【比較試乗】「ポルシェ 911カレラ vs 911カレラS」“カレラ”は“ カレラS ”とどう違うのか?

カレラとカレラS、悩ましい選択

続いて、合流したカレラSに乗り換える。まずは確認がてら、ゆっくり流していくと、やはりごく低い回転域ではカレラの方がピックアップに優れるようだ。ただし、2000rpmに達するあたりから早くもひと回り太いトルクが立ち上がるから、もたつくなどと思う間もなく、速度は弾けるような勢いで高まっていく。

カレラとカレラSでは、スペックのほか装備も上記のように若干異なる。カレラSの試乗車には車高が10mm下がるPASM付きスポーツサスペンションが装着。特筆すべきは、カレラSにのみ標準装備のPTV Plus(電子制御LSD)が備わる点。これによりコーナリングにも違いが現れるという。

その先のパワー感、加速の勢いにもやはり明らかな差がある。実際、スポーツクロノパッケージ付きではカレラの0→100km/h加速が4.0秒なのに対して、カレラSは3.5秒と実にコンマ5秒も速いのだ。回すほど勢いが増し、トップエンドまで一気に到達するエンジンフィール含めて、刺激性は一枚上手である。

911カレラ:エンジン/2981cc水平対向6気筒ツインターボエンジンは991のものを踏襲。ターボチャージャーを刷新、タービンを大径化するなどして高効率化を図り、出力はカレラが385ps/450Nm、カレラSが450ps/530Nmを発生。テールパイプの形状も変わるようだが、カレラSにはオプションのスポーツエグゾーストを装着される。

試乗車はオプションのPCCB(ポルシェ・カーボン・セラミック・ブレーキシステム)を装着していたが、確かにこれほどの動力性能なら欲しくなる。ブレーキは標準でもカレラの前後4ピストンキャリパー+330mm径ローターに対して前6ピストンキャリパー+350mm径ローター、後4ピストンキャリパー+360mm径ローターと、ひと回り大きい。

911カレラS:エンジン

想像以上に違っていたのが、カレラ単体で乗った時にはそこまで大きな差は感じなかったハンドリングである。ターンインからしてカレラSは明らかにレスポンスが鋭く、コーナーを抉るかのようにインをついていける。そして、そこからのコーナリング中も自分を中心に向きが変わっていく感覚を一層強く感じるのだ。

911カレラ:テールパイプ

実はカレラSの試乗車には車高が10mm下がるPASM付きスポーツサスペンションが装着されていたから、特に初期応答性にはそれも効いていると思うが、何より大きいのはカレラSにのみ標準装備のPTV Plusだろう。この電子制御LSDがターンインを容易にし、またコーナー立ち上がりでのアクセルで曲げていくような感覚を味わわせてくれるのだ。つまり積極的に踏んでいけるわけで、コーナリングマシンとしての歓びは明らかに増している。

911カレラS:テールパイプ

カレラSで走り終わった後、掌にはカレラではかかなかった汗がじんわり滲んでいた。この2台にの間には、やはり無視できない差があったのである。
ちなみに取材の帰り道にカレラSのステアリングを握ると、乗り心地はカレラの試乗車より明らかにマイルドだった。タイヤ銘柄も違ったが、案外PCCBによるバネ下の軽さも大きいのかもしれない。このように両車オプションを多数装備していたので、カレラとカレラSの純粋な差は測り切れなかったというのが正直なところだ。
結論を下すのは難しい。実際のところ、カレラのステアリングを握っている時には心からの満足感に浸っていた。カレラにはここまで記してきた通り、歴代モデルと同様の身の丈感というか、日本の道路環境においても積極的にアクセルを踏んで楽しめる、ちょうど良さのようなものがある。この感覚、良い意味で変わっていない。

911カレラ:フロントホイール

911カレラ:リアホイール

しかしカレラSに乗ったら、迷いが出てきたのも事実。個人的にはカレラにPTV Plusが付けばそれもアリと思ったが、実はオプションでもその設定はないという。じゃあ、やはりカレラSか。いや、でも価格差は大きいし……。

911カレラS:フロントホイール

911カレラS:リアホイール

実は、最初に乗ったカレラの好感触から、事前にはきっと即決でこちらだろうと思っていたのだが、いざ乗り較べたら予想以上に気持ちが揺れた。正直、今も結論は出せていないが、おそらくは好みはもちろん走る環境、舞台で、選択は左右されることになるだろう。
ひとつハッキリ言えることは、カレラに乗って改めてカレラSの価値、意味を明確に掴むことができたということである。両車は単なるスペック違いではなく、ハードウェアもその狙いも確かに異なる存在なのである。
やはり原点はカレラ。それに乗らずして911は語れないというのは不変と言って良い。では迷ったら? やはりまずはカレラからという選択で、間違いないはずだ。

ベースモデルのカレラが加わり、クーペやカブリオレなどラインナップも豊富に揃ったタイプ992。今後はターボモデルの上陸が待ち遠しい。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2020年6月号より転載

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島下泰久
AUTHOR
2020/06/06 09:00

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