【国内試乗】究極のオフローダーが最新技術でアップデート!「メルセデスAMG G63 ローンチエディション」

待望の新型G クラスが日本に上陸した。気になるBEVモデルに先駆けて、ここでは、パワートレインの電動化やインフォテイメントなどがアップデートされた内燃機関モデルの第一報をお届けしよう。

完成度の高さはさすがメルセデス

もはや東京では、“石を投げればGにあたる”と思えるほど絶大なる人気を誇るメルセデスのGクラス。今や元々軍用車として開発されたモデルであるとは誰も想像できないほどその進化は著しく、2018年にデビューしたW463A型では、完全なラグジュアリーSUVとして認識されるようになった。それも今年になってそのマイナーチェンジ(以下、MC)版が上陸。BEV版「G580」が本命ではあるものの、根強い支持層の要求に応えるようにベーシックグレードのディーゼルモデル「G450d」と、高性能版の「AMG G63」がひと足先にリリースされた。両モデルともに、48V電気システムのISGが組み合わされる他、タッチスクリーン仕様の対話型インフォテインメントシステムであるMBUXが搭載されるなど、パフォーマンスの効率化と利便性を向上させたことが今回の狙い。また、Gクラスのネガな部分であった空力特性を一部、最適化することで静粛性の向上まで図っている。

G63にはAMGアクティブライドコントロールサスペンションを初採用。電動化されたパワートレインと相まって、さらなる俊敏なドライビングフィールと快適性の向上を実現。

今回、試乗したのは「G63ローンチエディション」。ヘッドライトやフロントウインカー、リアコンビネーションランプなどがスモーク仕様になった他、前後バンパートリムやアンダーガード、スペアタイヤカバーまでカーボン仕上げにされたことでワイルド感が増している。伝統の無骨さを残しつつも洗練された印象なのはMC前と変わりないが、より都会派になったように映るその一方で、ドアの開閉など相変わらず金属音を伴うからGクラスならではの普遍性はそのまま活かされている。

Gクラス初採用となるMBUXやワイヤレスチャージング、キーレスゴーなどの快適装備、ステアリングアシスト、トランスペアレントボンネットもなどの標準装備をアップデート。G63にはAMG専用ディスプレイスタイルも採用。

そんな心地よい金属音に古き良き時代を今でも味わえることに感謝しながら着座すると、眼の前にはデジタル化された計器類が並び、ステアリングにはマルチファンクションスイッチが備えられるなど、これもMC前とはあまり変わりない印象だが、デフロックスイッチ周辺のデザインが変更されたこともあって、かつてインテリアから得られたクラシカルな味わいはほぼ皆無になってしまった。操作性という面において向上しているのは確かだが、進化を重ねる度、徐々にGクラス特有の無機質感が薄れていくことに少々、寂しさを覚えてしまう。それだけに逆に言えばラグジュアリー感は強調されているから価格帯に相応しい仕上がりになったとは言える。

そういった点で言えば、快適性が向上しているのも同様。Gクラスは伝統のラダーフレームを今でも受け継ぎ、さらにリアサスペンションは未だにリジッドアクスル式であることを思えば、よくぞここまで! と感心するほど、今回初採用となったAMGアクティブライドコントロールが良い働きをしていると思い知らされる。ただし、これはあくまでもGクラスとして、というのが大前提。GLSなどモノコック構造を採るSUVほどではないから快適性という面で期待しすぎてはいけないが、過酷なオフロード走行における卓越した走破性を犠牲にすることなく、快適性と両立させるには、むしろ神業的なセッティングだと思わせる完成度であるのは間違いない。

