【比較試乗】「メルセデス・ベンツ GLC F-CELL×BMW X3 xドライブ30e×アウディ Q5 40 TDI」ミドルSUVに見る、パワーソースの未来と取捨選択。何を手に入れ、何を手放すのか?

乗り比べて気づいたそれぞれの面白さ

メルセデス・ベンツGLC F-CELLは、世界初の市販プラグイン水素燃料電池車だ。2020年春に日本上陸を果たしたこのFCEVは、水素タンクや燃料電池ユニットに加えて13.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、燃料電池を使わない状態で約41kmのEV走行も可能。駆動用モーターはリアアクスルのみに搭載し、SUVでありながら後輪駆動という一風変わったモデルだ。

メルセデス・ベンツ GLC F-CELL

【Specification】■全長×全幅×全高= 4680×1890×1655mm■ホイールベース=2875mm■車両重量=2150kg■モーター形式/種類=-/交流同期電動機■モーター最高出力=200ps(160kW)/ 5400rpm■モーター最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/4080rpm■トランスミッション=1速固定式■リチウムイオンバッテリー容量=13.5kWh■燃料タンク容量=77L+37L(水素)■航続可能距離(参考値)=約377km■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク■タイヤサイズ(F:R)=235/50R20:235/50R20■車両本体価格(税込)=10,500,000円

車両重量は2150kgと重いが、低重心かつ後輪駆動ということで、走りは想像以上に軽快だ。最高出力200ps、最大トルク350Nmと特にハイスペックではないが、EVらしく発進時からとても力強い加速が味わえる。

燃料電池とバッテリーを使うシステムモードは4つ
燃料電池とバッテリーを使用する「ハイブリッド」、燃料電池を電源としてバッテリー充電を保つ「F-CELL」、バッテリーによるEV走行の「バッテリー」、バッテリー充電を優先する「チャージ」と、システムモードは4つ。ラゲッジスペース容量は通常時で550Lとなる。

現時点ではセンターディスプレイもタッチパネル式ではなく、レーンキープアシストが搭載されない(警告のみ)など、機能装備の面で最新メルセデスには見劣りするが、まるで背の高いFRスポーツセダンのような走りが楽しめて、ピュアEVのように充電時間を気にする必要がないというのは、正直かなり魅力的である。ただし、身近に水素ステーションがあれば、である。

BMW X3 xドライブ30e Mスポーツ エディション ジョイ+

【Specification】■全長×全幅×全高= 4720×1890×1675mm■ホイールベース=2865mm■車両重量= 2060kg■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ / 1998cc■最高出力=184ps(135kW)/ 5000rpm■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1350-4000rpm■モーター形式/種類=P251/交流同期電動機■モーター最高出力=109ps(80kW)/ 3140rpm■モーター最大トルク=265Nm(27.0kg-m)/1500rpm■トランスミッション=8速AT■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク■タイヤサイズ(F:R)=245/50R19:245/50R19■車両本体価格(税込)=7,810,000円

BMWは、X3 xDrive 30eをエントリー。2020年春に日本上陸を果たしたX3で初のPHEVは、184psと300Nmを発揮する2L直4ガソリンターボに109psと265Nmを発する電気モーターを組み合わせる。基本的には電気モーター主体で走行するが、アクセルペダルを少し深く踏み込むと、瞬時にエンジンが始動してパワフルな走りを披露する。パワーソースの切り替わりがはっきり判るのは、今どきのハイブリッドでは珍しいが、逆にそこに運転している実感があって楽しめる。エンジンメーカーをルーツとするあえての演出なのかもしれない。PHEVとしてのウィークポイントはラゲッジスペースの容量が450Lと他のモデルより100L少ない点くらいである。

バッテリースペースがラゲッジスペース容量に影響
ドライブモードは「スポーツ」「コンフォート」「エコ プロ」の選択が可能。電動パワートレインのみで走る場合は別途「eドライブ」を選択。シフトレバーを横に倒し「S」にすれば基本的にはエンジンのみで駆動。ラゲッジスペース容量は通常で450L、最大1500Lまで拡張。

アウディは、本国にはPHEVも用意されているが、日本市場には未導入なので、今回は2L直4ディーゼルターボを積むQ5 40TDIクワトロを持ち込んだ。190psと400Nmを発揮するパワフルなエンジンに7速Sトロニックを組み合わせたパワートレインは、とてもパワフル&スムーズな走りを実現していて、細かいことを何も気にすることなく、快適な走りが楽しめる。個人的には熱烈なICEファンというわけではないのだが、慣れ親しんだ運転感覚に、思わず「やっぱりクルマはこうでなくちゃ!」と言葉が漏れてしまった。

アウディ Q5 40 TDI クワトロスポーツ

【Specification】■全長×全幅×全高= 4680×1900×1665mm■ホイールベース=2825mm■車両重量=1900kg■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/ 1968cc■最高出力=190ps(140kW)/ 3800-4200rpm■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/1750-3000rpm■トラン
スミッション=7速DCT■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:Wウイッシュボーン■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク■タイヤサイズ(F:R)=235 / 65R18:235/ 65R18■車両本体価格(税込)=6,700,000円

メーカーもパワートレインもそれぞれ異なるだけに、良し悪しを直接比較することは出来ないが、各メーカーの未来に向けたスタンスを良く表した3台であることは間違いない。その点を踏まえてクルマ選びをすれば、もっといまの時代に対する理解が深まり、クルマのある生活が一層興味深く楽しめるようになるかもしれない。

ドライバーオリエンテッドなコクピット
空調やオーディオが配置されたセンタークラスターは運転席側に傾けられ、視覚や触覚にこだわったステアリングや操作系スイッチなど、ドライバーオリエンテッドなコクピットを演出。ラゲッジスペース容量は通常で550L、最大1550Lまで拡張。

PERSONAL CHOICE BMW X3 xDrive30e

エコと内熱機関の両立がベスト

今回の3台の中なら、クリーンなEV走行からパワフルな走りまで楽しめて、先進的でありながら従来のガソリン車と使い勝手が変わらないX3xDrive30eだ。ハイブリッドシステムの制御が体感できる乗り味もいい。

リポート:竹花寿実/フォト:安井宏充 ルボラン2021年2月号より転載

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竹花寿実
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