スポーツカーへ向けて20インチで提案
母体が世界有数のタイヤメーカーながら、ホイールは常に“スポーツ”を意識する。そんなヨコハマホイールの精神を象徴するようなフラッグシップが登場した。金型鍛造製法を採用し、性能と造形を突き詰めたアドバン・レーシングR6である。国産スポーツカーを含む日本のチューニング文化が親しまれるアメリカで、しかも彼の地のアフターパーツ業界を象徴する’18年SEMAショーでの鮮烈なデビューだった。
その際はR35GT−Rへのマッチングを強く訴えた20インチサイズが公開された。そのほかのターゲットは同じく20インチで走行性能が詰められたBMWやアウディなどのスポーツモデルだ。R6はその名が示す通り6本のスポークを持ち、そのルーツはRG−D2にある。RG−D2は18インチまでの鋳造ホイールだが、金型鍛造製法を用いてブランドのフラッグシップに昇華させた。同じ立ち位置にあるのはアドバン・レーシングGTである。5スポークで形成されるGTもまた、TCⅢの発展解釈系として生まれた経緯を持つ。つまりは5本のGTに対して6本のR6という両横綱体制が整った格好となる。
ステップリム設計がもたらす迫力のディープリムと、そしてリムの内側から滑らかに立ち上がってセンターへと収束していくコンケイブ形状は、確かにGTとの共通項があり、いかにもアドバン・レーシングのスポーツホイールにかけるこだわりを感じさせる。その上で、GTよりもスポーク本数が増えたぶんより細身となり、結果として足が長くすっきりとしたロングスポークを感じさせる。これらスポークの側面には、股部分も含めたアドバンスドサイドカット(肉抜き)が施される。軽量化に貢献するのはもちろん、視覚的効果も抜群だ。スポーティな造形ながら、光の加減によってエレガントにも感じさせる。
R6自身の造形美と、優れたマッチングを証明する具体例が、目の前にたたずむBMW M4だった。今や日本を代表するBMWカスタマイザーであるスタディが構築したACシュニッツァーコンプリートの中で、唯一、その足もとだけをR6でコーディネイトした。ACシュニッツァー自身も複数のオリジナルホイールを展開するが、あえてホイールだけをR6に置き換えたセンスには脱帽だ。純白のボディカラーに備わるカーボンパーツと、マシニング&レーシングハイパーブラックのR6とが調和する。フロント9・5J、リア10・5Jの20インチサイズに、それぞれ255/30、285/30サイズのアドバン・スポーツV105を組み合わせたサイズ感もいい。車高調で20mmほどローダウンされたフォルムに似合う。アドバン・レーシングにしてもACシュニッツァーにしても、モータースポーツ譲りの技術の上に成り立つがゆえ、走行性能に妥協はない。M4のスポーツカーとしての資質をより高めている。
’18年のSEMAの時点ではプロトタイプだったが、今年の東京オートサロンでの日本公開を経て、今年5月に正式発売されるとアナウンスされた。アドバン・レーシングの提案する新たな理想像が、世界のハイパワーマシンの魅力をさらに底上げする。と、このM4が無言で主張するようだった。
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