甲乙つけがたい3車3様の出来
EQCはIペイスと同等のサイズで最高出力もほぼ同じながら、約300kg重いことで0→100km/hは5.1秒。やはりBEV専用プラットフォームか否かの違いか? 加速感は比較すればややマイルドに感じられるとはいえ、それでも十分以上に速い。
印象深いのは、たとえBEV初体験の人が運転してもまったく戸惑わないだろう違和感のなさ。アクセル操作による加速感、回生の減速感などが本当に自然。BEVではモーターのトルクを強調するべく、エンジン車ではあり得ない加速感や飛び出し感を伴うモデルも見られるが、さすがはメルセデスで、良心的で超優秀なドライバビリティを披露するのだ。回生はDレンジではエンジンブレーキ相当だが右のパドルを引いたD+はほぼゼロ、左を一回引くとD-、2回引くとD--と強くなっていく。デフォルトは自然な感覚であるのに加えて、任意に選択できるのがいい。D--の回生はかなり強め1ペダルドライブにも近いが、停止するまではいかず、10km/hを下回る程度でクリープ状態になる。
シャシー性能はGLCよりも重量配分の良さで上回っているくらいだが、エアサスや可変ダンパーを持たないコンベンショナルのため、路面の荒れがひどいところなどでは多少のドタバタするようなこともあった。それでも全般的には乗り心地が良く、スポーティではないものの、しっかりとした操縦安定性が感じられて安心・安全。メルセデスらしい雰囲気だ。
e-tronスポーツバックは大きいわりには対EQCで40kg重いだけに収められていて、出力はまったく同じ。0→100km/hは5.7秒となる。一般的な実用車の場合、10秒を切れば速く感じると言われるのでこれでも過剰なくらいだが、最近のアウディの洗練度は目を見張るものがあるので、速さのなかにも上品さがある。
加速から巡航に移るべく、アクセルペダルから右足を浮かせたときには、その洗練度の高さが再び味わえる。ドライブトレインのフリクションがまったくないのかと思えるほどスーッと滑らかに転がっていくのだ。デフォルトのDレンジが回生ゼロというのもそのフィーリングを助長してはいるが、それでも機械精度の高さにおそれいる。
サスペンションなども然りで、乗り心地はある程度まではソフトタッチで極上。それでいてストロークが深まるとビシッと安定してフラットな姿勢を保つのが素晴らしい。
回生は左のパドルを一回引くとエンジンブレーキ相当で、もう一段階強めも用意されているが、IペイスやEQCほどには強くならない。その代わりに、エフィシェントアシストというものがあり、オートにしておけば、前走者に追いついていくと自動的に回生が強まって車間を維持してくれる。BEVの特性をいかして、ドライバーをアシストするのだ。それも違和感はなく、欲しいところで自然にエンジンブレーキ的なものが入ってきてくれる感覚。クルマ側に余計なことをして欲しくない人もいるだろうが、運転の煩わしさから解放されるのは確かだ。
今回の3台は想像以上に実力、魅力が拮抗していた。スポーティさを求めるならばIペイス一択、究極の違和感のなさが快適で安心でもあるEQC、アウディらしい洗練度の高さでラグジュアリーの頂点に立つe-tronスポーツバック。優劣はつけがたいが、いまの自分の気分に合っているのはe-tronスポーツバックだと言っておこう。BEVを新しい乗り物だと捉えると、その未来的な乗り味や制御の考え方がしっくりとくるからだ。
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