【国内試乗】「シトロエン C3 エアクロス SUV」個性だけじゃない、実力派コンパクトSUV

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好感度の高いフレンチコンパクトのキャラを受け継ぐキュートでファニーなSUVがいよいよ日本に上陸。先行デビューした兄弟と従兄弟の評価が高いだけに、輸入車マーケットとユーザーの期待値も高いとか。そんな創業100年の歴史を凝縮した本命SUVの実力は?

ゆるキャラなフォルムで走りも快適さも十二分

21世紀初頭からクルマの勢力分布を変えたSUV人気はいまだ衰えを知らず、乗用車派生クロスオーバーからフルサイズ超高性能モデルまで百花繚乱のラインアップ。中でもグローバルB、Cセグメントに該当するコンパクトSUVは活況を呈している。

新世代モジュラープラットフォームを採用したボディは、全長4160×全幅1765×全高1630㎜で、ホイールベースは2605㎜となる。

そんな追い風に乗って日本上陸を果たしたのが、創業100年の老舗シトロエンのSUV第二弾となる、このC3エアクロスSUVだ。先行デビューした従兄弟のDS3クロスバックがプレミアム路線を狙う一方で、人気コンパクトのC3と同じキュートでファニーなイメージを踏襲しつつ、ルーフレールやアンダーガード風ロアバンパーといったSUVテイストを加えたエクステリアからは、ミレニアル世代からダウンサイジング熟年層までターゲットを広げたマルチタレントぶりがうかがえる。

ファブリックと赤いアクセントが特徴的なインパネまわり。

一方のインテリアでは、効果的にファブリックを使った上下2段のダッシュボードがスタイリッシュといえるが、エアコン吹き出し口などの随所にあしらわれた、エアバンプを模した赤いアクセントがちょっとカワイイ感じで、昭和オヤジなリポーターは正直なところ気恥ずかしくもあった。

同グループの新世代モジュラープラットフォーム「CMP」に載せた、1.2Lピュアテック直3ガソリンターボと6速ATのFFパワートレインは、1.3トン弱のボディを軽快に走らせる。小気味よい加速からのクルージングでは、アクセルオフで小さな息つきを発するものの、非力さを感じさせるシーンはほとんどなかった。

6:4分割可倒式の後席はスライド機構により荷室容量が410~520Lに可変、最大1280Lまで拡大できる。

最上級グレードが履くハンコック製17インチサイズの最新オールシーズンタイヤも奏功してか、電制ステアリングの手応えはしっかりとした感覚で、ドライバーの期待を裏切らないライントレース性能も好感度が高い。特殊な機構を持たないダンパーとのことだが、快適な乗り心地を実現しつつ高速旋回でも破綻しないシャシー調律の手腕はお見事!

「スノー」「マッド」「サンド」のほかヒルディセントコントロールを備えた「グリップコントロール」のダイヤルをセンタークラスターに配置。

C3ハッチバックよりもひとまわり大きなボディは、広くて快適なキャビンを実現していて、クラスを超えた静粛さもトピック。たとえ成人男性フル乗車でも、躊躇なくロングツーリングに行けるだろう。もちろん被害軽減ブレーキやブラインドスポットモニター、駐車アシストといった運転支援機構も標準装備し、助手席まで前に倒せる多彩なシート&荷室のアレンジと必要十分なスペースに加え、開放感溢れるパノラミックサンルーフ(オプション)も用意。かつてイタフラ系のウィークポイントだったインターフェイスも、スマホ連携7インチタッチスクリーンの採用であっさり解決している。

1.2L直列3気筒直噴ターボは、最高出力110psと最大トルク205Nmを発揮。アイシンAW製6速ATを組み合わせて16.4㎞/L(JC08)の省燃費性能を誇る。

今回は4WDに代わるFF用トラクション制御機能の「グリップコントロール」を試す環境はなかったが、その実力は兄弟ブランドのプジョーで確認しているから、キャンプサイトへのアプローチやウインタースポーツ、マリンスポーツのアシとしても十二分に活躍できることは想像に難くない。

タイヤはエントリーの「FEEL」が16インチを、上位の「SHINE」が17インチサイズを履く。

パワーと高級感を追い求めたSUVが多い中で、いわば「ゆるキャラ」的実力派のC3エアクロスSUVは、老子の「足るを知る者は富む」のごとくスマートなライフスタイルにマッチするだろう。

フォト=山本佳吾/K.Yamamoto ル・ボラン2019年11月号より転載

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