普段使いは街乗りオンロードが主流だが本格オフロード性能を持っていても、実際に日常ではオンロード重視で使うことがほとんどだろう。しかし、昨今ではゲリラ豪雨をはじめとした自然災害が多発して、移動を制限されることもある。ここでは、いざという時の脱出に役立つ、本格性能を纏ったモデルを集めてみた。
本格オフローダーの伝統を持つ3台
SUVはブームに火がつき始めてから久しく、いまでは乗用車の中心として定着し始めている。歴史的には1990年代後半にトヨタやホンダが乗用車ベースのモノコックSUVを発売、2000年代に入るとBMW X5を皮切りにポルシェ、メルセデスが追従するなど、プレミアムブランドもモノコックSUVにこぞって参戦。それがブームを牽引していまではあらゆるブランドがラインナップの中心に添えているくらいだ。
これだけ世に溢れてくると、差別化が求められて多様なSUVが存在するようになってくるわけだが、本質的なSUVの価値を求めるのなら本格オフローダーに目を向けるべきだろう。ハッチバックの車高をちょいと高くしたぐらいのなんちゃってSUVとは違い、クルマの持つ能力の高さに惚れ込み、相応しいステージに行ってみたいという冒険心がわくなど新鮮な気分になれるはずだ。
今回は本格オフローダーのなかでも由緒正しき伝統を持つ3台をピックアップした。まず我が日本からはランドクルーザー。その実質的な初代モデルは1951年登場のトヨタBJ型ジープだと言われる。当初、ジープという名称は自然発生したもので商標登録などされていなかった。ところがアメリカのウィリスと三菱によって商標が独占され、1954年からランドクルーザーと名乗るようになった。ランクルは新たなライトデューティ系の250シリーズとフラッグシップの300シリーズ、そしてヘビーデューティな70の3モデルがあるが、もっとも硬派なのは70だ。BJ型の後に1955年の20系、1960年の40系へと継承され、1984年にはヘビーデューティモデルとして70系が誕生。70系の日本国内での販売は2004年に終了したが、2014年にはデビュー30周年を記念して期間限定発売、そして2023年11月には再導入され、晴れてカタログモデルとなった。
ラダーフレーム構造に前後とも車軸式でフロントはコイルスプリング、リアはリーフスプリングのサスペンションという伝統的な造りは、悪路走破性を考えればいまだに合理的であり、シンプルだからあらゆる地域で補修に苦労しない、人々の生活に寄り添うモデル。
新たな日本仕様は2.8Lディーゼルターボを搭載。10年前の4LガソリンNAに比べると最高出力は27ps低い204psだが、最大トルクは140Nmも増強された500Nmだ。また4LガソリンNAはMTとの組み合わせであり、本格的なオフロード走行ではエンストの憂き目にあったものだが、低回転からトルクが図太い2.8Lディーゼルターボと、エンスト知らずでトルク増幅効果もあるトルクコンバーター式ATの組み合わせは最強。いまの70ならば自信を持って悪路を走破できる。一般道でも走りやすいのは当然だ。 サスペンションも改良されていて高い悪路走破性を維持しながらも、フリクションが少なくオンロードでも快適な乗り心地になった。バックモニターやトヨタ・セーフティ・センスの採用などで日常生活での安心・安全も増している。
オフロードのみならずオンロードでも安心の理由
いまではステランティスのブランドとなっているジープ。コアモデルであるラングラーの祖先は1941年にアメリカ陸軍が実戦投入した軍用の四輪駆動車だと言われる。前述のようにアメリカのウィリスが三菱とともにジープの商標を独占した後、ウィリスは民間用のモデルを販売。その後、いくつかメーカーが変遷しながら現在に至る。ラングラーを始めて名乗ったのは1987年で、現行は2018年に登場した4代目。日本仕様はベーシックグレードのアンリミテッド・スポーツ、上級グレードのアンリミテッド・サハラ、悪路走破性を高めたアンリミテッド・ルビコンの3本柱で、パワートレインは2Lガソリンターボ+8ATが基本だが、PHEVも用意される。
ラダーフレーム構造に前後ともコイルリジットという伝統的なサスペンション。ハイテクではないもののルビコンならばいまでも世界最高の悪路走破性をもつと自負している。それが誇張ではないことは、オフロードコースで即座に理解できる。サスペンションのストロークが長く、大きな凹凸でも楽々とクリアしていく様が圧巻だ。
4代目となって劇的に変化したのがオンロードでの快適性だ。古いラダーフレーム構造は、フレームとボディがバラバラに動いている感覚が強く、高速道路やコーナーでは慎重な走りが求められたが、いまのラングラーは直進安定性が高く、ステアリング操作とクルマの動きが合致して、乗り心地も良くなった。モノコックSUV並とまでは言わないが、一般的なユーザーが雰囲気に惚れて手を出しても後悔しないくらいにはなった。乗っているうちにオフロードに足を踏み入れたくなるだろう。そんなときは専用コースを目指して合法的に楽しむことをおすすめする。
