幌の開閉機構も電動採用の現代レベル
改めてクルマを止めて細部をチェックしてみるが、ユーズドカー特有の経年変化は否めないものの、古臭さを感じさせるような傷みは
見つからない。ブルーとブラックの本革コンビシートは新車時ほどの張りはないが、適度の緩みがかえっていい雰囲気。力を抜いて乗
るにはこの〝こなれ感〞がいいし、ブルーとブラックのコントラストは健在なので、非日常感を演出して欲しいときも不満はないはずだ。
4シーター・オープンの場合、幌自体のボリュームが大きくなるので、どうしても開閉の動作が遅くなるが、試乗車は幌を閉めるときも開けるときも動きに鈍さはなく、何度かやってみたが常に20秒程度で完了。Aピラーからのリリース(開けるとき)と固定(閉じるとき)は幌前端のロックレバーを手動で操作することになるが、結合部にズレもなく調整はほぼ万全。左右のロックを止める時間を足しても開閉に要する時間は1分程度で、これなら開閉動作を面倒に感じることはない。
ただし、幌の作動はエンジンを止めた状態でないとできないようになっており、必ずクルマを止めて一度エンジンを切る必要がある。最新のオープンカーのように、信号待ちや渋滞時に開閉を済ませることはできないわけだ。より安全を重視した設計といえるが、一方でエンジンを止めた状態で電動モーターを動かすことになるのでバッテリーへの負担は少なくない。ユーズドカーの場合は電装関係が弱っていることもあるので、カブリオは特にバッテリーの管理やメンテナンスが欠かせないことも知っておきたい。
また、幌の開閉は電動モーターと油圧を併用したシステムなので、不具合が出た場合はアッセンブリーでの交換が必要になる。もちろんエマージェンシー用の手動開閉機構も備えてはいるが、幌の開閉システムにトラブルが生じるとかなりの出費を覚悟しなければならない。機械的な信頼性では一歩先をいくVW車だが、幌の開閉システムの不具合がないかどうか、購入前にしっかりチェックしておく必要がありそうだ。
幌を開けた状態でしばらく走り続けるときは、見栄えだけでなくホコリの侵入を防ぐためにぜひ幌カバーをかぶせたいが、これも慣れれば数分でピッタリ取り付けできる。ただ、カバーをガイドに沿って押し込んでいく作業が必要となるので、手の小さい女性はちょっと手間に感じるかもしれない。周囲がホコリなどで汚れていることもあるので、薄手の軍手などを使ったほうがいいだろう。
さて、幌の開閉は予想以上にスムーズだった試乗車だが、内装も程度のいい状態が保たれている。樹脂類の傷みも少なくスイッチ類の作動も問題なし。リアシートのバックレストが倒れてトランクスペースを拡大できる隠しワザも持っており、ワイヤーコントロールによるその作動もスムーズ。ボディがしっかり補強されているせいもあるのだろうが、歪みによる開閉部のズレなどが皆無というのは立派だ。そのトランクルームはカタログデータによると270Lと広くはないが実用サイズ。ガスダンパーで支えられたリッドの開閉もスムーズだ。もちろん、単独でロックできるのでオープン時の収納庫としての機能も果たす。
IIIのカブリオがデビューしたときは厚めの樹脂製フェンダーアーチモールをまとい、全幅が1710mmとわずかに小型車サイズを超えて3ナンバー登録となっていたが、IVのカブリオレとして登場したときにフェンダーアーチモールがなくなり、5ナンバーサイズ(全幅1695mm)へ回帰。ゴルフが全車3ナンバーとなったのとは対照的だったが、これもIVフェイス・デザインとのバランスを考えてのこと!?
なお、特別限定車のカラーコンセプトはジャズブルー、ムラノレッド、ブラックの3色が設定され、ともにバンパーやモール、ミラーはボディ同色でまとめられているが、フロントバンパー下端、サイドシル下部は黒い樹脂製となっている。これは路面の段差や縁石に擦ったときでもダメージが大きくならないようにという配慮でもあり、試乗車も下をのぞきこむと擦った形跡が。ただ、樹脂パーツ単体での交換も可能なので、それほどコストをかけずに元に戻すことができるはずだ。
IVフェイスのモデルなら認定中古車も選択肢に
最後にカブリオ各モデルの中古車相場にも触れておきたい。のカブリオはほとんど市場には出回っておらず値もつけられない状況だが、同じボディの後期型(IIルック)のカブリオならまだ探すことができる。価格は50万円程度から200万円以上までまちまちだが、安いものはレストアの素材に、高いクルマは滅多にないプレミアム車と見たほうがいい。
IIIのカブリオとなるとタマ数も増えて、安いものは40万円台、上限でも85万円程度と手に入れやすい。やや年数が経っているのでメンテ費用がそれなりに必要になってくるが、程度のいいクルマを探すことも可能だ。そして一番タマ数の多いIVのカブリオレは100万円を切るあたりから、かなり程度がいいクルマで200万円といったところ。IVならここで取り上げた試乗車のように保証付きの認定中古車も選択肢に入ってくるので、オープンカーを買うのは初めてという人にもオススメだ。