商用バンにはない洗練された走りを披露
スペインで設定された試乗ルートはバルセロナの街を海岸線に沿って山に駆け上がる強烈なワインディング・ロードだったのだが、トルキーなエンジンのおかげでストレスはゼロどころか、もうどこまでも走りたくなっちゃうくらいのワクワク感を与えてくれる。しかも二駆モデルを選べばFRとなるんだから、旋回性能もミニバンと思えないほどの俊敏さであることは疑いようもない。四輪駆動の4MATICも試したが、これはまたビタ〜っとコーナーを舐めていくような絶妙な接地感で、巨体の不安をまるで感じさせない。
今回のこのハンドリングの軽妙さに関しては、アルミ製シリンダーの採用などにより、エンジンユニットが実に25kgもの減量の成功していることの貢献が大きい。それにより、ディーゼルエンジンにありがちな鼻先の重ったるさがなく、前後の重量配分が整ったことで路面の大きな荒れや欠けに対してもフロントがドスドス・バタバタしないため、結果的にドライバーへのストレスが軽減される結果となっているのだ。
むろん、メルセデス・ベンツならではの剛性の高さもその上質な走りを後押しする。ホテルや駐車場から一般道に出るときのギャップを越えたときなどの、リアのあっけないほどの収束は拍手モノ。これだけ開口部の大きいミニバンというパッケージにおいて、ボディー中間〜リアの捻じれやヨレのなさはさすがとしか言いようがない。本国では同じエンジンで出力違いが3種ラインアップするが、日本導入が濃厚なV220dは163hp。これだけ見ると驚くようなパワーではないが、380Nmを1,200〜2,400rpmと、かなり低いところから最大トルクを発揮するため不足感は微塵もない。そして9速ATがまた良い仕事なのだが、このトルクを繊細にギアでコントロールし、高速域までなめらかにパワーに繋げていくのだ。減速時は言うまでもない。その質感、まさにEクラス超え。もうVクラスはバンじゃない。「実にメルセデス・ベンツ」な走りを実現していた。
今後、特にアジア・パシフィックのマーケットにおいて、Vクラスの拡大は至上命題だ。というわけで、本国はメーカーを名指しにはしなかったもののおそらく、日本のアルファード・ヴェルファイアを徹底的にベンチマークしたと予想される。先述の最上級内装「ラグジュアリーシート」も本国よりまず先にアジアに導入するという。
メルセデス・ベンツはこれまでこのVクラスを商用車ラインで製造してきた。しかし、新型からは乗用車ラインに製造を移し、質感の向上でシェア拡大を狙う。販売価格はそれなりだろうけれど、アルファード・ヴェルファイアでさえも1000万を超える時代。となれば、世界の上級顧客を虜にしてきた同社がハイエンド層を喰う予想は存分に考えられるのだ。否、正直もっと設定価格を上げても、コレは売れるんじゃないか。そう思うほどの完成度だから、是非導入を期待していて欲しい。
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 https://www.mercedes-benz.co.jp/
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