ヴァリアントこそが真のファミリーカー!?
ヴァリアントが数あるゴルフのラインナップのなかでも、ファミリーカーの資質が特に高いと思われる理由は、リアシートのコンフォート性が抜群であるからだ。
第一には、ルーフのラインをセダンのように後方に向かって急激に下げていく必要のないワゴンボディゆえに、リア空間の縦方向のサイズがユッタリとしたものになっていることが挙げられる。
オプションで用意される2ピース構造のパノラマスライディングルーフは、ルーフを下げる必要のないワゴンボディならでは特典といえる。こういってはなんだが、セダンの場合、ルーフが下がっているため、リアシートのヒップポイントも下げざるを得ず、そこに座った感覚はどちらかといえば穴蔵的。太いCピラーもあって、閉所感も少なくない。
第二には、これもワゴンゆえだが、ラゲッジスペースのフラットフロア化が結果的に、リアシートのヒップポイントをセダンに比較して約20mm押し上げている点が挙げられる。荷室を有効に、様々な形で使えるよう工夫するのは、ワゴン開発時の重要なテーマのひとつ。VWの開発陣は荷室のフラットフロア化を目指して、本来のトランクルームのフロアを二重構造としてかさ上げし、リアシートをダブルフォールディング式に倒したときにフロア全体がフラットになる構造とした。それが、リアシートのヒップポイントを上げる結果となっている。
このリアシートの約20㎜のヒップポイント上昇は、乗員のアイポイントの約20mm上昇を意味し、乗員にセダンでは得られない視界の良さや開放感を提供、さらにリア空間を快適なものとする。
トランクルームのフロアを二重構造でかさ上げする手法は、すでにゴルフ・プラスでも採用されている。ご存知のように、ゴルフ・プラスはボディ全高を高くし、前後シートをセダンに比較して前方にセット、アップライトに座らせることで豊かな空間を獲得したクルマ。ゴルフ原理主義者も評価する優れたパッケージングだ。
このため、セダンでは使い勝手が悪いと指摘されたラゲッジスペースも、大きく改善することができたわけだが、一方で、リアシートのヒップポイントがやや高くなりすぎたキライもある。リアシートを普通にセットすると、足の長いドイツ人にはちょうどいい高さなのだろうが、我々日本人の平均的な足の長さでは、フロアに足がペタッとつかない、つまりいざというときに踏ん張れなかったりして、長距離ではむしろ疲れてしまう可能性が少なくない。
いうまでもないが、全高がセダンとゴルフ・プラスの中間にあるヴァリアントのそのリアシートは、我々日本人にはピッタリというべきヒップポイント。リアシートに子供やご老人を乗せる機会が多いファミリーカーの場合、これは絶対に見逃せないポイントで、なにを隠そう、リポーターはこれをもって、ファミリーカーとしての資質が、ゴルフのラインナップの中でも抜群と見ているのだ。
新旧モデルを比較すると……?
先代ゴルフ・ワゴンとゴルフ・ヴァリアントのもっとも大きな違いはデザインの基本的なコンセプト。フロント・マスクはベースとなったゴルフ( IIIとIV)に準じるデザインが通例だったが、ヴァリアントではゴルフよりも、むしろジェッタに近いイメージを採用。さらにリアのDピラーを寝かせたデザインも歴代ゴルフ・ワゴンにはなかったものだ。