新型7シリーズに乗った誰もが、その高い静粛性と快適性を賞賛している。それはどのようにして仕立て上げられたものなのか? 果たしてICEモデルとBEVモデルで違いはあるのか? ここでは新型7シリーズに採用されたテクニカルハイライトを通じて、あらためてその実力を徹底研究してみる。
どのパワートレインでも完成度の高い7シリーズ
BMWの新型7シリーズから感じるのは、しがらみやら慣例やら事情や都合といったBMW社内でのあれこれをいったんすべて白紙にして、フラッグシップの高級セダンとして一切の妥協なく設計・開発したクルマなんだろうなということである。
例えば、新型7シリーズはロードノイズ2遮断が圧倒的だ。ホイールハウス周りの遮音を徹底的にやった成果だろう。ここまでロードノイズの遮断にこだわったのは、ボディの空力的要件に限界があるからだ。メルセデスEQのようにBEV専用のプラットフォームとボディがあれば、ボンネットを小さく低くして全高も抑えて世界最高のCd値0.20を達成し、風切り音を大幅に軽減できる。しかし、内燃機とBEVでプラットフォームを共有することになった7シリーズはそれができない。そこで静粛性向上の手段として目を付けたのがおそらくロードノイズの排除だ。ずいぶん前に、BMWのエンジニアにロードノイズに関して質問したことがある。その当時、BMWは全般的にロードノイズが大きかったからだ。彼は「ロードノイズは路面状況を知る上で大切なインフォメーションなのです」と胸を張り、自分はなるほどと納得した。この慣例を、新型7シリーズはぶっ壊したことになる。
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装備の充実度にも目を見張るものがある。後席用大型モニターをはじめ、自動ドアやスワロフスキー製ライトや数々の先進安全デバイスや2トーンのエクステリアカラーや光るキドニーグリルなど、数多の装備に溢れている。これまではどちらかと言えば、装備の充実よりも操縦性の向上や軽量化に重きを置いてきたBMWだったから、この方向転換にはたいそう驚いた。「高級セダンを作る上で、考え得るすべてのことはやり尽くした」。そんな印象さえする。
しかし本当にたいそう驚いたのは、ここまでやっておきながら、BMWの最大の魅力である操縦性がまったく犠牲になっていない点である。加えて、重量も重量バランスもパワーデリバリーも異なる内燃機とBEVで、ほぼ同じ味付けになっている。「7シリーズはパワートレインの種類を問わず、どれに乗っても7シリーズ」と言わんばかりの完成度である。
こういう言い方は上から目線的でもあって大変僭越なのだけれど、「やればできるんじゃん」と思ってしまった。過去を振り返ってみると7シリーズはいままで、総合的な評価としてメルセデスSクラスに後塵を拝したことが少なくなかったし、あえて真っ向勝負を避けているような局面もあったように記憶している。しかし今回はSクラスとがっぷり四つに組んで、あっという間に土俵際まで持ち込んでしまったのである。
【Specification】BMW i7 xDrive60エクセレンス
■全長/全幅/全高=5390/1950/1545mm
■ホイールベース=3215mm
■トレッド(F:R)=1665:1650mm
■車両重量=2690kg
■バッテリー容量=105.7kWh
■モーター最高出力=544ps(400kW)
■モーター最大トルク=754Nm(76.0kg-m)
■最大航続距離(WLTC)=609km
■サスペンション型式(F:R)=Wウィッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F&R)=Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/45R20: 285/40R20
■車両本体価格(税込)=¥16,700,000
【Specification】BMW 740i Mスポーツ
■全長/全幅/全高=5390/1950/1545mm
■ホイールベース=3215mm
■トレッド(F:R)=1665:1650mm
■車両重量=2120kg
■エンジン型式/種類=B58B30P/直6DOHC24V+ターボ
■総排気量=2997cc
■モーター最高出力=381ps(280kW)/5500rpm
■モーター最大トルク=520Nm(53.0kg-m)/1850-5000rom
■トランスミッション型式=8速AT
■サスペンション型式(F:R)=Wウィッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F&R)=Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/45R20: 285/40R20
■車両本体価格(税込)=¥14,900,000