個性の出し方はまさに三者三様
メルセデス・ベンツEQCは確かに重量感があるのだけれど、それは多分意図的にそうしているのだろうと踏んでいる。特に、スロットルはないけどスロットルペダルを踏み込むと、ほんの一瞬の間があってからジワジワと強力なトルクが湧いてくるような所作は、ひと昔前のメルセデス(W124とかW126)にそっくりだ。これを持ってして、メルセデスらしい走りというものを表現しているのだろう。
メルセデス・ベンツ EQC400
もちろん、e-tronと同じ最高出力に約100Nm増しの最大トルクで60kg軽いのだから、実際に重ったるくて鈍重なわけではない。クルマがいったん動きだせば、EV特有の浮遊感を伴う強烈な加速力を発揮する。e-tronは通常、主にリアに駆動力を寄せているが、EQCはフロント優先のFFのような駆動力配分である。しかし、後輪にも思った以上に頻繁に駆動力が与えられるので、前輪駆動のSUVに乗っている印象は薄い。
パドルを使って回生ブレーキの強弱を調整できる手法は他のEVと同じだが、ワンペダルで運転できるくらいに回生ブレーキの効きを強くしても、完全停止には至らない。「クルマを完全に止めるのはドライバーの責任」というメルセデスのポリシーがそこにはある。ちなみに通常モードによる回生ブレーキのフィーリングは、メルセデスの機械式ブレーキによく似ている。ブレーキペダルを踏み込むと制動力がモワッと立ち上がり、ペダルを戻しながらちょうどいい塩梅にコントロールできるようになっている。
バッテリーを大量に積んで2トンを超える重量は避けられないEVの欠点を逆手にとって、重量感を重厚感に変えてメルセデスの味としたセンスはさすがである。
BMWはつい先日、次世代EVとして「iX」を発表。EV専用のアーキテクチュアをセダンとSUVの2タイプ用意すると伝えられた。アウディやメルセデスが既存のプラットフォームを使ってEVを仕立てたのに対して、BMWはi8もi3もそして新しいEVシリーズも専用のプラットフォームにこだわる。
BMW i3 レンジエクステンダー
本来、EVとはそうあるべきだと個人的には思っている。エンジンとトランスミッションという大きく重く振動して熱も発する塊を積まなくていいのだから、パッケージの自由度が広がると考えるからだ。そのお手本ともいうべきモデルがi3だろう。
極端に短いボンネットと前後のオーバーハングにより、外は小さく中は広いボディを構築した。RRの駆動形式により、「前輪は操舵、後輪を駆動」というBMWの基本哲学もきちんと反映されている。そして何よりよく曲がるその身のこなしは、BMW以外の何物でもない。
EVもいよいよ、個性で勝負する時代に本格的に突入したのだ。
【PERSONAL CHOICE】BMW i3 RANGE EXTENDER
この1台ですべてがこなせる
現状の日本の充電インフラを考慮すると、EV1台ですべてをこなそうとするのは勇気がいる。そこで内燃機を長距離用、EVを街乗り用と2台持つ決断をすればスッキリするし、そうなるとi3の一択にしかならない。
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