感じてしまった。しかしC4の乗り心地は神がかっていて、そこは試乗レポートをご覧頂きたいのだが、慣れてきたらすっかり魅せられた。
DS 3はその中間となり、スポーティでもあるけど適度なフラット感もあって、しっとりとした高級感のある乗り味。内装の作り込み、デザイン性の高さを見ていると、”フランス・アバンギャルド”の片鱗を感じてきて、人とは違うものを手にした感がかなり強い。
そういう意味ではあくまで比較ながら、C4の内装はコストを抑えたように見えて、メーターもシンプル。抑えたコストはその分、シートの仕上がりに回った印象でもある。

今回の試乗は筆者の自宅と事務所がある東京都内が中心で、最後、DS 3だけ栃木県宇都宮市までの取材往復に使用した。3台とも前述のように機械式駐車場に収まる都心では重宝するボディサイズで、後部座席を多用しない場合は荷室も含めて、2008のパッケージがベストバランスに感じた。逆に多用する場合はC4のほうがいいだろう。
3台に共通しているのは、”これは電気自動車でございます”という主張が内外装に少ないことで、某車のように”ゼロエミッション”というエンブレムをボディの各所に貼り付けることもない。これはどちらがあるべき姿かという話ではなく、3台が”自然体でBEVに乗るライフスタイル”を選びたい方に向けた、PSAからの提案だということだ。

一応書いておきたいBEVに対する課題と選ぶ理由

ただ多くの方がレポートしているように、BEVを毎日使用するには、まだまだインフラが整っていなかった。

今回は敢えて電費を気にせずガンガン走ったところ、みるみるバッテリーが減ってきて、高速道路でも流れに乗るような運転では消費が早く、一番左をゆっくり定速で走ってようやく効率がいい印象。
DS 3で宇都宮往復の際、既に数日走っていたので、朝に表示された航続距離が宇都宮まで届いておらず、慌てて三菱自動車ディーラーで30分急速充電。それでも目的地までギリギリで、取材後、日産自動車ディーラーで30分×2回急速充電をするはめになった。
ちなみにこれは高速道路に乗る前で並ばずしかも連続でできたが、途中PAで充電スペースを見たら満車で、これに並んだらあとどれだけ待ったのか……と。他にも、自宅近くで駆け込んだトヨタ自動車ディーラーが急速充電でなく(ただしお店の対応は一番よかった)、少し先のレクサス・ディーラーは時間外で断られ(しかも免許証と車検証を求められた)、別の日産自動車ディーラーに向かったこともあった。

これは今回の3台に限らない話で、理想は自宅に充電環境があることだが、価格面など課題も多いと聞く。ただ歴史的に見て、新しいものは最初だいたいこんなもので、それをわかっていても新しいものが欲しいと興味を抱いた人たちが先に手にして、そうして普及を繰り返してきた。今回、合計2週間あまりの”BEV生活”は新しさに溢れ、(今さらながら)実に新鮮で楽しかったのも事実なのだ。
しかもその新鮮さを後押ししてくれたのは、3台それぞれが個性を発揮しているフレンチ・デザインであり、フランス車らしい”質感のある柔らかさを持つ”乗り味であった。エンジンと比べモーター自体は(今のところ)個性を発揮しにくいので、乗り味にアドバンテージがあるフランス車は、ここからますます強さを発揮していくように思う。

そして最後に個人的なベストバイだが、というわけで中でも個性がずば抜けている、DS 3クロスバックとしたい。デザインだけでなく、素材の使い方が好印象だったのと遮音性の高さも付け加えておく。ただこれはあくまで好みで、充電環境さえ許せば、あとはどれを選んでも後悔しないと思わせる3台だった。

photo=平井大介/D.Hirai、グループPSAジャパン

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平井大介
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