最初はこのコントロールに戸惑うものの、これに慣れてくるとコーナリングでもブレーキを踏まなくても楽に通過できるようになる。信号などで停止したいときでも、あらかじめ目標を持ってアクセルを離せばきちんと止まる。ブレーキを踏むのが億劫なわけではないけれど、この一連の操作を体感すると手放せなくなる。さらに言えば、この回生ブレーキを上手に使えば、走行可能距離を伸ばすことができる。下りは可能な限りアクセルを踏まず、回生エネルギーを生かし、バッテリー消費の節減につなげることを心掛けるといい。
i3の走行モードはコンソールのダイヤル横にあるボタンで切り換える。モードはデビュー当初と同じコンフォート、エコプロ、エコプロ+の3種類。エコプロにすると加速がやんわりとした感じになり、この回生ブレーキの効きも抑えられる。このモードにするメリットはバッテリー消費が抑えられることで、コンフォートで走行するよりも3割程度走行距離が伸びるイメージだ。エコプロ+ではさらに航続距離は伸びるが、エアコンも停止するため、日本の夏では実用的ではないだろう。今回の旅では一度も使わなかった。
目的地は尾瀬の玄関口である鳩待峠。スタート地点のお台場からはおよそ200kmの距離。スタートした時点では満充電となっていたものの、この距離をEVで走り切るのはかなり厳しい。そこであらかじめ充電スポットが2か所用意された。EVではこうした計画を立てることでスムーズなドライブにつながるのだ。最初の充電スポットは80kmほど走った関越道下りの高坂SA。この時点でバッテリー残量は半分以上もあり、残量を気にせず余裕で到着できた。ここで30分ほど急速充電すると、走行可能な距離が一気に伸びた。
乗り心地は、以前乗ったi3に比べるとマイルドになった印象を受けた。カーボンファイバーモノコックならでは硬質な乗り心地はそのままだが、路面からのショックもかなり抑えられるようになっており、その進化は感じ取れた。リアエンジン/リアドライブの独特なフィールはあるものの、ステアリングの操舵感はクイックな印象で峠道を走っていても気持ちがいい。EVの強烈なトルク感は病みつきになる愉しさで、ドアを開けばカーボンファイバーが見えるなど、それもクルマ好きには堪らない魅力となっている。こんなに愉しいクルマならいっそ買ってしまおうかと思ったりもした。
しかし、価格を見ればその熱い思いを一気に吹き飛ばす600万円超え。補助金が付くとは行ってもレンジエクステンダー付きだとプラグインハイブリッドと同じ扱いになってしまうのも惜しい。今回は十分運転を楽しませていただいたということにしておきたい。
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