70年の歴史と実績に裏打ちされたメルセデスの安全技術
ESF2019では、自動運転モードを選ぶとペダルはフロア内に収納され、ステアリングはダッシュボード方向へ引き込まれる。自動運転はペダルとステアリングを使わないから、ではなく、衝突時にペダルやステアリングがドライバーへ与える二次被害を抑えることが主たる目的だ。シートポジションや乗員の体勢にかかわらず、シートとシートベルトの位置関係が変わらないよう、シートベルトはシート内蔵式として、いかなる着座姿勢にも対応できるようになっている。ドライバー用エアバッグはステアリング内ではなくダッシュボード内に配置され、その形状やサイズはより立体的で大きくなっている。さらに、前席のシート両脇にもサイドエアバッグを装備。乗員の上半身を包み込むように膨らんで、衝突の衝撃に耐えるだけでなく、他の乗員との接触も避けられるという。
車外とのコミュニケーションは、フロントグリルに埋め込まれたパネル、ルーフに取り付けられたLED、リアウインドーに照射するプロジェクター画像などによって行う。例えば自動運転中に横断歩道の前で停車したとする。フロントグリル内のパネルには歩行者に向けて矢印が表示されるとともに、「このまま停車します」「お先にどうぞ」などのメッセージを音声で伝える。同時に、横断歩道を歩行者が渡っている状況をリアルタイムの画像でリアウインドーに映し出し、後続車に注意喚起する。
メルセデスは三角表示板の有効活用について以前から真剣に取り組んできた。1980 年代の量産車には、トランクを開けるだけで裏側に固定された三角表示板がそのまま使えるという画期的なアイディアが採用されていた。ESF2019ではその三角表示板がついにロボット化され、お掃除ロボットのごとく、自走するまでに至っている。
中には非現実的と思うような技術もあるけれど、過去にもそう思われていた装備がいまでは当たり前になっているものもある。メルセデスが安全専門の部署を立ち上げたのは1949年。70年の歴史と実績に裏打ちされていると考えれば、ESF2019も途端に現実味を帯びてくるのである。
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