【海外試乗】「シトロエン・C5 エアクロス」ダブルシェブロン仕立てのクロスオーバー

久々のビッグシトロエンは快適性スペシャリスト

写真で見る限りボリューム感が掴みづらいが、ディメンションでも縦横比はかなり独創的。唯我独尊は確かにシトロエンの十八番だが。

この独自のポジションを正当化するのは、やはり乗り心地だ。ディーゼルのBlueHDi180、ガソリンのピュアテック180とも最大出力は横並びながら、最大トルクは400Nm/2000rpmと250Nm/1600rpmと、かなり特性が異なっていた。街中での乗り心地の鷹揚さ、段差を優しく吸い込む動きの上質さでは、車重の軽いピュアテック仕様の方がやや上回る。対して高速での長距離巡航については、ステアリングから伝わるフロントのどっしり感がより落ち着いたディーゼルに分がある。燃費についても2割ほどディーゼルが優っている。当たり前ながら、それぞれの得意分野が異なっており、今年後半に日本に導入されるのは、ひとまず長距離派に向くディーゼル仕様だ。

タイヤサイズは235/55R18で、試乗車の銘柄はミシュラン・プライマシー3ST。静粛性そしてオンロード重視であることが窺える。

肝心の足回りだが、ラリーレイド起源のHCC(ハイドローリク・コンプレッション・コントロール)ダンパーを採用した点はディーゼル、ガソリンに共通。ダンパーは欧州カヤバ製でルノー・スポールも用いているテクノロジーだが、C5エアクロスのフロントダンパーは縮み側プラス、伸び側でも筒内のオイル流入量を制御する。結果、自由に動くストローク長は大きく確保し、伸び/縮みの双方で自然なプログレッシブ特性が得られ、4輪のロードホールディングがシームレスに安定している。

ラゲッジルームはワゴンや7シーターの5名乗車に容量では譲るが、モジュラー性に富み、ミニバン卒業ファミリーにも不足はないはず。

実際にワインディングでは足がよく動くし、多めのロール量の先で粘って曲がるのだが、危なげに踏ん張っているような感触がない。以前、C5エアクロスの足回り担当エンジニア氏と話した時、HCCでハイドロに近い乗り心地も必要なヴィークルコントロールもすべてカバーできたので、流行りのダイナミック・シャシーコントロールで足の硬さを切り替えるとか、あるいは内輪をブレーキでつまむベクタリング機能を付け加えるとか、そもそも必要性がなかったそうだが、腑に落ちた。
方程式の解はシンプルな方が美しい。そういう考え方もあるのだ。

リポート:南陽一浩/K.Nanyo フォト:望月浩彦/H.Mochizuki  ル・ボラン2019年6月号より転載

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