【国内試乗】「アウディ A6」ある種の凄みすら感じさせる洗練度

シャシーは余裕たっぷりしかも驚くほど静かで快適

走行状況に合わせて車両を最適化する可変ドライブアシストや4輪操舵システム、そして最新のクワトロが常に安定した走りを提供する。

走り出してまず驚いたのは、動きがスムーズで上質感が漲っているいることだった。タイヤが丸い感覚そのままに滑らかに転がっていき、路面の凹凸を拾った際のサスペンションの上下動も角張ったところがまるでない。ステアリングやペダル類など操作系も含め、あらゆる可動部のフリクションが徹底的に低減されて洗練されたフィーリングを醸し出しているのだ。
エンジンは最大トルクが510Nmもあるのでもちろん頼もしいが、以前のアウディのようにスロットルが早開きして力強さを過剰に演出することなんてことがなく、あくまでリニアに落ち着いた雰囲気で加速していく。一般的な走行ならばエンジン回転は2000rpm程度で十二分で、まるでディーゼルエンジンのよう。それもそのはず、最大トルクは1370-4500rpmと超低回転から発生し、しかもトルクバンドが幅広い。首都高速や高速道路までを含めて、3000rpm以上を使うことなんて滅多にないぐらいだ。それでいてアクセルを深く踏み込んでいけば、鋭く吹け上がって6400rpmまで一気に上昇。そもそもシャシーのポテンシャルが高くクワトロでもあるから安心感は高いが、一方でのけぞるような速さがあるのが面白い。

日本仕様は当初セダン/アバントともSラインのみの設定で、ホイールは19インチが標準。オプションで20インチも選ぶこともできる。

静粛性の高さも驚きのひとつ。エンジン音は3000rpm以上回さないとかかっていないのかと勘違いしそうだし、ロードノイズもきわめて低いレベル。さらに、ウインドーノイズの処理も見事。サイドミラーの形状が巧みなようで、音の発生そのものが抑えられるとともにガラスの遮音性も高い。全体の音量が低い上に、どこかの音が目立つということのないバランスのいい静粛性能なのだ。
乗り心地のスムーズさは、ワインディングを元気に走らせるときでも変わらなかった。正確なライントレース性と抜群の操縦安定性によってスポーツカーも顔負けのコーナリング性能をみせつけるのだが、そういった走りのなかでもスムーズさが際立っているのだ。ステアリングフィールはあまりダイレクトではなく、ソフトな手応えでやや希薄とも言えるのだが、センターはしっかりとわかるし、ドライビングに必要なインフォメーションはきちんと伝わってくる。FRスポーツセダンの、拳にビンビンとくる感触とはまったく違うのだが、ボディはもちろんのこと、フロントのサスペンション回りやステアリング系の剛性が凄まじく高いことが窺い知れ、正確無比な動きをしっとりと感じさせるのが不思議と心地いいのだった。
どんなにペースを上げてもコーナーを攻めても、粛々と滑らかに、上質感をもって走っていく新型A6の洗練度にはある種の凄みすら感じる。A8以降の新世代アウディは、新たな境地を切り開いた。

ホイールベースの延長によりキャビン内は全方向にスペースを拡大。セダンのCd値は0.24と空力も優秀、高い静粛性に寄与している。

リポート:石井昌道/M.Ishii フォト:郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン2019年6月号より転載

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