TSIの価値観を象徴するのはやはりゴルフ
あれやこれや考えてみても、7車種、3エンジンのゴルフTSIファミリーは、どれもそれぞれに魅力はあって、買ってはいけないモデルなど皆無なのだが、一応ベストマッチを探すという趣旨に従って結論を出さねばならない。
まず、TSIの出現によって、大いに魅力が増したのはトゥーランだろう。小排気量ながらトルクが太いという恩恵が、重いミニバンにもっとも有効に働くからだ。さらにいえば、170psバージョンのほうが、その思いが強い。ゴルフ・ヴァリアントでも170psがオススメだが、これは2.0L直噴ターボじゃなくてもいいね、という消去法的な選び方による。
GOLF VARIANT TSI Comfortline(TSI-170ps)
新たにTSIファミリーに加わったゴルフ・ヴァリアント。TSIコンフォートラインはゴルフGT TSIと同じ、170ps仕様のツインチャージャーTSIを搭載する。ワゴンボディとはいえ、それほど重くはないヴァリアントだけに170psでもパフォーマンスは必要十分以上。
問題はハッチバック。ゴルフGT TSIはあらゆる面で考えたときのバランスが素晴らしいのだが、シャシーまで含めるとやはりゴルフGTIも捨てがたい。また、同じTSIでも140psバージョンがあったらどうなのだろう? という思いもある。環境に気を遣うことが求められてきている昨今、ことによるとクルマで楽しむという行為が否定されかねない状況まで考えられ、クルマ好きはだんだんと肩身が狭くなってきているが、そんな中でも後ろ指さされず堂々と楽しめるのがTSI。未来を明るく照らしてくれる救世主なのだ。そういった、燃費と操る楽しみをしっかり両立させたというTSIの新たなる価値観が、もっとも活かされているモデルといえば、やはりハッチバックのゴルフGT TSIになるのだろう。
GOLF VARIANT 2.0TSI Sportline(TSI-200ps)
200psの2L直噴ターボを搭載するゴルフ・ヴァリアント2.0TSIスポーツライン。簡単にいえばヴァリアントの“GTIバージョン”的な位置づけとなる。この200psのTSIと固められた足回りの組み合わせにより、ワゴンとしては“過剰”なほどの走りも味わえる。
ちなみに、欧州では乗用車のディーゼル比率が50%を超えており、CO2排出量削減の決め手のようにいわれているが、今後は少し状況が変わりそうだ。というのも、次期規制をクリアするディーゼルはコストがかかるゆえ、2.0L以下のクラスでは非現実的な価格になりそうなのである。となると、直噴と過給器を組み合わせたガソリン・エンジンが、小排気量車では主役になる可能性が大。TSIは、すでに未来を見据えたユニットでもあるのだ。
リポート:石井昌道/フォト:宮門秀行