XC40から乗り換えると、XC60は高級感が漂う
XC40から乗り換えると、当たり前だがXC60 T6 R-デザインは高級な感じがする。スターターひとつとってもXC90譲りの美しいダイヤル式へと改められており、ゆったりした着座姿勢や広く落ち着いた室内の雰囲気、ピッタリと体をサポートするレザーとヌバックを使い分けたスポーツシートの座り心地に、ひとつ上の質感が味わえる。
ただ、そのインテリアを見回しても、すべてにおいて高級級素材をふんだんに盛り込んでいるわけではない。インパネにはソフトパッド×ステッチ模様を奢りながらもドアパネルには堅めのパッドを使い分け、ホーン部分のプラスチックや手動式チルトなどを見ると意外にもコストがかけられてないことがわかる。しかしながらインパネ全体の造形が立体的かつシンプルで美しいデザインとなっているから、見た目が貧相に感じない。
そんなXC60はふたつの過給機を搭載するT6エンジンがなんとも贅沢で心地良い。XC40にも通ずる乾いた吹け上がりには“キーン!”と唸るスーパーチャージャーの駆動音が添えられ、アーバンユースで最高のダッシュを見せる。高速域ではステアリング左側のパドルをワンクリックし、一気に加速。8速ATのレスポンスはXC40同様にいまひとつだが、スーパーチャージャーからターボに切り替わるポイントは意識できないほど自然で、その豊かなトルクと伸びやかなパワー感には胸が躍る。
4気筒を搭載する鼻先の軽さとR-デザインとして仕立てられた足回りのマッチングは良好だが、ステア特性が過敏に過ぎないのもボルボを感じさせる。ノーマルモデルで感じたリアのリーフスプリングの渋さも、R-デザインではこなれていると感じた。ボルボはいち早くエンジンを4気筒のみに絞った。そして多気筒エンジンにも負けないバリューと出力を得るために、この高価なツインチャージャーを選択したわけだが、それはパワーユニットとしての結果以上に、ボルボのチャレンジ精神を表現したと私は思う。
この思い切りの良さも、デザインと並ぶスカンジナビアンの気質である。それは最初みんなにバカにされたという、2020年までに自社車輌での事故をゼロにする大胆な目標「ビジョン2020」をいち早く掲げた気質にも通ずる。小さな会社でも果敢にチャレンジすることで、世界はきちんと認めてくれる。いまやボルボは60万台規模のメーカーへと成長し、決して安くはないけれど、頑張れば手が届くプレミアムブランドとして、ジャーマンスリーにも負けないステイタスを得たと私は思う。
だからボルボがヒットした理由を言うなら「スカンジナビアンだから」となる。彼らが自分たちの個性を信じ、これを形にできたからこそ、ボルボは躍進したのだ。
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