Sクラスの圧勝を阻止する新型7シリーズとA8
ところが、である。A8に乗って「ん?」と思った。乗り心地が悪いからではない。むしろ想像以上によかったからである。A8は日本上陸前の国際試乗会で1度試しているものの、その時の印象よりも格段にいい。これは“プレディクティブ・アクティブサスペンション”(オプションで84万円)のおかげだとはわかっていても、ばね上をフラットに保とうとする細かい制御が素晴らしい。静粛性ではSクラスに一歩譲るものの、乗り心地は状況によってSクラスを凌ぐかもしれない。これは決して欠点ではないのだけれど、A8の乗り味はどこか無機質でドライである。Sクラスのほうが少しウェットな感じがする。
またしてもSクラスの圧勝かと、やる前から勝手に勝敗を予想していたのだけれど、A8によって見事にそれを覆されたのに続き、マイナーチェンジを受けたばかりの7シリーズに乗って「ん?ん?ん?」となった。従来型よりも明らかに静粛性と乗り心地が向上していたからだ。もう少し正確に言うと、“静粛感”や乗り心地を含む快適性がSクラスに限りなく近くなっていたのである。これにはかなり驚いた。ここまであからさまにSクラスに擦り寄ってくるとは思ってもみなかった。“Luxury”という仕様だったからかもしれないが、普通に走っている限りでは、BMWお得意のスポーティはすっかり影を潜め、極上の快適空間が浮かび上がる。
そもそも745eのドライブモードに“SPORT”はなく、いわゆる“おまかせ”の“ADAPTIVE”を選んでおけば、エアサスのセッティングはもちろん、モーターとエンジンの併用や個別使用などをよしなにやってくれる。その制御は基本的に快適性を重視したもので、スポーティは決して出しゃばらない。ただし、ドライバーが意図的にスロットルを深く踏み込んだり、コーナーへの進入速度を少し上げてみると、途端にいつものBMWが顔を出し、ドライバーの入力に対して期待以上の走りをこなしてくれる。A8やSクラスはラグジャリーな方向へ完全に舵を切ったが、7シリーズは駆けぬける歓びを失ってはいなかった。
ちなみに、745eの“チョクロク”は“シルキーシックス”の異名を取るBMWの十八番だが、ディーゼルであることをまったく意識させなかったS400dの“チョクロク”もまた珠玉のユニットだと思う。
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