トンネル内で再放送されるかどうかは等級によって決まる
皆さんはあまり経験がないかも知れませんが、ラジオは一般的に地下街では聞こえません。当然、トンネルの中でも聞こえないはずなのですが、高速道路のトンネル内などは、普通にAM放送が聞こえます。その仕組みはどうなっているのでしょう?
高速道路のトンネルはAMラジオが聞けることが多くなっています。なかには「AMラジオ聞け」というような看板が掲げられていることもあります。これは、事故や災害などが起きたときにAMラジオを使ってドライバーに知らせることが目的です。トンネル内でAMラジオが聞けるのは漏えいケーブルというシステムを使って、再放送を行っているからです。
漏えいケーブルというのは、発信アンテナにあたります。トンネルの外で受信したラジオ放送の内容を、トンネル内に設置された発信アンテナから再放送するので、トンネル内でAMラジオが聞けるというわけです。再放送といっても1回放送されたドラマがもう一度放送されるものとは違うのですが、放送業界ではこのような表現を使っています。
なんでAM放送だけなのでしょう? FM放送のファンはトンネルで放送が途切れてしまうことを残念に思っている方も多いはずです。FMだって放送してくれればいいのに、と思うのは当然です。じつはFM放送の再放送も徐々に増え、現在は多く見かけるようになってきています。トンネル内再放送は、そのトンネルの近くで安定して放送が受信できる局が選ばれています。そのため、FM放送が意外と少なくなってしまっているわけです。とくにワイドFMと言われるものは再放送されていません。ワイドFMというのはAM放送の内容をFM波に乗せて放送するもので、受信の安定度などの関係で採用されないということです。
トンネル内で再放送が行われるかどうかは、トンネルの等級によって決まります。トンネル内再放送が義務となっているのは「AA級」と言われるトンネルです。トンネルの等級は延長(距離)と1日の平均通過台数で決められています。延長が10kmを超えれば通過台数に関係なく「AA級」で、3~10kmだと「A級」になりますが、通過台数の多い場合は「AA級」になることもあります。
事故や災害をどうやって知らせるか? は単純です。本来の放送を中断し割り込み放送を行うのです。自分のスマホやUSBメモリーから音楽などを聞いている場合でも、長いトンネルに入ったらそれをいったん止めてラジオ放送に切り替えると万が一の際の対処を素早く行えます。危険回避は「まさかそんなことはないだろう」と考えると対処が遅れます。そうならないために必要なのは「万が一のときに備えよう」という気持ちです。
さて、電波といえばスマホの通信やGPS信号も電波が使われています。現代は高速道路のトンネルなどではほぼスマホの電波が途切れることはなくなってきました。スマホではなく、携帯電話だった時代、それもアナログ波だった時代などはトンネルに入ると通話が途切れるので「もうすぐトンネルなので切れちゃいます」なんていいながら通話をしていたものです。
現在、スマホの電波が途切れないのは、トンネルの出入り口付近にアンテナを設置したり、ラジオの再放送と同じように漏えいケーブルを使ったりしています。
ではGPSはどうなのでしょう? GPSの信号も電波なので、トンネルの中には届きません。GPSの電波は上空2万~4万kmにある人工衛星から発せられる電波です。GPSは衛星から発せられた電波を受信側(ナビやスマホ、レーダー探知機など)で受けて、位置を計測します。このため、受信側が直接受信しないと計測できないので、ラジオやスマホの電波のように再放送というわけにはいきません。よって、トンネルや建物の中などではGPS電波を受信することはできません。スマホやナビがGPS電波を受信しなくても道案内を続けられるのは、ジャイロや車速センサー、基地局情報、無線LAN測位などの情報を使っているからです。
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