運転に不慣れなドライバーにもシエラの安心感はオススメ
さて、ジムニーとジムニーシエラを並べたときに、ほとんどの人がジムニーシエラを褒めるのは合点がいく。トルクフルなエンジンもさることながら、運動性能や乗り心地というトータルでみれば、間違いなく今回のシエラは上々の仕上がりだからだ。やや路面追従性が良すぎてフワッとした乗り味のジムニー(軽自動車版)に対して、シエラは適度な堅さを持ったしっかりとした乗り味にしてきた。
クロカン4WDに不慣れなドライバーは、殊に高速道路でそれを感じるはずだ。多少うねりのある路面の直進や素早いレーンチェンジにおいて、左右にユラッと揺れる感じは決して気持ちのいいものではない。しばらく走れば慣れはするが、シエラの安定した走りに比べると、“クロカン4WD”っぽさを感じずにはいられない。サスペンション、タイヤサイズ、トレッドといった違いが、明らかに走りの差となって出ている。
ただし、それは単純な優劣ではなく、次のような理由も考えられる。まず軽自動車版のジムニーはドメスティックモデルであり、追い越し車線を走り続けるシーンはあまり想像できない。シエラよりも、オフロード性能とのバランスを重視して造られているのだろう。オンロードを意識して脚の動きを規制してしまうと、悪路走破性が低下するため、どうしてもオンロードでのセッティングは前述のようなフィーリングになってしまうわけだ。
一方、シエラは高速道の巡航速度域が日本よりも断然高い欧州を意識しており、カッチリした乗り味になるのは自明の理と言える。税金の金額差や納期などの問題がなければ、僕は間違いなくシエラを選ぶだろう。軽自動車版も非常によくできたクルマだが、新型のシエラは長距離ドライブでも疲れず、運転する楽しさが持続するはずだ。多少運転に不慣れなドライバーでも、安心できるフィーリングを持っており、特に女性ドライバーにはオススメといえる。
オフロードを走るなら足まわりとタイヤで660ccジムニーが有利
さて、日本ではオフロードを走る人は少ないと思われるが、ジムニーという特別なクルマなので、少しはふれておきたい。オフロード走行では路面追従性が重要になってくるが、その点では660ccのジムニーが若干秀でている。やはりオンロード性能に振ってあるシエラは、それなりの脚の動きを見せた。また16インチタイヤのジムニーに対して、15インチタイヤを履くシエラは、その点も多少不利だ。ただし、両車ともブレーキLSDトラクションコントロールという飛び道具があるので、短足であってもクロスカントリー走行はそこそここなしてしまう。
画像のABSユニットで制御させるブレーキLSDトラクションコントロールとは、スタックしたときなどにギアを4L(4WD低速)に入れると、空転した車輪にブレーキが利いて設置輪に駆動力を確保する機能だ。
違いを挙げれば、シエラはオフロードにおいてはダンパーの減衰力が高すぎで、石がゴロゴロしているようなダートでは酷い乗り心地だ。660cc版の方がハーシュネスをしなやかに吸収してくれるので、シエラより全然快適に乗れる。