流面形のノッチバック版
トヨタのファミリーカーであるコロナは、1980年代にFF化が行なわれた。1983年1月に登場した八代目コロナ(T150型系)がそれであるが、急激な変化を好まないユーザーのために、七代目コロナ(T140型系)もしばらく併売されるという措置が取られた。そうした中で、2ドア・モデルはひと足先にFFへの完全な移行を行っている。1985年8月に、それまでの2ドア・ハードトップがモデルチェンジするという形で、新型車コロナクーペが発売されたのである。
【画像20枚】いまひとつアピールポイントに欠けるコロナクーペを見る!
このコロナクーペは、FFコロナをクーペ化したもの……と表現しても間違いではないのだが、それよりは、同時に登場した四代目セリカの派生車種と言った方が話が早い。四代目・T160型系セリカは、「流面形」を謳ったキャッチコピーの通り、うねるような面を持つスタイリングが特徴であったが、コロナクーペはこのセリカをそのままノッチバック版にしたもの、という印象である。
セリカは初代以来、ノッチバックとファストバック(リフトバック)の2ボディをラインナップしてきたが、この四代目でリフトバックに特化された分、ノッチバッククーペの方をこのコロナクーペが受け持つという形になった、と理解すればいいだろう。また、セリカは初代からしてカリーナの兄弟車という面も持っていたが、このモデルチェンジではさらにもうひとつ、カリーナEDという派生車種も登場した。これは4ドア・ハードトップのスペシャリティという性格を持つ車種であった。
コロナクーペは、カリーナEDともどもセリカの基本コンポーネンツを共有する形で設計されており、前後ともストラット式のサスペンション(リアはデュアルリンクとなる)や、搭載エンジンも共通となる。エンジンはいずれも直列4気筒で、2L DOHC 16バルブの3S-GELU(160ps)、1.8L SOHCの1S-iLU(105ps)、1.6L DOHC 16バルブの4A-GELU(130ps)の3種類。なお、カリーナEDには1.6Lモデルは存在しない。
トランスミッションは全エンジンに5速MTと4速ATが設定されたが、2Lおよび1.6L、つまりツインカムには電子制御式OD付4速AT(ECT-S)が採用され、シングルカムである1.8Lには電子制御なしのOD付4速ATが組み合わされていた。
このようにして送り出されたコロナクーペだったが、セールス面では好調だったセリカやカリーナEDと比べると、キャラクター設定に弱さがあったためか、あまり振るわなかったようだ。登場2年後のマイチェンでは1.6Lが廃止され、2L ハイメカツインカムの3S-FEが追加されるなどしたが、4年後のセリカ/カリーナEDのモデルチェンジと共に、後継車のコロナEXiV(EXIVとも表記)へと生まれ変わっている。このEXiVは、カリーナED同様の4ドア・ハードトップであった。
コロナクーペそのもののインパクトのなさがカタログにも現れている
さて、ここでご覧いただいているカタログは、このコロナクーペのものである。サイズは297×245mm(縦×横)、表紙を含め全24ページ。発行年月は、表4に「6109」というコードが見られるところから、1986年(昭和61年)9月と思われる。登場初期のものではないが、前期型のカタログということになる。
カタログとしては特に変わった作りではなく、最初にスタイリングのアピール、そしてインテリア、メカニズム、装備、グレード構成といった順に紹介されている。しかし、スタイリングのページでは、かなりイメージに振った照明とアングルの写真が大きく扱われ、いまひとつ実際のスタイルがよく伝わっていない、というよりそれをアピールするつもりがないようにも見える。セリカに比べると、スタイリッシュさという点ではいまひとつインパクトに欠ける、という面が自覚されていたのかもしれない。
全くの余談ではあるが、コロナクーペがデビューした当時、筆者はまだ小学生。セリカやカリーナEDと比べると、3車種中、このコロナクーペが最も好きであった。ノッチバックスタイルは端正で好ましかったし、フォグランプを配したフロントマスクがマークⅡなどを思わせるハンサムぶりであり、また全体にゴージャスな印象があって、すっかり魅了されたのである。セリカと写真を見比べて、リアデッキの長さが本当に違うのか(もちろん異なるのは一目瞭然だが、その時の自分にはよく分からなかった)数日悩み続けたのをよく覚えている。
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