【国内試乗】「ビー・エム・ダブリューX1」魅力の根源は「デザイン」にアリ!

BMW流の特徴がFFのX1でも再現

コーナリング中は少なからずロールをともなうが、その進み具合はステアリング操作と一致しているのでむしろ走りの臨場感が高まる。前後のロールバランスが最適化されイン側が浮き足立つような危なっかしさもなく、4輪は高い接地感を維持する。あえてアクセルをスッと戻しつつステアリングを切り足しても、急激な挙動変化が起きそうな予感がない。リアの踏ん張りを効かせることで、その余裕でフロントの旋回性を稼ぎ出すBMW流の特徴がFFのX1でも再現されている。

場面を変えて高速道路では、直進時にステアリングの節度感が確かめられ落ち着いた印象と結びつく。だが、評価の基準を変えればセンター付近のフリクションとなりかねない。実際に、レーンチェンジの際に必要な指1本分ほどの舵角よりも少ない車線内で自車位置を修正するような操作に対しては、切り始めがスムーズとはいえない。とはいうものの、あいまいな応答性を示すわけではないので不安感は覚えずに済む。

試乗車はオプションのコンフォート・パッケージを装備しテールゲートは自動で開閉可能。後席の背もたれにはリクライニング機能がつき、さらに40:20:40の分割可倒式だから利便性は高い。

乗り心地は、そもそも走りの機能に進化がないのでコンパクトSUVの平均レベルにとどまる。サスペンションの設定は少しばかり硬めに感じ、車格感に対して追いついていないような印象がある。もちろん、快適さに不満が生じることはない。硬めでもストロークがスムーズなので、荒れた路面でも不快な突き上げに結びつかないこともBMW流の特徴だ。

舗装の骨材が見えるほどザラついた路面の通過時にタイヤが発するゴーッというロードノイズは、ボリュームが大きめに感じることもある。ただ、残響感がなく音源が分散しているようにも感じないだけにノイズを全身で浴びているといった騒がしさとは異なる。ウインドノイズも抑制されているため、乗り心地は平均レベルながらも高速道路での長距離走行も苦にならないはずだ。

1.5Lの直列3気筒ターボエンジンはパワフルとないえないが吹け上がりが軽快で必要充分なトルクも確保。2017年からトランスミッションは6速ATに代えて7速DCTを採用。

しかも、優れた燃費が期待できる。今回の試乗では、高速道路が走行距離の半分以上となるが市街地では渋滞に巻き込まれ山岳路を気持ちよく駆けぬけた場面を含め13km/L台を記録している。休日を過ごすための遊び道具を積み込んで、自然と親しむために足を伸ばしたくなるというもの。

テールライトのデザインも変更され、よりL字のLEDエレメントが強調された。

コンパクトSUVでも、荷物スペースは十分な余裕を確保している。505Lという容量は、3シリーズのツーリングよりも広い。余分な張り出しがなく手前側の両端には窪みもあるため長めの荷物が積みやすく、後席の背もたれを前倒しすれば容量は最大で1550Lまで拡大。床下にも、かなり広い収納スペースがある。
室内スペースの広さも、X1の魅力だ。大柄な筆者が前席で最適な運転姿勢を選び直後の席に移っても、背もたれと膝の間には握りこぶしが縦に1つ入っても余るだけのスペースがある。頭上スペースについても、天井との間に握りこぶしが横に入る。座面の奥行きも深く、リクライニングを倒しぎみにすればくつろぎ感ある姿勢となる。唯一気になるのは、背もたれの形状が平面的で横方向のホールドが得にくいことだ。それも、場面が市街地なら問題にならない。それどころか、X1はSUVとしては車高が低めなのでシートの座面と地上の段差が多くの人にとって最適だ。外から乗り込む際に腰の上下移動が少ないため、乗降がスムーズで繰り返しが負担にならない。X1は、その意味では日常の足としても使い勝手がいいということだ。

タイヤは225/50R18サイズのランフラットを履くが接地感はしなやかだ。

安全装備も整い、車線逸脱警告や前車接近警告に加え衝突回避・被害軽減ブレーキも標準化されている。運転支援装置としてのアクティブ・クルーズ・コントロール(ゴー・ストップ機能付き)はオプション扱いとなるが、単眼カメラ式でも確実な制御が実行されるので必要不可欠といえる。
上級グレードのxLineを選ぶことに加えオプション装備を充実させるために、あえてエンジンと駆動方式をsDriveとする判断はアリだと思う。特に、インテリアについては乗車中は視覚的にも触覚的にも体感し続けるだけに、購入後の満足感を維持することに重要な役割を果たす。

フォト=柳田由人/Y.Yanagida ル・ボラン2020年1月号より転載

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