同セグメント、同カテゴリーのヨコ比較ではなく、ボディサイズやプライスといったヒエラルキーを超えて、キャラクターのベクトルが同一線上にあるSUVたちを、いわば無差別級のタテ比較で論じてみるこの企画。今回のテーマは「デザイン」。“スポーティ”や“スパルタン”がキーワードになりがちなSUVにあって、これら英仏独の3台はどうだ。徹底的にデザインコンシャスを究めている。
キャラクターとはそもそもクラスレス
自動車史では数年に一度、忘れた頃に「小さな高級車」というカテゴリーが登場する。これはヒエラルキーにとらわれないクルマ選びの代表で、そこには「別にオレは大きなクルマでえばりたいわけじゃないんだぜ」という上品なメッセージが隠されている。古くはバンデンプラス・プリンセスから始まりランチア・イプシロンが表現した小型車の粋。セダンではメルセデス190がその扉をこじ開けた。現代でいうとミニなどは、ハイト系ハッチを横目に自由を謳歌するお洒落な反逆のアイコンだ。
そして現代の潮流となるSUVにおいても、こうした考え方が表面化してきた。その指針となるのはずばり“個性の強さ“だ。「もはや性能の悪いクルマなんてなくなった」と言われるいま、デザインはもちろん走りにおいても個性を主張するSUVを、クラスレスに選ぶ時代が来たのだ。「別にオレは大きなSUVでエバりたいんじゃない」。そういうオーナーが選ぶ、キャラの立ったSUVたちをここでは比べてみよう。
初代で鮮烈なデビューを飾ったイヴォークは、2代目となってエッジの効いたアウタースキンをスムージングし、洗練されたデザインとなった。それでもグルリと見渡せば塊感のあるワイドボディと、ショートオーバーハングテールが強烈な個性を放ち、とてもこれが全長4380mmしかない、今回で一番小さなコンパクトSUVであることを意識させない。つまりそれだけイヴォークは、上品に態度がでかい。ヤンチャだが育ちの良さが滲み出る、二枚目王子である。
試乗グレードであった「P300」のパワーユニットも、その王子っぷりに拍車を掛ける。48Vのバッテリーとスタータージェネレーターを内蔵したこのマイルドハイブリッドは出足が滑らかで、英国流のしなやかな足回りが、そのクリーミーさにまず花を添える。
しかしダイナミックモードに転じると、P300イヴォークは、ネクタイを外した若者のようにはしゃぎ出す。その最大トルクは400Nmと飛び抜けた数値ではないのだが、モータートルクの立ち上がり方が強烈なのか、なかなかに加速は強烈だ。
アクセル開度以上に速度を上げるフィーリングは賛否の分かれ目で、それを嫌うならガソリンターボのP200(294ps/365Nm)がお勧め。しかしここに新鮮味を見い出すことができれば、P300はまさにクラスを超えた一台となるだろう。そのプライスを考えてもこれは若者のクルマじゃない。若さを欲する大人のコンパクトSUVである。
「DSは、大人の女の感じなのよ」
ボクはかつてどうしてもその魅力がわからずに、気の置けない女友達に聞いてみたことがある。
彼女いわくDS7クロスバックのLEDヘッドライトは小さな宝石を散りばめたかのようで、そのエンブレムと共に顔全体がキラキラ輝いているという。「そう言われるとこのフチドリ(DSウイングのことだ)も、指輪のツメみたいだね」と話に乗ってやると、「ほんとだ!」と目を輝かせて喜んだ。女ってのはまったく……。
そんな予備知識があっただけに、今回のホワイトもとい、ブランバンキーズのボディにシルバートリムの組み合わせは、車名の通りシックだと思えた。そして乗り込めばDS3クロスバックよりも落ち着きのある、しかしモダンなキルティング風パッドのインテリアがボクを迎え入れてくれた。
肉厚なシートに座って走らせるDS7の乗り心地は、今回の中でも一番良い。ソフト過ぎずまったりと路面を捕らえる足回りは、どうやら路面をモニタリングして、勝手に減衰力を可変するらしい。
2L直噴ディーゼルターボはアイドリング時こそカタカタと賑やかなものの、走らせてしまえばそのトルクは400Nmと豊潤で、回してもガソリンエンジン並みにパンチがある。本当にこのPSAユニットは素晴らしい。
見た目以上にまじめな乗り味と実用性を有するDS7クロスバック。600万円を切る設定でこれだけの個性はなかなか得られない。
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