【国内試乗】モデルチェンジでより精悍さが増した美しきステーションワゴン「メルセデス・ベンツ E220d ステーションワゴン アバンギャルド」

ついに国内でも販売が始まった新型E クラス。今回はフルモデルチェンジに際してセダン/ ステーションワゴンの両方が同時にリリースされたが、ここではステーションワゴンにフォーカスを当て、国内公道で走らせた第一印象をお届けしよう。

スタイル・実用性・走りの3拍子がそろう

日本ではセダンと同時に発売が開始されたメルセデス・ベンツ新型Eクラス ステーションワゴン。まず目を惹くのは、セダンと同じくその美しいスタイリングだ。従来の機能性、つまりは容量最優先のフォルムから脱して、流麗さも意識するようになったのは先代からだが、新型はその方向性が更に極められたように感じられる。

起源をたどれば1977年に登場したS123型ミディアムクラスワゴンをルーツに持つEクラスワゴン。優れた実用性とスタイルを両立した人気のモデルだ。

ロングフード、ショートオーバーハングに後退したキャビンは当然セダンと同様。その上でステーションワゴンは、後方に向けてなだらかに落ち込んでいくルーフラインによってさらに伸びやかな印象を醸し出している。実はスリーサイズはセダンと変わらないのだが、見た目にはこちらの方が一層低く、長く感じられるほどだ。

ラジエーターグリルとヘッドライトをブラックパネルで連結したフロントマスクや、スターマークをあしらったテールランプなどのディテールは、こちらもセダンと変わらない。個人的にはすでに見慣れて、悪くないんじゃない? という感覚になっている。

試乗車は197ps/440Nmを発揮する2L直4ディーゼルターボを搭載するE220d。ガソリンモデルも選択可能。どちらも23㎰/205NmのISGを組み合わせるマイルドハイブリッド方式だ。

荷室容量は先代の640~1820Lから、615~1830Lになった。後席使用時は減っているが、最大では増えているかたちである。依然十分すぎるほど広いとは言え、先々代W212は最大1910Lあったよな…とも言いたくなるが、容量重視のユーザーには今、SUVという選択肢があるからというのが、メルセデス・ベンツの回答だ。

ラインナップは2L直列4気筒ガソリンターボエンジンのE200と、同ディーゼルターボエンジンのE220dで、いずれもマイルドハイブリッドのISGが組み合わされる。トリムは同じアバンギャルドである。

オプションである「MBUXスーパースクリーン」を選択すれば、助手席ディスプレイを含めパネル全面がフラットなガラス面で覆われ、同社のBEVであるEQシリーズに近い雰囲気に。このクラスだけあって後席の居住性も充分だ。

残念というか解せないのは、セダンにはあるPHEVのE350eが用意されないことだ。本国仕様には設定されているのに。日本仕様の場合、AIRMATICサスペンションとリアアクスルステアリングをセットにしたオプションのドライバーズパッケージがE350eにしか設定がなく、つまりステーションワゴンではこれらを選ぶことができない。装着すると走りが断然好印象となるのをセダンで体験済みなだけに、それはないよと思ったわけだ。

ラゲッジルーム容量は標準状態で615Lを確保。後席シートは40:20:40での分割が可能で、すべて倒せばフルフラット状態になり、容量も最大1830Lまで拡大することができる。

ところが実際に試乗したE220d ステーションワゴンの乗り味は、それでも十分納得できる仕上がりとなっていた。端的に言って、乗り心地がソフトで、しっとり感が増しているのである。
サスペンションの柔らかさは路面のうねりなどを通過した時のノーズの上下動からも明らか。セダンでは気になるコツコツとした硬さも半減している。上下動の大きさが気になるかと思いきや、巧みな姿勢制御でそれをしなやかに収めるのが、さすがメルセデスだ。

試乗車はAMGラインパッケージの19インチアルミホイールを履く。

実はステーションワゴンは、これまでの伝統に則って、リアに車高調整機能、要するにエアサスペンションが装備されている。フロントはスチールスプリングのままだが、これが乗り味をゆったりとしたものにしているのである。それでいて軽快なハンドリングも損なわれておらず、ワインディングロードでも気持ち良くドライブできる。これならばドライバーズパッケージ無しでもオーケーだ。

今回の新型Eクラスからインフォテイメントが大幅に進化。サードパーティ製アプリのインストールにも対応し、車内で動画やゲームを楽しむことができる。

動力性能にも不足は無い。そもそもトルキーなエンジンに、23ps/205Nmまで出力アップしたモーターアシストが加わるので出足は俊敏だし、その先もどこから踏もうと即座にトルクがついてくる。人や荷物が満載でも、これならまるで苦にならないだろう。

高い実用性に加えてスタイリッシュで、しかも乗り味はまさにメルセデスらしい懐深さだけに、ワゴンである必要性が無い人にも勧めたくなってしまった。なお、セダンとの価格差は36万円である。

【Specification】メルセデス・ベンツE220d ステーションワゴン・アバンギャルド
■車両本体価格(税込)=9,550,000円
■全長×全幅×全高=4960×1880×1470mm
■ホイールベース=2960mm
■トレッド=前:1630、後;1645mm
■車両重量=1940kg
■エンジン型式/種類=654M/直4DOHC16V+ターボ
■内径×工程=82.0×94.3mm
■総排気量=1992cc
■最高出力=197ps(145)/3600rpm
■最大トルク=440Nm(44.9kg-m)/1800-2800rpm
■モーター形式/種類=EM002/交流同期電動機
■モーター最高出力=23.1ps(17kw)/1500-2500rpm
■モーター最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/0-750rpm
■燃料タンク容量=66L(軽油)
■燃費(WLTC)=18.2km/L
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:4リンク/コイル、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ=前:245/45R19、後:275/40R19
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

フォト=岡村昌宏(CROSSOVER) ルボラン2024年5月号より転載
島下泰久
AUTHOR
2024/03/24 11:30

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