派手ではないものの着実に進化を遂げている
もちろん、クルマにとってもっとも大事な柱が走りであることはいまも変わらない。パサートは、この部分でも質の高さを実感させ、そしてそれを見事にエモーショナルなものへと昇華している。
改めて実感したのはパワートレインの完成度の高さだ。1.4L直噴ターボのTSIユニットのスペックは最高出力150ps、最大トルク250Nmだが、その力感は数値以上で、発進は実に力強く、そして軽やかに加速していく。
低負荷時に2気筒を休止させて燃費向上に繋げるシリンダー・オン・デマンドも備わるが、その制御は緻密。動作を意識させられることはなく、間違いなくこれもJC08モードで20.4km/Lという低燃費に貢献している。
素早く変速し、アクセルペダルの動きと加速が直結したような、ダイレクトなフィーリングを生み出す7速DSGも、この走りへの貢献度は大きい。パワーを意のままに引き出して走る歓びを、ゆっくりと流すような場面でも堪能させてくれるのである。
快適性の高さは期待通り。そして想像以上だ。遮音、制振は行き届いているし、剛性感が高いボディに対してサスペンションはソフトな設定で、あらゆる入力を軽やかにいなす。TSIハイラインは18インチのタイヤ&アルミホイールが標準となったが、乗り心地の面で、そのネガは皆無と言える。
実は最初、可変ダンピング機構付きかと思ってしまったぐらい、クルマの動きは滑らか。そのたっぷりとしたストローク感は、ライバルたちの中でも、もっとも懐深い印象に繋がっている。
感心させられるのは、それでいて姿勢のフラット感はしっかりと出ていること。コーナーの連続する場面でペースを上げても、芯がしっかりと出たフットワークは腰砕けになるようなことがなく、安心感たっぷりに駆け抜けることができる。要するに、望めばスポーティな走りにだって、しっかり応えてくれるのだ。
単にソフトなのではなく、背筋はシャンと伸びているけれど所作は柔らかくしなやか、そしてキレもある。そんなフットワークに仕上がっているのである。
そうした走りを支える安全装備にも当然、抜かりはない。“オールイン・セーフティ”の名の下、予防安全、衝突安全、二次被害防止という3つのステージでの危機回避技術を統合。しかも渋滞時の追従支援システム、プリクラッシュブレーキシステムへの歩行者検知対応のシティエマージェンシーブレーキ機能の設定など、アップ・トゥ・デートな内容を備える。しかも全グレードに標準装備だ。
スペックを確認し、装備表をチェックしてみれば、パサートがあらゆる部分で秀でた1台だということは左脳で理解できる。しかしながらその本領は、実際にクルマを眺め、じかに触れて、走らせてみてこそ深く実感できるであろう。何度も記してきたように、全身を貫く高いクオリティ、入念な作り込みは、心を揺さぶる、右脳を刺激するレベルにあると言っても、決して過言ではない。
今回の進化は、派手なものとは言えないだろうが、しかし基幹グレードの内容の充実は、より多くの人にその本質に触れる機会をもたらすはずだ。そのメリットは我々ユーザーにとって、決して小さくない。このセグメント、パサートを知らずに語るのは、あまりにもったいないというものだから。
■ハイラインに備わるテクノロジーパッケージ
ハイラインには、オプションでテクノロジーパッケージを用意。こちらはTFT12.3インチの大型ディスプレイを採用したメータークラスター「Active Info Display」や、車両を上空から見下ろしているかのような合成画像をディスプレイに表示するアラウンドビューカメラの「Area View」、縦列駐車や車庫入れの際に、駐車をサポートしてくれる「Park Assist」、ヘッドライトの照射エリアを自動的に制御してくれる「ダイナミックライトアシスト」等がセットオプションで用意される。
■Volkswagenオールイン・セーフティで安全性能も万全
予防安全
事故を起こさないための予防安全機能として、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)、レーンキープアシストシステム(Lane Assist)等が標準装備。
二次被害防止
衝突してしまった後のさらなる多重事故を防ぐのがポストコリジョンブレーキシステム。エアバッグの作動を感知すると、自動でブレーキを掛け二次被害を防止してくれる。
衝突安全
万が一事故が発生した際に、乗員を守るのが高いボディ剛性をはじめ、エアバッグ、全席3点式シートベルト/フォースリミッター付シートベルトテンショナー等の装備だ。