デジタルと実車の両分野で並行して開発
ポルシェは、同社のピュアEV第二弾となるマカン・プロトタイプのテストを公開した。2023年までには市場に投入される予定で、さまざまな条件下で世界中で約300万kmにもおよぶテストが実施されているという。
マカンの電動モデルは、まずはデジタル分野での開発が進行。こちらは実際の車両の代わりにデジタルプロトタイプで、車両の特性、システム、およびパワーユニットを高精度で複製する計算モデルで、エアロダイナミクス、エネルギー管理、オペレーション、サウンドなど、多くの開発カテゴリーでのシミュレーションを目的とした20のデジタルプロトタイプがあるという。これにより、これまで発見されていなかった設計の矛盾を迅速に特定して解決することができるということだ。
このデジタルプロトタイプの中でも、最初に導入されたのがエアロダイナミクスの分野で、これは長い航続距離を確保するという観点から、空力抵抗を最小限に抑えることがフル電動モデルとなる次世代マカンにとって重要だったためだ。エンジニアたちは現在、シミュレーションを使用して、冷却エアダクトなどの細部を微調整しており、計算ではコンポーネントのさまざまな配置が考慮されるだけでなく、実際の温度差も反映することが可能だという。
さらに新しいディスプレイおよびオペレーティングコンセプトの開発もデジタルプロトタイプで行われており、シートボックスと呼ばれるものを使用してドライバーの環境を再現することで、デジタルプロトタイプと組み合わせた開発の初期段階でディスプレイおよびオペレーティングコンセプトを実現することができるとのことだ。
そして実車のプロトタイプは、これらのシミュレーションから得られたデータに基づいて、場合によっては手作業または専用工具を使用して精巧に作成。その後これは、仮想改良プロセスに基づいて定期的に適合され、同時に実際の路上テストの結果もデジタル開発に直接反映されるという。ポルシェAG研究開発担当取締役であるミヒャエル・シュタイナー氏は「車両構造、動作の安定性、ハードウェア、ソフトウェアおよび全ての機能の信頼性が当社の高品質基準を満たしていることを確認するために、現実世界の条件下における閉鎖されたテスト施設と公道での耐久テストが不可欠です。タイカンと同様に800Vアーキテクチャーを備えたフル電動モデルとなる次世代マカンは、ポルシェ特有のE-パフォーマンスを提供し、セグメントで最もスポーティーなモデルになるでしょう」と述べている。
また、マカンの次期モデルは2021年中に発売する予定で、将来的にはフル電動モデルとなる次世代マカンと一緒に提供されるという。それまでに実車とデジタルの両方において、さらに数100万kmのテストを実施する必要があるとのことだ。