2016年にデビューした2代目パナメーラが、登場から4年目を迎え初のマイナーチェンジを受けた。その内容は内外装デザインの刷新を中心にパワートレインの強化、インターフェイスのアップデートと大幅改良と言えるものだが、何よりも気に入ったのは肝心な「走り」の進化だ!
ようやくパナメーラの本来の姿に出逢えた
ポルシェという自動車メーカーの、クルマ作りに対する実直にして愚直な姿勢とその実現力には甚だ感服するばかりである。「特別なことはしていない。走る曲がる止まるがきちんとできるようにしているだけ」という彼らの哲学は2ドアスポーツカーのみならず4ドアのSUVやセダンにもちゃんと貫かれているからだ。
とは言うものの、現行ポルシェのラインナップの中で、パナメーラだけが個人的にはどうもしっくりこなかった。同セグメントの競合車と比べたら秀でている部分も多いいっぽうで、ポルシェの宇宙の中で比べて見るとパナメーラの輝きは、911や718やカイエンなどにはやや及ばないのではないかと思っていたのである。その理由を説明するのはなかなか難しいのだけれど、乗り心地もハンドリングも動力性能も、どこか物足りない感じが漂っていて「パナメーラってこんなもんなのかなあ」と大変僭越ながらも自分ごときはそんなことを考えていた。
同時に、そんなことを考えているのは世界で自分ひとりではないかとちょっと不安にもなっていたのだけれど、昨年フェイスリフトした新型に今回試乗して一連のモヤモヤは見事に吹き飛んだ。「そうそうこれこれ」という変貌を遂げていたのである。
それは走り出した瞬間からただちに分かった。ややしっとりと、そしてスルスルとスムーズに加速していく様は、従来型よりもずっと洗練されていて、何よりパワートレインやシャシーやボディの一体感が感じられる。極端に言えば従来型は、それらが別々の部屋で仕事をしていたかのようだったが、新型ではひとつの大きなテーブルで一塊になって取り組んでいる、そんな印象である。
資料には「PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネージメントシステム=エアサス)やPDCC(ポルシェダイナミックシャシーコントロール=アクティブスタビライザー)の制御マップをあらためたことなどにより、快適性や安定性が向上した」とあるが、それ以外にもおそらく生産技術の向上などもあり、クルマ全体の質感がワンランク上がったようでもある。
ステアリング操作に対する各部の動きはより俊敏となり、操舵応答遅れは皆無となった。ボディとシャシーの剛性感が上がったような気さえするほど、微細な無駄な動きまでほとんど見られなくなっている。ターボSの630ps/820Nmというとてつもないパワーは、低回転域ではあくまでもジェントルに、中高回転ではまさしくスポーツカーのごとき加速性能を披露し、エグゼクティブカーとしてもスポーツカーとしてもいける懐の深さも見せつけた。
ちなみにターボSの最高速は315km/h、0→100km/hは3.1秒で、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェにおける7分29秒81というエグゼクティブカークラスのレコードホルダーでもある。あの一体感のあるボディ/シャシーと宇宙一のブレーキがあれば、ニュルでも思い切りスロットルペダルを踏んでいけるだろう。
パナメーラ本来の姿にようやく出逢えたようで嬉しかった。ターボSのライバルはAMGのS63あたりだろうけれど、試乗車には400万円相当のオプションが付いていて総額は3300万円を超えていた。急に遠い存在になった。
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