スターSUV 、GLBの好敵手
「コンパクトSUV」「3列シート」「プレミアムブランド」と、人気モデルの必須項目をおさえたメルセデス・ベンツGLB。対するのは、日本独自のカルチャーで人気者となったフレンチ・ミニバン。新しいファミリカーの選択肢として、両者はどう対峙しているのか!?
兄弟車でも世界観が異なるベルランゴとリフター
’19年に先行モデルを発売したところ、あっという間に予約数を完売したというルノー・リフターとシトロエン・ベルランゴ。ここで取り上げたのは昨年、導入された2台のカタログモデルである。いっぽう、そのライバルとして引っ張り出したのが、こちらも昨年、兄弟車でも世界観が異なるベルランゴとリフター発売された人気モデルのメルセデス・ベンツGLB。3列シートのユーティリティとSUVのスタイリングがリフターとベルランゴのライバルとしてピッタリというのが編集部の見立てである。
先に兄弟モデルであるリフターとベルランゴについて解説すると、ヨーロッパではどちらも商用車版と乗用車版が用意されているが、日本で発売されるのは乗用車版のみ。もっとも、プラットフォームは最新のEMP2を使っているので、成り立ちとしては純粋な乗用車となんら変わらない。そもそも、たとえ商用車でも乗用車顔負けの良質な足回りを備えているところがフランス製バンの魅惑的な伝統といっても過言ではなかろう。
最新の1.5Lのディーゼルエンジンと8速ATのEAT8を採用する点も2台に共通する特徴。ではなにが異なるのかといえば、いずれもプジョーとシトロエンの最新のブランディングが採り入れられているところにある。
’16年に発表されたシトロエンの新しいブランドイメージは、ファミリーをターゲットにした明るくポップなもので、ちょっとIKEAに似ていなくもない。いっぽうのプジョーは、先進的で都会的なイメージにシフト。こうした変革は、いずれも“3番目のブランド”であるDSが誕生した影響と考えればいい。
そんな視点からリフターとベルランゴを比べると「ああ、なるほど!」と思うことが少なくない。
フィールと呼ばれるベーシックグレードのベルランゴは、ホワイトが支配的なインテリアで全体的に明るいイメージ。グレーとブルーのストライプが伸びるシート地もオシャレだ。いっぽうのリフターはスポーティなグレードのGTラインだったが、グレーの内装にブラウンのアクセントが採り入れられていて、なかなかシック。そしてプジョーのお家芸であるiコクピットが未来的なイメージを打ち出している。
もうひとつ、リフターとベルランゴで異なっているのがクルマのポジショニングで、リフターはよりSUVの要素が濃く、ベルランゴはよりミニバン的と見た。この点は、リフターにのみアドバンスドグリップコントロールと呼ばれるオフロード対応のトラクションコントロールが装備されているほか、タイヤサイズが大きいリフターのほうが最低地上高が20mm高く設定されている点などに表れている。
走りの印象はどうか。ともに搭載する1.5Lディーゼルはレスポンスが鋭いこともあってアンダーパワーな印象は皆無。スロットルペダルを踏み込んでいったときのパワーの立ち上がり方もリニアリティが高く扱い易い。これで低速域のノイズが下がれば文句なしだが、音質自体は安っぽく感じられないので合格点が与えられる。
ハンドリングはどちらも正確。ロールやピッチングは適度に抑えられていて、姿勢変化に関わらず安定したステアリング特性と接地性をもたらしてくれる。高速直進性も良好だ。
ただし、2台を比べると、ベルランゴのほうがハーシュネスが軽いためにゴツゴツ感が薄く、乗り心地は快適。これに比べるとリフターはやや荒く感じられる。
全高が1.8mを越える2台は荷室も広々としていて、高さ1mほどの荷物も楽々と呑み込む。もっとも、ベルランゴの試乗車はリフターと違ってハイコンソールと呼ばれる棚を天井付近に備えていないため、実質的な室内高がリフターより10cmほど高かった点も付け加えておこう。