あのGoogleが自動車向けに開発した車載システム「Android Auto」が日本でリリースされて約1年が経った。当初はAndroid Autoを使うには対応カーナビなどとの連携が必須だったため、日本での普及はどこまで広がるかは未知数だった。しかし、昨年11月にはスマートフォン単体でもAndroid Autoが利用できるようになり、利用する機会は一気に広がる環境は整ったといっていい。
そんな折、Android Autoの普及にさらに拍車をかけそうなシステムが登場した。モトローラのAndroidスマートフォン「Moto Z」シリーズと組み合わせて使う車載ホルダーMod「Incipio Vehicle Dock」である。これはMoto Zシリーズ専用の機能拡張モジュール「Moto Mods」のラインナップのひとつで、拡張バッテリーModなどと同じIncipio製となっている。今回は最新の端末「Moto Z2 Play」と組み合わせた試用レポートをお伝えしていこう。
Android Autoを便利で使いやすく
Android Autoには、Google Mapをベースにしたナビゲーション機能のほか、音楽ストリーミング再生とハンズフリー通話が主要機能として組み込まれている。Android OSの機能の中からカーユースとして活用できるものをパッケージ化したことで、アプリを起動して表示されるメイン画面には再生中の楽曲、天気、通話、地図の検索履歴などの限られた情報を表示。スマホの画面サイズでも見やすいよう最適化されており、普段からAndroidスマホを使っている人にとっては違和感なく使えるだろう。
最大のポイントは「Incipio Vehicle Dock」が車載ホルダーとなっていて、「Moto Z」シリーズを装着すると自動的にAndroid Autoが起動するようになっていることにある。背面にはAndroid Autoを起動させる専用チップが内蔵されており、これがあらかじめ「Moto Z2 Play」にインストールされているAndroid Autoを起動させる仕組みとなっているのだ。
「Incipio Vehicle Dock」の背面には車のエアコン吹き出し口などに装着して使えるアタッチメントも付属。あらかじめ本機を車載用としてセットしておけば、クルマに乗り込んだ際に煩わしい操作なしに充電も開始する。つまり、この組み合わせなら、バッテリー残量を気にすることもなくAndroid Autoが長時間にわたって利用可能となる。しかも、Bluetoothとのペアリングを済ませておけば、音声ガイドをカーオーディオのスピーカーから出せるし、スマホ内の楽曲再生も可能だ。スマホでより使い勝手の良いカーナビ機能を求めるのであれば、最上のシステムとなるのは間違いない。
なお、この「Incipio Vehicle Dock」はAndroid Auto以外のカーナビアプリにも対応しているので、すでに愛用しているアプリや使い慣れたアプリを自由に使うことも可能だ。
スマホならではの快適な使用感
今回は、Android Autoによるルートガイドを受けながら、主要機能である音楽ストリーミング再生とハンズフリー通話などをスムーズに使いこなせるかどうかチェックした。Android Autoでは、音声コマンド「OK Google」と告げることで様々なコマンドの入力待機状態となるが、スペックの低いモデルだと、反応が悪かったりいきなりフリーズしたりすることがあるのだ。
「Moto Z2 Play」で使ってみたところ、そんな症状を見せることは一切なく、どんな時でもスムーズに音声コマンドを受け付けてくれた。認識率も高く、ほとんどのコマンドに正確に反応するのでストレスなく目的地設定などができた。文字をキーボードから入力しなくても音声で直感的に操作できるところが素晴らしい。仮に音楽などを再生中にうまく反応できないときでも、メイン画面右上にあるマイクのアイコンをタップしても音声入力は可能となる。これらを状況に応じて使いこなすのがAndroid Autoをうまく使うコツといえるだろう。
目的地設定の使い勝手は、車載カーナビと同等かそれ以上と感じた。目的地設定はAndroid Auto定番の「OK Google」という音声によるコマンドからスタートし、施設名をそのまま読み上げてもいいし、地名と組み合わせた入力にも対応。「近くのレストラン」とか、「お腹減った」といった曖昧なコマンドにも反応して適切な候補をリストアップする。認識率も高く、その扱いやすさはまさにクラウド接続できるスマホならではのメリットといっていい。
Android Autoは交通情報にも対応している。データはGoogleが独自に利用者の行動から収集しており、カーナビの多くが利用するVICSとはデータ供給元が異なる。そのため、対象道路はVICSよりはるかに充実しており、郊外の道路でも交通情報を反映したルートがガイドされるのは何かと心強い。
しかし、ルートガイドの能力は車載ナビ並みとはいかない。車載カーナビの多くが採用しているような詳細なガイドは行わず、交差点では分岐点に近づくにしたがって地図を自動拡大するのみ。もちろん、実用上は特に問題はないが、車載カーナビと比較すれば物足りなさは残る。
また、案内ルートはショートカットするような道路を選ぶ傾向が強く、狭い生活道路を案内することが頻繁にあった。さらにGPSだけの測位となるためにビル街では測位が不安定になる。利用時はこの辺りを認識した上で使いたい。
音楽再生も音声操作でOK
続いて音楽を楽しむ方法だが、ストリーミングサービスである「AWA」「Google Play Music」「Amazon Music」「Spotify」などの音楽アプリが対応している。今回はそのなかからSpotifyをインストールして試してみた。
素晴らしいのは、楽曲再生を音声コマンドで操作できることだ。お気に入りに登録済みの楽曲やプレイリストを指でタップして再生してもいいが、便利なのはやはり「OK Google」を活用しながら好きな曲を呼び出すこと。たとえば「Spotifyでマドンナを再生」と告げると即座に検索に移行して数秒後にはマドンナの音楽が再生された。再生中はボリュームを上げ過ぎない限り、認識を継続。この操作は走行中でも行えるのもいい。
カーオーディオから再生される音楽も心地良く、カーナビのルートガイド中に割り込まれる音声ガイド時には自動的にミュートもかかった。音声ガイドを聞き漏らさないよう、その辺りの一定の安全性は考慮されているようだ。ただ、スマホ本体の内蔵スピーカーで音楽を鳴らした場合は、走行音にかき消されがちとなるため、理想的にはカーオーディオとBluetoothで接続する方法をオススメしたい。それが叶わない場合は、Bluetoothスピーカーを持ち込む方法もあるが、ブレーキをかけた時にそれが凶器とならないように固定する配慮はしておくべきだろう。
これまでスマートフォンを使った車載システムは、多機能ではあるものの、決してスマートに扱えるというものではなかった。そんな環境を「Moto Z」シリーズと「Incipio Vehicle Dock」の組み合わせは一変させたのだ。特に、ドックに設置するだけでAndroid Autoが起動することで、ナビゲーションから音楽再生に至るまで、ドライブに必要と思われる機能すべてが音声で操作できてしまうなんて、これは車載ナビでもなかなかできない芸当だ。カーナビとしての実力こそ完璧とはいえないまでも、よりイージーにドライブを楽しみたい人にオススメしたい組み合わせといえるだろう。
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