【EV/ハイブリッド技術の最新モード】
東京モーターショー(以下TMS)2017のサプライヤー展示ブースで感じるのは電気駆動のコモディティ化だ。最新自動車技術の方向性は欧州と中国の動向に左右されるわけだが、TMSでの展示にもそれが色濃く反映されていた。具体的にいえば、現在プレミアムクラスから徐々に電動化が進んでいる欧州は、最量販クラスの電動化という環境政策上重要なマイルストーンを迎えているし、世界最大の単一市場である中国は、自国自動車産業の飛躍的成長を狙う政策として、電動化を発展の起爆剤にしようと考えているからだ。
コンチネンタルが出展した液冷式バッテリー冷却システム(左)とEGS&電動コンプレッサー。
そんな背景があるので各社ともEV、PHV、ハイブリッド関連の部品の展示が非常に多い。中でも今回目立ったのは48V系の技術。48V系は従来の高電圧バッテリーに依存する電気駆動に比べて、電気を使う工業製品につきものの規制や規格が数段緩く、その結果製造コストが大幅に安い(同時に製造に伴う環境負荷も小さい)というメリットがある。ただし現在のハイブリッドが高電圧に依存しているのは、駆動・充電とも電気抵抗の小さい高電圧を使うことが合理的であるからであり、それを48Vでどこまで性能を出せるのかが大きな技術的課題だ。
48Vマイルドハイブリッドの形は数種類あるが、主流となる基本形はふたつ。48Vのスターター/ジェネレータをエンジン補機としてベルト駆動するレイアウトのものと、スターター/ジェネレータをエンジンとミッションの間でクランク軸直結するものだ。前者はハイブリッドのコモディティ化に欠かせない「既存のレイアウトを変えることなくハイブリッド化する」という費用対効果がより高いソリューションで、後者は48Vという電圧であっても電動・回生の性能を最大限に引き出すというより性能指向のものだ。TMS2017では、メルセデスがEクラスの4気筒エンジン仕様として搭載した48Vマイルドハイブリッドはまさに後者。ここで採用された48Vスターター/ジェネレータは三菱電機製で、今回部品としても展示されている。
写真左から、eHUB:モータージェネレーター付きハブ(NTN)、同eHUBのカットモデル、48Vツインパワードライブ(マーレ)、エンジン出力軸直結型48V ISGシステム(三菱電機)、2スピード電動リアアクスル(シェフラー)。
市場で先行したベルトドライブ方式も、スターター/ジェネレータの出力を大きめにしたり、ベルトテンションの最適化で効率を上げたりという進化が続いており、その関連の部品も多く出展されていた。ベルトドライブ方式で珍しいのは、シェフラーがエンジンとトランスミッション間にベルトドライブ方式のスターター/ジェネレータを配置する平行(ミッションと並ぶ位置)軸型も提案していること。これは電動リアアクスルとともにアウディTTベースの試作車に搭載されたもの。とても興味深かったのはアイシンのエンジン・ミッション間にスターター/ジェネレータを配置するハイブリッドパワートレイン。ISGと8速ATを組み合わせた横置きFF車用パワートレインとはなんとも欧州的(かつ戦略的)新製品ではないか。
写真左から、RWDマルチスピードHVトランスミッションおよびFF1モーターHVトランスミッション、eAxle:電気式4WD駆動ユニット(アイシン)、ヒートポンプエアコンシステム(デンソー)、PCU:パワーコントロールユニット(カルソニックカンセイ)。
電動の周辺技術も着々進化している。パワーコントロールユニットをはじめ多くの構成要素は小型軽量化が進んでいるし、電動性能を最大化するために重要な、バッテリー自体やパワーエレクトロニクスの冷却系や、プラグイン時代の一歩先を行く非接触充電など車の電化を推進する要素技術もすぐに量産車へ搭載できる状態で展示されていた。サプライヤーの展示を見ていると、電化を支えているのが、スターター/ジェネレータとバッテリーだけではなく、実はこんなに多くの部品なのだという事実に改めて驚かされた。
写真左は平行軸型スターター/ジェネレータ(シェフラー)、写真中、右がトラクションスクウェアドライブ:減速機付き高速モーター(NSK:日本精工)。
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