【新世代コンパクトの実力検証】CセグメントのハッチバックとMPVのベンチマークをロックオン!「メルセデスベンツAクラス/Bクラス」

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2018年と2019年に、4代目と3代目がデビューしたAクラスとBクラスがマイナーチェンジを受けた。エクステリアの変更は微小だが、注目はインフォテイメントシステムのアップデート。加えて乗り味も格段に向上しているなど、中身も大幅に進化していたのだ!

A/B両モデルとも最後のICEとなる可能性が

2018年2月にアムステルダムで、現行の4代目Aクラスが発表されてから約4年半となる2022年10月、そのAクラスとAクラスセダン、兄弟モデルのBクラスが本国ドイツで初のフェイスリフトを受けた。これより前の2022年6月には、ドイツの経済誌が「メルセデス・ベンツはA/Bクラスの生産を2025年に終了し、後継モデルは投入しない」と報道し、自動車業界を騒がせた。果たしてこれが事実なのかは不明だが、少なくともメルセデスのコンパクトクラスは、BEVとしては継続されても、ICE車としては消滅する可能性が高い。

「メルセデス・ベンツAクラス 『A200d』」

加えて世界はSUV全盛で、コンパクトクラスもルーフが低いモデルのマーケットは縮小している。BEV開発やサステイナビリティに多額の投資が必要とされる中で、収益性の低いモデルが消滅しても仕方がないのかもしれない。だからこの報道を見たとき、このままA/Bクラスはフェイスリフトせずにモデルサイクルを終えるのかとも思ったが、そこはさすが「最善か無か」をスローガンに掲げるメルセデス・ベンツ。しっかりアップデートしてきた。

【写真25枚】インフォテイメントシステムのアプデに加えて乗り味も格段に向上! 

今回のフェイスリフトの内容は以下のとおり。まずAクラスのエクステリアは、フロントバンパーとフロントグリル、リアディフューザーが新デザインとなったほか、ボンネットフードにパワードームが追加。またヘッドライト及びリアコンビランプの内側のデザインが変更され、ヘッドライトにはアダプティブハイビームアシストが標準となった。アルミホイールも新デザインとなっている。

フロントデザインは、サメの鼻先のように前傾させることでシャープさを強調。AMGラインでは、小さなスリーポインテッドスターが散りばめられたシングルルーバーグリルとなる。ハイ/ロービームを自動で切り替えるアダプティブハイビームアシストも装備。

インテリアは、新世代のステアリングホイールを採用したほか、センターコンソールからタッチパッドが消滅。また最新世代のMBUX(NTG7)を搭載し、A180およびA180セダンを除く全車にアドバンスドサウンドシステムとMBUXエンターテインメントパッケージ、そしてMBUX ARナビゲーションが標準装備となった。このほかにも、ETC車載器が標準装備となっている。

オプションのAMGレザーエクスクルーシブパッケージでは、前後席ともブラック/レッドのツートンカラーとなる。

 

クルマとしての完成度が向上し、今が買い時と言えるモデルに

Bクラスの変更点も、基本的にAクラスに準ずるが、ボンネットフードにパワードームは備わらない。またインテリアトリムが新しくなっている。なお、パワートレインやシャシーに変更点はなく、公式には従来モデルとまったく同じだ。”公式には”とわざわざ書いたのは、実際に運転してみると、明らかに違いが感じられたから。その点については後述したい。

リアエンドは、スポーティな新デザインのディフューザーが目を引く一方、コンビネーションランプを水平基調にすることで、よりシャープな印象となった。

新型Aクラスを見てまず感じたのは、従来モデル以上の高級感だ。もちろんこれまで高級感がなかったわけではないが、新型はバンパー開口部の形状や面の作りがよりクリーンな印象で、より現代的でプレミアムなイメージが増している。高級感とスポーティネスの比率が、従来モデルが5:5だったとすれば、新型は6:4くらいになっている。これはセダンも同様。セダンはさらに伸びやかさが一層際立った印象だ。

フロントエンドには、シャープな印象の新デザインのヘッドライトを採用。

新型Bクラスは、Aクラスよりも変化が少ないが、やはりエレガントさが増している。より大人っぽい雰囲気となったことで、これまでとは違うユーザー層から注目を集めることになるかもしれない。今回はまずハッチバックのA200dに試乗した。150psと230Nmを発揮する2L直4ディーゼルターボと8速ATによるパワートレインは、相変わらずとても力感に溢れた、滑らかで余裕たっぷりの加速感を披露する。ガソリン車ほどの軽快感はないが、発進時からとてもスムーズに転がる。

パワートレインは、A/Bクラスとも最高出力136ps、最大トルク200Nmを発生する1.33L直4ガソリンと、同じく150psと320Nmの2L直4ディーゼルターボの2種。各々7速ATと8速ATが組み合わされる。

比較的フロントヘビーなので、コーナリングはアンダーステア傾向が強めだが、ハンドリングにクセはなく、ワインディングロードでもとても走りやすい。直進性も抜群に良く、静粛性も高いので、ロングドライブにピッタリだ。セダンのA180にも乗ったのだが、A200dハッチバックよりフロントが軽く、リアが重めで、前後重量配分が良好だからか、とてもスポーティなハンドリングが楽しめた。7速ATが組み合わされる1.33Lの直4ガソリンターボも、136psと200Nmと特にパワフルというわけではないものの、軽快な吹け上がりが味わえ、ワインディングロードを気持ちよく流すくらいなら、まったく力不足は感じない。

「メルセデス・ベンツBクラス 『B180』」

BクラスはガソリンのB180に試乗したのだが、こちらもA180セダンと同様に軽快な走りが楽しめた。車両重量は1,440kgと、A180セダンより70kg重いものの、実用上まったく不足を感じることはない。また改めて感じたのだが、Aクラスより座面が高く、アイポイントも高いことは、良好な乗降性と運転のしやすさにつながっている。これは間違いなくBクラスの美点だ。

