見なければ信じられない !「メルセデス・ベンツ・ウニモグ」の「どこにでも行ける」走破性【世界の傑作車スケルトン図解】#14-2

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巨大な減速比が生む究極のトラクション

最初のウニモグは1948年に誕生した。ダイムラー・ベンツ出身のエンジニアが設計し、小さな町工場で試作品を作り、小規模な自動車生産会社で数百台が製造されたのだが、1950年にメルセデスが買収し翌年から大量生産を開始。これは戦後の統制によりメルセデスは一時4輪駆動車の製造を禁じられていたゆえのストーリーだと想像される。当初ウニモグのペットマークであった牛の角マークは、ここで晴れてスリーポインテッドスターに変わったわけだ。

作業アタッチメントを装着する前提のラダーフレームはこの通りに直線的な構造。

1948年生まれで農業用途を意識した4WDというと、実はあのランドローバーも同じ。面白いことに前後横3方向への動力取り出しや、ラダーフレームに頑丈なアタッチメント装着のための構造を持つ点もウニモグと同様。戦後復興期の欧州で求められていたクルマは、まさにそういうものだったのだろう。

最低地上高を稼ぎだすハブリダクション機構。

大きな違いは、ウニモグは徹底して機能的な作業車として進化したこと。その一例が非常に大きな減速比を持つパワートレイン。4駆の常識である副変速機はローレンジだけにとどまらず、クローラーギアと呼ばれるもう1段の減速装置まで設定して極低速走行を可能にした。ウニモグの総減速比は一般的SUVの10〜20倍にも達する。

多くのスイッチ類が目を引くウニモグの仕事場。さらにこのU3桁系ウニモグはハンドルとペダル位置を左右に移動変更することもできる。

さらにアクスル端にはハブリダクション機構を備え、ここでさらなる減速も行ないつつ、アクスルをハブ中心より上に配置できるメリットで最低地上高も大幅に大きくなっている。

1.2mもの桁外れな渡渉深度を誇るウニモグ。さらにラジエターやインタークーラーは高位置マウントで、泥沼でも目詰りしない。

非常に大径なタイヤを履き、前後アクスルにはデフロックを備え、その大減速比のもたらす巨大な駆動力と極低速走行可能な能力によって、ウニモグは究極の走破性を実現した。岩山や泥沼のような路面の抵抗にも負けず、ホイールスピンも起こさず、たとえ一瞬グリップを失っても容易にグリップ回復できるほど超低速走行が可能なため、ウニモグは事実上アンストッパブルとさえ評される。

走破性重視のU4桁系は路面追従性の高いトルクチューブ式パワートレインを採用。走行中に運転席からタイヤ空気圧を変更できるCTISも装備している。

現在のウニモグシリーズはアルファベットのUに続き数字3桁のモデル名をもつやや小さいモデルが各種の作業アタッチメントを装着して働く作業向けで、数字4桁系モデルはやや大柄で走破性と積載性を重視した仕様となっている。

オリジナルの初代ウニモグは小さかったが、大径タイヤ、大総減速比、ハブリダクションギア、トルクチューブ式パワートレインという基本メカはすでに備えていた。

4桁系ウニモグの前後アクスルの駆動軸はトルクチューブ内を通っており、泥や障害物から守られている。これは初代から受け継がれた構造で、トルクチューブはサスアームの役割も果たし大牽引力に対応している。この構造は摺動ロスが少なく、非常にスムーズなホイールストロークと良好なトラクションを実現するユニークな仕組みだ。

 

解説:竹平誠

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