いまではブランド名になっているランドローバーだが、もとは1948年にイギリスのローバーが本格オフローダーとして発売したモデルの車名だった。その後1989年にディスカバリーが登場したこともあって、1990年からはディフェンダーを名乗るようになった。
新型の特徴はなんといってもラダーフレーム構造ではなくモノコック構造となったことだ。デザインも初代のプリミティブなものから一気にモダンになった。全長によって90、110、130と3つのボディがあり、エンジンは2Lガソリンターボに3Lディーゼルターボ、それに5L・V8ガソリン+スーパーチャージャーというキワモノまで用意されている。
モノコックであるのはもちろん、ランドローバーの高い技術力によってオンロードでの走りは快適そのもの。本格オフローダーのなかでは頭ひとつ抜けている。肝心の悪路走破性はと言えば、ラダーフレーム構造以上に堅牢なボディに、4輪独立懸架のエアサスペンションなので自在に伸び縮みさせたり、車高をかえたりと、そして電子制御で本格派を名乗るだけの性能を確保している。このクルマで走破できなところには、そもそも足を踏み入れるべきではないだろう。
日本の誇りであるランクル70、すべての本格オフローダーの祖であるラングラー、上質で豊かな気分になれるディフェンダーと、どのモデルに乗っても歴史と伝統に裏付けされた本物感に満足いくことだろう。オフロードを走ることは希かもしれないが、普通は不安な豪雨などに遭遇すると、思わずにんまりしてしまいそうだ。
【SPECIFICATION】TOYOTA LAND CRUISER 70 AX
■車両本体価格(税込)=4,800,000円
■全長×全幅×全高=4890×1870×1920mm
■ホイールベース=2730mm
■車両重量=2300kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/2754cc
■最高出力=204ps(150kw)/3000-3400rpm
■最大トルク=500Nm(51kg-m)/1600-2800rpm
■トランスミッション=6速AT
■サスペンション=前後:リジット
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:265/70R16
問い合わせ先=トヨタ自動車 TEL0800-700-7700
【SPECIFICATION】LANDROVER DEFENDER 90 V8
■車両本体価格(税込)=15,240,000円
■全長×全幅×全高=4510×1995×1970mm
■ホイールベース=2585mm
■車両重量=2310kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+SC/4999cc
■最高出力=525ps(386kw)/6500rpm
■最大トルク=625Nm(63.7kg-m)/2500-5500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:Wウイッシュボーン、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:255/60R20
問い合わせ先=ジャガー・ランドローバー・ジャパン TEL0120-18-5568
【SPECIFICATION】JEEP WRANGLER UNLIMITED SAHARA 2.0L
■車両本体価格(税込)=8,390,000円
■全長×全幅×全高=4870×1895×1845mm
■ホイールベース=3010mm
■車両重量=2000kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1995cc
■最高出力=272ps(200kw)/5250rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/3000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前後:リジット
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:255/70R18
問い合わせ先=ステランティスジャパン TEL0120-712-812
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