コネクティビティのベースメント
最近注目を集めているコネクティビティ関連技術は、電動化と並んで自動車の未来を切り拓く最先端の話題だ。コネクティビティとは、ものが「繋がる」ことと、それを通じて実現する事象全般を指す。クルマの世界では3つほど方向性があって、まずクルマと外部(他車や物、人、クラウド)とが繋がり情報共有することを可能にする技術、そして人とクルマをつなぐ情報・操作系をつかさどるヒューマンインターフェイス技術、最後は技術者以外にはなじみの薄いセンサーやコントローラー間を繋いで高速かつ高度な処理を行なう演算・ネットワークシステムが挙げられる。
東京モーターショーは一般向け展示なので、あまり専門的な技術の紹介は少ない(出展者も少ない)のだが、クルマ好きが自動車技術のトレンドを知ることのできる多くの展示があった。今回のショーではTOKYO CONNECTED LABという企画展示で様々なV2X系コネクテッドの未来像も紹介されていたが、ここではサプライヤーブースで見た車載機器としてのコネクティビティ関連技術にフォーカスしたい。
ハプティックフィードバックとCPUのパーティション(コンチネンタル)
ヒューマンインターフェイス関連では、まずコンチネンタルが出展したダッシュおよびセンターコンソールのディスプレイが最新技術トレンドを知る好材料だった。斬新な曲面デザインの鮮明なデュアルディスプレイやハプティック(触覚)フィードバック付きのバーチャルなスイッチという近未来感溢れるものだが、さらに興味深いのはインスト表示用のOS、車載インフォテインメント用OS、モバイルOSという現状3種のOSが同一のボード上で稼働する仕組み。これはマルチコアCPUのコアレベルでパーティションを切ることで並列稼働を可能にしつつ、外部からのハッキングを防ぐ堅牢なセキュリティを確保するもの。
写真左からオートバイ用スマートフォンインターフェイス(ボッシュ)とドライバーモニターシステム(アイシン)
具体的な使用イメージとしては、インスト情報、インフォテインメントの表示をマルチディスプレイ上で自在に混在表示したり、車内でアレクサのような汎用の音声コマンド式アシスタントサービスを使ったりできる。またクラウドも活用できるAI自然語認識を車載システムの音声コマンドとして使うような用途にも対応可能だ。
<高速な演算・ネットワーク処理が必要な自動運転時代のクルマにとって、その仕事を担うコンピュータの高性能化は必須。この数年NVIDIAに代表される汎用の高性能GPU等に話題が集中していたが、今回の東京モーターショーを見る限り、直近のADAS(先進運転支援技術)時代の主役は従来通りのSoCの正常進化版が主役を占めそうだ。つまり高価な汎用GPUでなくとも、大量のセンサー情報をリアルタイム処理できるめどが立ったように見える。
トヨタおよびデンソーの協業によるADASとインフォテインメントの統合システムでは(前述のコンチネンタルのインターフェース機器も同様)、ルネサスのSoCが採用されている。やはり省電力で堅牢なシステムが構築でき比較的低コストなソリューションという点が、直近のすべてのクルマにADASやコネクテッド機能が備わり始める時代に相応しいということだろう。
イーサネットSW/セントラルゲートウェイ(住友電気工業)
ADAS時代にはクラウドとの通信やローカルな車載ネットワークも高速化が求められる。イーサネットSWやセントラルゲートウェイの新製品も住友電工などが展示していた。またアイシンやオムロンはバイオメトリック・センサーを出展、これらもADAS時代の安全性向上に欠かせない要素技術だ。
ドライバーモニタリングカメラ、ドライバーモニタリングシステム(オムロン)