乗用車として最強のブランド/GLE派・嶋田智之
誰かがいっていた“メルセデスはただメルセデスであるというだけで正義だ”という言葉は、ある意味、とても的を射ていると思う。これほど選ぶ理由をわざわざ説明せずとも誰もが自然と理解してくれるブランドなんて、他にない。しかもそれに違わず、乗って使って不満らしい不満を感じる、ということがまずないのだ。趣味性が強く反映されるカテゴリーのクルマにはまた別の考え方があるものの、暮らしを快適に便利に過ごすためのいわゆる乗用車として、最強のブランドなんじゃないか? と思わされることすらある。
僕にとってSUVは趣味の対象というより、ゆとりとともに日々を謳歌するための相棒であって欲しい存在。だからGLE450は、X5と較べてどうというよりも、ほとんどカテゴリーの最上位あたりに位置するといえるモデルだ。
何がいいかといえば、あらゆる部分から匂い立つような、ジェントルで上質といえるテイスト。エクステリアは個人的にはここまで煌びやかじゃなくてもいいと感じるところもあるけれど、風変わりなところのない穏やかなデザインやウッドとレザーからなる落ち着きのあるインテリアにはすんなり馴染めるし、優しくしっかり身体を支えてくれるシートの座り心地も存分に心地好い。さらにはエアスプリングと電子制御ダンパーの組み合わせからなるサスペンションが滑らかにたっぷりと伸び縮みしてくれるから、しっとりと快適だ。ステアリングを切り込むと、クイックではないけど自然に的確に反応してくれて、2.4トンの車体を“スイッ”と“フワッ”のちょうど中間ぐらいの感じで難なく曲げていく。車体の大きさを意識する必要はあるけど、取りまわしも望外に楽だし視界はいいから、街中でも山越えの国道でも、かったるさなく気持ちよく走れるのだ。
そんなとき、アクセルペダルをガンガン踏んでいきたい気持ちにならないのがちょっと嬉しい。3L直6ターボはたった1600rpmで500Nmのトルクを自然に沸き立たせ、さらに電気モーターの250Nmがアシストを加えるから、街中ではペダルに足を軽く乗せてるだけで充分、峠道でも親指の付け根あたりの力加減ぐらいですんなり走れてしまう。その穏やかなる力強さに身を任せて走ってると、何だかそのペースが気持ちよくなってくる。といって急ぐのが苦手なわけでもない。その気なら直6特有の快いサウンドと伸びを感じながらすっ飛んでいくのだって簡単。結構速いのだ。
X5M50iの530psはさらに速いし飛ばすと気持ちいい。でも、決してスポーツカーじゃない。それにSUVで生き急ぐような走り方を、僕はあまりしたくない。欲しいのはひとつ、ゆとり、なのだ。
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