インフォテイメントも最新世代にアップデート

さて、今回の改良で最新世代に進化したMBUXは、なかなか要注目である。ポイントは「ゼロレイヤーの採用」だ。これはマップ表示画面に、目的地までの到着時間や混雑状況、ペアリングした電話の表示、ラジオやオーディオの表示、さらに次の行動の予測提案といった複数のコンテンツを同時に表示することで、使いたい機能にたどり着くまでの階層(レイヤー)をゼロにし、使い勝手を大幅に高めたものだ。

コクピットは最新世代の対話型インフォテインメントシステムMBUXに加え、今回は新たにARナビも追加されている。

これは、EQSで初採用されたMBUXハイパースクリーンから用いられているコンセプトで、実際にとても使いやすい。また、AIがドライバーの行動パターンから判断して、次の目的地や電話を掛ける相手などを提案してくれるので、まるで有能な秘書がサポートしてくれているようである。

コクピットは、センターコンソールに設置していたタッチパッドを廃し、すっきりとしたインテリアデザインに。ステアリングは、オプションのAMGラインパッケージを選択すると、スポーティな3本ツインスポークタイプとなる。

センターコンソールからトラックパッドが消滅したが、MBUXはもはやゼロレイヤーで使い勝手が向上した10.25インチのタッチディスプレイと、会話形式で多彩な機能にアクセスできるボイスコントロールを備えているので、まったく気にならなかった。

Aクラスのラゲッジスペース容量は標準状態で355L、40:20:40の分割可倒式リアシートを倒せば1,195Lまで拡大でき、実用性も良好だ。

新たに搭載されたARナビも、このクラスではライバルを引き離す機能と言えるだろう。ヘッドアップディスプレイに映し出すわけではないが、車両前方の映像に進行方向を示す矢印を重ねてセンターディスプレイに表示してくれるのは、とても解りやすく、初めて走る道でもとても安心感が高い。これだけでも新型A/Bクラスを買う価値アリだ。

Aクラスセダンのラゲッジスペースは405Lと必要十分な容量で、トランクスルー機構も搭載されている。

最後に乗り心地について書いておく。新型A/Bクラスは、明らかに乗り心地が改善した。前述のとおり、公式アナウンスはないのだが、AクラスもBクラスも、従来モデルより足回りのしなやかさが増していて、一段と上質な乗り心地を実現しているのだ。しかも今回はすべての試乗車がAMGラインパッケージ装着車で、18インチタイヤを装着していた。

Bクラスのラゲッジスペース容量は標準時455L~最大1,540Lまで拡大可能だ。

その変化は、Aクラスもはっきり感じられたが、個人的には特にB180で大きく感じた。従来型のBクラスは、かなりカチッとした乗り味で、ほとんどロールせずにタイヤのグリップ力に頼ってゴーカートのように走る印象だったのだが、新型はとてもしなやかにサスペンションが動いて路面に追従する印象で、ひとクラス上のモデルに乗っているような感覚を覚えたのである。

ルックスと装備内容の変更だけかと思いきや、走りもしっかり熟成された新型A/Bクラスは、A180でも98万円と、なかなかいいお値段になってしまったが、クルマとしての完成度はグッと上がっている。まさに今が買い時だ。

【SPECIFICATION】 メルセデス・ベンツAクラス』(A200d)
・全長×全幅×全高=4,430×1,800×1,440mm
・ホイールベース=2,730mm
・車両重量=1,490kg
・エンジン種類=直4DOHC16Vディーゼル+ターボ
・排気量=1,949cc
・最高出力150ps(110kW)/3,400-4,400rpm
・最大トルク=320 Nm(32.6kg-m)/1,400-3,200rpm
・トランスミッション=8速AT
・燃費(WLTC) =19.1km/L
・サスペンション形式(F:R)=ストラット:トーションビーム
・ブレーキ (F:R)=Vディスク:ディスク
・タイヤサイズ(F:R)=205/55R17:205/55R17
・車両本体価格(税込)=5,580,000円

【SPECIFICATION】 メルセデス・ベンツAクラス・セダン(A180セダン)
・全長×全幅×全高=4,560×1,800×1,445mm
・ホイールベース=2,730mm
・車両重量=1,370kg
・エンジン種類=直4DOHC16Vガソリン+ターボ
・排気量=1,331cc
・トランスミッション=7速AT
・最高出力=136ps(100kW)/5,500rpm
・最大トルク=200Nm(20.4g-m)/1,460-4,000rpm
・燃費(WLTC)=15.4km/L
・サスペンション形式(F&R)=ストラット&トーションビーム
・ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
・タイヤサイズ(F:R)= 205/55R17:205/45R17
・車両本体価格(税込)=5,050,000円

【SPECIFICATION】 メルセデス・ベンツBクラス(B180)
・全長×全幅×全高=4,425×1,795×1,565mm
・ホイールベース=2,730mm
・車両重量=1,430kg
・エンジン種類=直4DOHC16Vガソリン+ターボ
・排気量=1,331cc
・トランスミッション=7速AT
・最高出力=136ps(100kW)/5,500rpm
・最大トルク=200Nm(20.4g-m)/1,460-4,000rpm
・燃費(WLTC)=14.9km/L
・サスペンション形式(F&R)=ストラット&トーションビーム
・ブレーキ (F:R)=Vディスク:ディスク
・タイヤサイズ(F:R)=205/55R17:205/45R17
・車両本体価格(税込)=5,370,000円

リポート=竹花寿実  フォト=望月浩彦  取材協力=メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610

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竹花寿実
AUTHOR
2023/05/21 17:30

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