【国内試乗】「BMW ALPINA XD3」アルピナ流レシピがさらに洗練

データとして得られる部分は近いが独自のキャラクターは健在

インパネ中央にはシリアルプレートを装着。

だが、実際に走らせてXD3とM40dを比較するとまったく同じ排気量のディーゼルターボは思えないほど体感上のフィールは違う。6気筒エンジンらしくディーゼル特有の音や振動をまったく意識させないこと、そして本来ディーゼルが苦手とする高回転まで力強さが衰えないことは共通しているが、その過程が別モノなのだ。M40dの吹け上がりはスムーズな中にも排気量相応の質量感、頼もしさにも通じる良い意味での重さを感じさせる味付け。一方、XD3のそれはいかにもフリクションが少なさそうな繊細な味わいで、同じように走らせても常にM40dより上品な風情が漂う。

シート表皮はヴァーネスカ・レザーが標準だが、オプションでメリノ・レザーも用意。

2台をまったく同じ条件下でテストしたわけではないが、おそらくデータとして得られる発進加速に大きな違いはないはず。しかし、Mパフォーマンス仕立てらしくMモデルに通じる骨太さが持ち味となるM40dに対し、XD3は長年培われてきたアルピナ流のエレガンスで独自性をアピールしてくる。いまさらな話だが、Mパフォーマンスにせよアルピナにせよ同じ素材でしっかり独自のキャラクターを作り上げてくる手腕には素直に脱帽するしかない。

ラゲッジスペースをはじめとするユーティリティはベースとなるX3とまったく同じ。容量は通常時で550L。後席を完全に畳めば1600Lにまで拡大する。

そんな違いは、シャシーの仕立てにもしっかり当てはまる。どちらもエンジンの高性能化に合わせてサスペンションを強化。リアにはLSDを組み合わせているが、M40dと比較するとXD3の身のこなしはスッキリと軽めに仕上げられている。今回の試乗車はオプションの22インチタイヤを装着していたこともあってか、日常域では多少タイヤの踏面の硬さを感じる場面もあったが、積極的に走らせると自重が2トンを超える巨体をまるで意識させない繊細さが味わえる。速度が上がればしなやかに動いていることが実感できる足回りは、入力をキレイに受け流す風情。それを“豪腕”で受け止めねじ伏せるM40dとは対照的だ。

エンジンは若干ながらアウトプットでM40dを上回る3Lディーゼル。

となれば、結論は明らか。長年Mモデルとアルピナの比較で語られてきた違いはこのXD3でも変わらない。似通った素材、構成でもアルピナはアルピナ。やはりベースとなるBMWとは別のクルマなのだ。

試乗車のホイールはオプションの22インチ。

リポート|小野泰治|T.Ono フォト|小林俊樹|T.Kobayashi BMW COMPLETE 2019 VOL.71 より

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