停止中や低速走行時でも倒れないバイクの秘密とは?【ホンダ安全ビジョン・テクノロジー取材会】part.3

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後輪が揺動することで倒れた方向と反対側に車体を動かす

誰も乗っていないのに、倒れないでそのまま立っている二輪車。なんとも不思議な光景だ。これは、ホンダが研究を進めている二輪姿勢制御システム「ライディングアシスト」の最新版だ。

このアシスト技術は、ホンダの二足歩行ロボット「ASIMO」の姿勢安定化技術を応用したもの。スタンドを使用していないのに倒立しているのはある意味違和感がある光景だ。

近年、大型二輪車の愛好家が増えているが、中には若い頃に二輪車を楽しんでいて中高年になってから久々に二輪車を乗りたくなり、せっかくだったら大型二輪車に乗りたいという人も多い。そんな人たちにとって、やはり気になるのは転倒のリスクだ。転倒のリスクに対する不安を和らげ、より多くに人に軽快なライディングを楽しんでもらうことが、ホンダの狙いだ。

ホンダは以前2017年のCESでも停止&極低速時に自立する二輪車を出展していたが、その際は前輪のジオメトリー変更機構と操舵制御によるものであった。今回はそれを進化させ、車体中央のジャイロセンサーにより動きを検知し、前輪の操舵アクチュエーターに加え、後輪の揺動機構が倒れた方向と反対側に車体を動かすことで、復元力を発生する仕組みとしている。

具体的なシステムは、ASIMOなど二足歩行ロボットの姿勢安定化技術を応用した。初期の研究開発モデルは、2017年に米ラスベガスで開催された世界最大級のIT/家電見本市のCES2017で公開され世界の注目を浴びた。この時は前輪操舵制御を主体とした自立だったため、安定して自立することが優先してしまい、自由で軽快な動きという点で課題があった。
https://youtu.be/tsNdNXEeyrs

今回公開された最新版ライディングアシストは、シートの真下にジャイロセンサーがあり車体全体の動きを計測し、前輪の操作するアクチュエーター(作動装置)に加えて、後輪に揺動機構として車体とつながる仕組みを取り入れた。この車体・後輪揺動機構によって、車体が倒れた方向と反対側に車体を動かして復元力を発生させている。これにより、前輪操舵制御の比率を下げている。

こちらは極低速で8の字走行している状況。通常ではバランスをとるのが難しいが、ライディングアシストの制御が入るとハンドルがふらつくことなく旋回することが可能だ。

結果的に、ハンドル操作がより自由になり、ライダーが細かな方向修正をすることができるようになった。実際に走行する様子を見たが、かなり低速で8の字旋回をしても、車体がふらふらすることはまったくなく、かといって強制的に制御しているという感じでもない。
あくまでも自然に、ライダーと二輪車が一体の動きになっており、ライダーとしては安心安全で快適という気持ちになることは間違いなさそうだ。開発担当者によると、駆動方式はEVで、車体重量は約250kg。姿勢制御システムにかかる電力はさほど大きくないため、航続距離に対する影響も少ないという。
こうした二輪車での究極の姿勢制御システムは、止まっている状態では自立できている四輪でも、より安全な走行に対する応用ができるかもしれない。

この記事を書いた人

桃田健史

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。

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桃田健史
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2021/11/30 12:00

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