Gクラスを意識させない卓越した走行性能

今回、撮影も兼ねて訪れたワインディングを試してみると、ラダーフレームをもつGクラスということをさほど意識させず、普通に攻められたから驚異的だ。電子制御式油圧スタビライザーによるロール制御はもちろん、ハンドリングも正確で、路面の凹凸なども巧みにいなしていく。しかもB/Cピラー間やフロアに吸音材が追加された影響からか振動が抑えられているようで不快感もほぼ皆無。前後トルク配分40対60という4WDシステムだけでなく、電子制御トラクションシステムの4ETSによる効果は思いのほか大きく、優れたセンサーをもつことも重なり、タイヤのグリップぎりぎりのあたりにおける高速コーナーでは高いトラクション性と安定性を確認できたのは個人的にも大きな収穫だった。何しろ、車検上での総重量が2845kgにも及ぶG63が怒涛の加速で安定した姿勢を保って峠を駆け上がっていくのだから、外から見れば、それはそれで恐ろしい光景だろう。タイトコーナーの下りでも思った以上に素直に旋回していくから本来得意とするオフロードでは如何なる走りを見せてくれるのかと試したくもなってくる。

アファルターバッハにて「One Man, One Engine」の原則に則って生産される4LV8ツインターボエンジン(M177)は、最高出力585ps/最大トルク850Nm発揮。さらにISG+48V電気システムの搭載により電動化され、パワーと効率を大きく高めている。

無論、こうした走りを実現できるのは、G63に搭載されるV8ツインターボのおかげだ。パワー&トルク値は以前と変わらず、585ps&850Nmだが、20ps&200Nmを出力するISGによる電動ブーストが上乗せされ、その結果0→100km/ h加速はMC前から0.1秒短縮された4.4秒をマークする。これだけの巨漢であることを思えば、わずか0.1秒でも体感的には大きいのかもしれないが、実はそれよりもドロドロッ! と響くエンジン音との相乗効果による加速感が何よりの魅力だろう。AMGならではの世界観は健在! とばかりに主張する。ここまでパフォーマンスが高いと正直ISGの恩恵を体感することはほとんどないというのが本音だが、少なくとも街中での燃費性能などには貢献するはずだ。

日本に導入されるガソリンとディーゼルの内燃機仕様は、このG63ローンチエディションのほかに、G450dローンチエディション(2110万円)の2モデルが設定される。

今回のMCでは、オフロード専用プログラムとして「トレイル」「ロック」「サンド」が加えられた他に、「スポーツ」「スポーツ+」「インディビデュアル」といったAMGダイナミックセレクトが標準装備されたことも特徴。その機能のひとつであるAMGダイナミクスは、前後トルク配分やステアリング特性を好みに応じて設定できるなど、玄人受けする設定まで用意されているからAMGの本気度が伺える。しかも、サーキット用の「トラックレース」や0→400m/h加速の「ドラッグレース」、アクセルやブレーキ、車速などをモニタリングする「テレメトリー」といった類まで装備するから恐れ入る。例えGでもAMGに相応しいステージで使えるという自信すら匂わせるから見事である。これでまたもや支持率は高くなるはずだ。Gの進化にはメルセデスの意地を感じてならない。

開口部が大きく利便性に優れた、640〜2010Lの大容量を誇るラゲッジルーム。リアシートは60:40の分割可倒式となっており、用途に合わせて自在にアレンジ可能だ。

新型では、Aピラー部の形状最適化、ルーフ前端にリップスポイラーを追加、B/Cピラーの間やフロアに吸音材を追加など、特徴的なボディ形状はそのままに空力特性や静粛性向上を実現している。

【Specification】メルセデスAMG G63 ローンチエディション
■車両本体価格(税込)=30,800,000円
■全長×全幅×全高=4690×1985×1985mm
■ホイールベース=2890mm
■トレッド=前;1655、後:1660mm
■車両重量=2570kg
■エンジン型式/種類=177/ V8DOHC32V +ツインターボ
■内径×行程=83.0×92.0mm
■総排気量=3982cc
■最高出力=585ps(430kW)/6000rpm
■最大トルク=850Nm(86.7kg-m)/2500-3500rpm
■燃料タンク容量=100L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=6.8km/L
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:リジッドアクスル/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:285/45R21、後:285/45R21
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

フォト=郡 大二郎 ル・ボラン2024年11月号より転載

この記事を書いた人

野口優

1967年生まれ。東京都出身。小学生の頃に経験した70年代のスーパーカーブームをきっかけにクルマが好きになり、いつかは自動車雑誌に携わりたいと想い、1993年に輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。経験を重ねて1999年には三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務。2008年から同誌の編集長に就任し、2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。フリーランスとしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動している。

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野口優
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2024/10/02 17:30

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